『左岸だより』玉城徹 続き

今回は花木の歌。


店におく鉢のオリーブみづみづといきほふ見れば肥えをやりしとぞ

お酒のお店での歌。オリーブが洒落ている。肥料といわずに「肥え」。「鉢の」も場面が見えてくる。会話の感じもあたたかい。

ランタナに咲き残る花とぼしけれ広きざはしの裾べにひくく

冬の頃の歌。これも、「ランタナ」という選択が面白い。夏頃から長く咲く花が少しだけ残っていたのだろう。花のない時期何となく目が行くのだ。下の句は場所をかっちりと表している。

黒南風のそらドラセナの長き葉の遊ぶを見やり蕎麦食ふわれは

そら ドラセナの と続く音の感じが面白い。蕎麦屋の窓から大きなドラセナの木が見えたのだろう。黒南風、ドラセナ、蕎麦が何となく合い、一人蕎麦を食べる寂しさもある。

パンジーの黄なる一つは花びらをつと振りにけり二月の街に

売り物のパンジーではないかと思う。風に揺れた花びらを擬人化しているのだ。音が目立つ名前の花だからパンジーを詠むのは結構難しい。「つと」に作者の目が止まった感じが残っているし、ここに味わいがある。花びらの柔らかさも伝わってくる。

ざわざわとした街の中に紛れている花木をさらっと読みつつどれにも深い味わいがある。現代的な花木を選んでいるところも興味深い。

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