『封仙娘娘追宝録』という作品について

 『封仙娘娘追宝録』というライトノベル作品があります。
 私がTwitterにて鳴き声のようにこの作品が好きだと叫びまくっているので、名前だけはご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
 今日でこの作品が25周年、そして、今年で私がこの作品が好きになってちょうど20年になるので、つらつらとこの作品への想いを記させて頂きます。
 限界オタク女が書いた、思い出の作品への長い長いラブレターみたいなものですが、興味のある方は暇つぶしがてら読んでいただけると幸いです。

 この『封仙娘娘追宝録』という、ろくごまるに著、ひさいちよしき挿絵による中華風ファンタジーライトノベル作品は、1995年に富士見ファンタジア文庫から長編1巻が発売されました。
 同世代で流行っていたライトノベル作品に比べると、決して華やかな作風ではなかったと思います。また色々な事情から、アニメ化がされなかった作品のため、知らない方も多いでしょう。
 けれども、淡々としているのにどこか味のある文体、個性的かつ人間味にあふれたな魅力的な登場人物たち、落語のようにひねりの効いたオチ、厳しくも人情味にあふれたストーリー展開、そして関西人の作者による小気味良いあとがきは、沢山のファンを魅了したのです。
(どんな作品か紹介するためのプレゼン資料を以前作成しております。ご関心のある方はこちらをどうぞ↓)
https://twitter.com/yassuna_m/status/1260904658404425739

 私がこの作品に出会ったのは、忘れもしません。2000年6月のことでした。
 当時はインターネットなどろくにありませんでした。けれども、どこかから、大好きなスレイヤーズの小説が連載されている雑誌があるらしいということを知り、一生懸命調べた結果ドラゴンマガジンという雑誌の存在にたどり着きました。
 ワクワクしながら本屋でドラゴンマガジン2000年7月号─余談ですが当時はまだライトノベルなんて言葉はありませんでしたし、ドラゴンマガジンも月刊でA4サイズの雑誌でした─を購入した幼い私は、スレイヤーズすぺしゃるを何度も何度も読み返しました。
 読み終わったあと、スレイヤーズ以外にもこんなに沢山面白そうな小説が掲載されているなんてすごいなあ、と思った私は隅から隅までこの雑誌を読むことにしました。
『フルメタル・パニック!』
『スクラップドプリンセス』
『魔法戦士リウイ』
 様々な魅力的な作品が掲載されている中、私の目に止まったのが、そう。他でもない『封仙娘娘追宝録』だったのです。

 掲載されていたのは、『封仙娘娘追宝録』ファンの中では名作中の名作だと評されている、短編『夢の涯(後編)』でした。
(どんな話かは実際に読んで欲しいのですが、どうしても気になる方は、以前Twitterにて内容を要約したのでこちらを読んでください。↓)
https://mobile.twitter.com/yassuna_m/status/1171055824740831239
 普通なら、後編から読み始めたところで、意味がわからないはずです。
けれども、当時の私にとってこの作品は後編だけでも衝撃的なくらいに面白く、胸に響いたのでした。
 最後の主人公和穂と殷雷のやり取りなんかは、まだ彼女たちの歩んできた旅路を知らないはずなのに、読んだ瞬間なぜか涙が次から次へと溢れてきたのです。
 一緒に掲載されていたカラーの特集ページと合わせて、後編を何度も何度も読み返した頃には、私はもう『封仙娘娘追宝録』という作品と、和穂と殷雷というキャラクターのことが気になって気になっていてもたってもいられなくなっていました。
 幼い私は、気がついたらお小遣いを握って地元デパートのジュンク堂に駆け込み、当時出ている分まで『封仙娘娘追宝録』シリーズの単行本を買い揃えていました。
 2000年6月の時点では、長編8巻、短編3巻まで発売されており、私は作品の面白さに夢中になり、一冊一冊を読み進めました。
 和穂の優しさ、可愛らしさ、意思の強さ。殷雷の格好良さ、優しさ、ユニークさ。そして、二人の恋人でもなく、完全な主従でもないなんとも言えない関係に病みつきになりました。(今なら、その時の幼い私の胸にこみ上げていた感情のことを“萌え”とか、“エモい”という言葉で表現できるのでしょうが、勿論当時そんな言葉は影も形もありませんでした。)
 ああ、なんて面白い作品なんだろう。早く、続きを読みたい!
 幼い私は、この物語の続きを渇望しました。

