ゲイバーに初めて行ったら朝方おねえになりかけていた話(その壱)


僕は、新卒で入った企業の地方支店に配属になった。

他にだれも新卒の同期もおらず、年齢が近い先輩も皆無だった。

とにかく友達が欲しかった。


入社して1ヶ月経った頃、近所の自動車学校で、合同自動車教育があった。

営業で社有車を運転する社会人の合同教育だ。

僕も参加した。

参加者の中に同い年らしき青年がいた。

すぐに声をかけた。上述したようにだって友達が欲しかったから。

そんでなんやかんやでLINEを交換した。

2日後、さっそく一緒に飲みに行った。

それ以来、飲み仲間となった。

いつものように街中で2人飲みをし、

ほろ酔いの中、2軒目を探していた。

「俺行きたい店あるんだよね。」

彼が言った。

珍しかった。彼からの提案は初めてだったから。

ふたつ返事で、賛成した。

その店は、裏路地の四階建てで

昔ながらの居酒屋がたくさん入っている集合ビルの二階にあった。

店の扉は鍵のついている重厚な木の扉だった。

僕はここで引き返すべきだったのかもしれない。

重たい扉を開けると、すぐに異変に気付いた。

カウンターには、短髪で小太りの、豹柄タンクトップを着たおじさん。

その前には、あまりにも仲の良さげな男性2人が座っている。

「あら、いらっしゃあーい。あなたたち初めてね。」

あ、ここゲイバーってやつだ。

直感が僕に訴えかけた。

(引き返せ!!)

裏腹に僕はカウンターへと吸い込まるように歩を進めていた。

いつの間にか、友達の手は僕の腰にまわっていた。


つづく



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?