学校が「鎧」を脱いだ、その先に (1)
今の学校の前提になっているのは、右肩上がりだった高度経済成長時代の学校モデルです。それが学校の一番いい形だとされてきました。でも、そういう時代は、今もう完全に終わっています。
一定水準のいいものをつくって頑張れる時代はもう終わりました。画一的で、均一なものをつくったって勝負にはなりません。どれだけ独創的なモノがつくれるかということを考えないといけません。
☆☆ 取り組むべきは正解のない問い ☆☆
我々が取り組むべきは「正解のない問い」であると、いろいろな人が言っています。21世紀型のスキルというのは、その答えを導き出す際に必要なチカラであり、2020年から始まる大学入試改革ではそれを問うという流れになっています。
こういったチカラは、「教科書の内容を一生懸命覚えましょう」「テストに出るから繰り返しやりましょう」では身につきません。
つまり、子どもたちに与えるべきものは、正解とか、覚えなくちゃならないことではなく、子どもたち自身が自主的に課題に向かって学び続けるためのきっかけ、種火です。
☆☆ ストリート・スマートでいこう ☆☆
そういった意識を変える必要があるということで、前々任の滋賀学園では象徴的な6つの単語(Global, ICT, Project, Real Life, Street Smart, Lifelong)を使って、先生方に問いかけてきました。
まず、前半の3つですが・・・
世の中はグローバルな展開になっています。日本だけで完結しません。そのためにICTのツールは絶対に必要だということで、空気のように(無意識&ごく自然に)ICTを使おう。
そして、すべての取り組みはプロジェクトなので、自分の思いや考え、方法を相手に伝え、そのリターンをもらって考え直し、その繰り返しで物事を進めていこう。
つまり、これら(Global, ICT, Project)を柱にして、学びのプロセスを再構築しようということです。
次に、後半の3つ・・・
そのためには、学びが生活に密着した(Real Life)ものであるという意識が大切です。
また、ストリート・スマート(Street Smart)というのは、ブック・スマート(Book Smart)とかアカデミック・スマート(Academic Smart)の対極にある言葉で、要するに「街中を歩くように、いろいろな経験を通して学ぶのが本当だよ、そうして賢くなっていきましょう」ということです。
Lifelongは、「勉強は一生のもの」「学びは一生涯続く」ということです。
これらを、滋賀学園では盛んに説いてきました。
☆☆ でも、学校だけでは実現が難しい ☆☆
そういったことをやるためには、学校のリソースだけでは限界があります。お金もありません・・・ということで、学校を開き、地域や企業とコラボすることを考えました。
その結果、タブレットを1クラス分導入できたり、その様子がCMになって全国放映されたり、新聞の各紙で全面広告になったり、インパクトのある大きな動きが実現しました。
とはいえ、単にそういったコマーシャルメディアに乗ったからといって、実際に学校がそれをやっているという実態が認知されないとダメなので、象徴的に生徒や保護者に伝える場として、入学式に校長自ら45分の授業をやったわけです。
さらに、幸運にも選抜高校野球大会に出ることが決まり、それも学びの教材になりました。プロが使っているデータ解析のソフトを使い、子どもたちに試合のビデオを見せ、相手投手の配球や打撃データなどを入力させ、それをもとに「こういう場合は、次にこういう戦略を取るべきだ」というデータ分析・解析をして、甲子園の試合に臨みました。
これも新聞に取り上げてもらい、大きな情報発信につながりました。将来は、野球部の甲子園勝利のために、野球部以外の生徒が授業の中でデータ分析をして、野球部に貢献するという、そんな学校全体の学びにつながったらいいなと、考えが広がりました。
☆☆ 学校ができないことは、プロの力を借りよう ☆☆
面白いもので、こういうことをやっていると、いろいろな方から「滋賀学園に頼んだら、一緒にやってくれるかも」と声がかかり始めます。
ある文房具メーカーのCM依頼もそうでした。
とても軽いノートというコンセプトだったので、教室や体育館、グラウンドなどで、生徒を使いながら、ボールやシャトルを使わないスポーツとか、札のない百人一首とか、何もかも全部「エアー」でやるという面白いシーンを撮影し、CMになりました。
もちろん依頼されたものですから、学校側に制作費はかかっていません。プロがつくっているので、クオリティは半端ないです。この映像をオープンスクールなどで見せると、タダで宣伝ができます。
また、その後、おまけのような展開もありました。
CMの主題歌を担当した3人組の音楽グループが、このCMを見て、自分たちのミュージックPVをこのパロディ版で作りたいという話になり、私も出演する形でできあがりました。
特別なルートでお願いに行くとか、お金を出すからこれをやってください・・・ということじゃなく、企業だって自分の表現したいことをやってくれる場があったら、うまくいけば乗っかってくれることもあるという一例です。
これらは、自分の「やりたいこと」を発信し続けたらできたことです。
私はFacebookなどのSNSやいろんなところで、学校のこともガンガン書きますが、それも発信の一つかなと思います。「やりたい」モード全開でアイディアを出したら、たぶん誰かが食い付いてくれます。
まさに、ストリート・スマート(Street Smart)な生き方・・・
間違いないです。
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