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蓮の花

不忍池の蓮が咲きだしました。
まだちらほらですが、大きな蕾をふっらさせています。
蓮が満開の頃は、辺りにいい香りが漂います。大きな葉を揺らしす風に向かうと、昔読んだ芥川竜之介の「蜘蛛の糸」が思い出されます。

お釈迦様が蓮池の周りをお歩きになり、極楽の早朝を楽しまれたようです。

何年か前ですが、鎌倉の文学館の展示室で、この「蜘蛛の糸」の芥川の直筆の原稿がケースに収められて居ました。
「或る日のことでございます」との書き出しに、思はず覗き込みました。

香しく、美しく咲いた蓮池の水の下から地獄が見え、お釈迦さまはじっくりとご覧になりました。
大勢の罪人の中にいたカンダタという男の前に蓮の葉のあいだから、一本の銀色の糸が下がってきました。彼は地獄から抜け出そうと、この糸にしがみつき上へ下へと登りました 。下を見ると大勢の人が、彼の後に続いているのを見て、「この糸は己れのものだ」と怒鳴った途端銀色の糸はプツンと切れ、彼は地獄へとすべり落ちました。
この様子をお釈迦さまは静かにご覧になられたようです。

人間死後極楽へ行くか、地獄へ行くかは生前の記録をみて閻魔大王がおきめになると言われていますが、どちらに行くかは、我々自身の日頃の心構えにあるようです。

お盆も近くなり、棚経にゆく黒い衣の僧侶をみかけます。買い物かごに苧がらや赤い鬼灯を入れた人も目に付きます。
この季節ならではの日本の風景です。


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