 さて、実は『封仙娘娘追宝録』を語るにあたって、避けては通れないエピソードがあります。
 そう、新刊が6年間出ず、そのうちの何年かは、作者が病に冒されていて音信不通になっていた、というエピソードです。
(余談ですが、富士見ファンタジア編集部が「新刊が出るのは夏!」みたいなコメントを残してから、新刊情報がナシのつぶてだったため、一部のファンはこの期間のことを「夏待ち」と呼んでます。)
 1999年に長編8巻『刃を砕く復讐者(上)』が刊行されて以降、2005年まで『刃を砕く復讐者(下)』が刊行されなかったのです。しかも『刃を砕く復讐者(上)』においてメイン人物が死亡フラグをおっ立てたため、ファンは狂おしいほど、下巻の刊行を熱望しました。この物語の続きはまだか、と。
 物語の続きを待ち続ける読者たちは、2002年に刊行された短編4巻『夢の涯』のあとがきで、作者であるろくごまるにさんが重い病気にかかっていたけど復活されたことを知りました。そして、2003年にはドラゴンマガジンの増刊に何作か『封仙娘娘追宝録』の短編が掲載されました。
 ファンは喜びました。続編はもうすぐでは…?
 しかし、その後再び空白期間が訪れ、2005年になって、ファンはようやく物語の続きを読むことができたのです。

 私は『封仙娘娘追宝録』に出会ったのが2000年なので、実質5年しか待っていないファンなのですが、今でもふとこの5年間のことを思い出すときがあります。
 当時の私は、多感な思春期。今思うとしようもないことでも、辛すぎて死んでしまいたいようなことがあったとき、『刃を砕く復讐者(下)を読むまでは死ねん!』と歯を食いしばりました。
 そんな訳で『刃を砕く復讐者(下)』が刊行され、本屋で手にしたときの喜び、家に持ち帰り読了したときの喜びはひとしおでした。読み終わったときの、あの読了感も忘れることができないと思います。
 ……実は『封仙娘娘追宝録』は、その後完結するまでの4年間にも、作者が音信不通になったりしたので、その後も『封仙娘娘追宝録の続編が出るまで死ねるか!』と思いながら自分を奮い立たせることが何度があったのですが、それはそれとして。

 そういう訳で自分にとって、『封仙娘娘追宝録』という作品は思い出深い作品であり、今でも都度読み返してはやっばり面白いなあとスルメのような味わい方をしています。誰かが関心を持って読んでくれるかも知れないので、定期的に狂ったかのようにTwitterで布教活動も行っています。(狂いすぎていて、逆に逆布教活動になってやしないか常に不安を抱えていますが)
 できることなら、『封仙娘娘追宝録』に関する記憶だけを失って、もう一度新鮮な気持ちでイチから読んでみたい。もう一度、ハマってみたい。なんて思うこともしばしばです。
 でも、それと同時に、あの頃、新刊を楽しみに楽しみに待ち続けた、あのワクワクする気持ちは味わえないんだなぁと思うと、それはそれで寂しい気持ちもします。多分、私は『ぼくを探しに』で、ぼくがぼくを探しに行くのが楽しかったように、あの新刊を待ちわびる時間込みで、この作品の事が好きだったんだと思います。
 
 この『封仙娘娘追宝録』シリーズは、2009年に発売された『天を決する大団円(下)』にて完結となりました。そのため、今後、この作品の新刊が出ることはおそらくないでしょう。
 ですが、じゃあ、もうこの作品について何かを待つことはないんですね、と言われるとそんなことはなく。
 作者である、ろくごまるに御大が「いつか完全版を出したい」と昔ご自身のブログで発言されていらしたので、いつか「完全版」が刊行されるかもしれない。
 シリーズ刊行中は運悪くアニメ化されませんでしたが、少し前の作品のアニメ化が盛んな昨今、もしかしたら本作もいつかアニメ化されるかもしれない。
 どうも、最低2億あれば2クールアニメは作れるらしいので、私が宝くじ当てて億万長者になるか、石油王がはまってくれて、いつかアニメ化されるかもしれない。
 ……なんてことを、割と真面目に思っているので、まだまだ、死ねないなあ、と思っている今日この頃です。こんな具合に、ずっと何かを待ちながら、この作品を好きでいられたらいいな、思うのです。

 願わくば、これを読んだ誰かが「うわ! 封仙娘娘追宝録って完結してたんだ、読み直そう!」とか、「興味があるから読んでみようかな」と、封仙娘娘追宝録の電子書籍を手にしてくれることを祈っています。
 BookWalkerの読み放題プランで、読めるので、よろしくお願いします!!
 こんな感じで新規読者が増えて、本当にいつかアニメ化しませんかね、どうぞよろしくお願い致します!!!


 ……長々と失礼しました。こんな具合に、当時、ファンレターをろくごまるに御大、ひさいちよしきさんに送っておけばよかったなあ、と今更ながら思う私でした。

 皆、感想は作品刊行中・連載中に送っておこうな……。

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