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押韻論

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日本語の押韻の基礎的な考察や研究
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2023年2月の記事一覧

詩型論:日本語の押韻詩の詩型に関する考察

 こんばんは。Sagishiです。  いよいよ押韻詩の詩型に関する考察をしていきたいと思います。 1 詩行の音数 最初から残念なお知らせですが、現在のわたしは、現代日本語東京方言を使った詩歌で、詩の一行の音数を決めることは事実上不可能だと考えています。理由を以下に列挙します。 1-1 韻律単位の問題  現代日本語東京方言は、モーラリズムの言語ですが、話中では軽音節(1モーラ音節)と重音節(2モーラ音節)が任意のタイミングで出現します。  現代日本語東京方言の自然な日

日本語の押韻論:川原繁人の「日本語のストレス」論と『認知加重説』の関係

 こんばんは。Sagishiです。  今回は、川原繁人ほかの論文である『日本語の韻律特性と下顎の開き』(2014年)を紹介します。 1 「日本語のストレス」について 研究論文『日本語の韻律特性と下顎の開き』は、日本語にストレスがあるかどうかを実証的に確認しようとする研究です。  英語はストレス音節と下顎の開きに関係があるため、日本語でも同様のことがいえないか、日本語にもストレスを確認することができないか、という視座に立った研究です。  論文を読むと、被験者(調査サンプ

Rakim『Guess Who's Back』ライムスキーム分析1

 基礎的なライムスキーム分析から、見えることもある。1verseだけ。  よくよく見てみると、flash this[flˈæʃ.ðís]とか、中間の非ストレス音節がないように見える。前回の記事に書いたAEの例っぽく見える。  あと、floors just stop[flˈɔɚz.dʒə.stάp]のjustの発音とかどうなっているのか正直よく分からんw  Allah[ˈæ.lə]とdollar[dά.lɚ]は、日本人の音感だといけてるように感じるけど、前者にはr音ないし

日本語の押韻論:長短韻の問題、リズム単位(等時性)の重要性

 こんばんは。Sagishiです。  今日は、わたしが日本語の不完全韻の1つとして独自にカテゴライズしている「長短韻」に、問題があることに気づいたので記事にします。 1 日本語の不完全韻 わたしは日本語の不完全韻には「重音節韻」「長短韻」「撥音韻」、またややイレギュラーなスタイルとして「語感踏み」があると考えています。  特に「重音節韻」と「長短韻」は、日本語ラップにおいて広く実践的に使われている押韻形式ですが、これまで明確に定義化がされたことがありませんでした。これを