見出し画像

『BRANDED SHORTS 2023』 総括

一昨日、『BRANDED SHORTS 2023』の授賞式がありました。

昨年に続いての参加で、今年は審査委員長も拝命し、錚々たる審査員の皆さんと楽しい時間を過ごさせていただきました。

下記グランプリ作品を紹介させて頂きますと、インターナショナルは、自閉症の少女とその家族を描いた『Me, My Autism & I』という作品で、下記Abema TVでも7月10日まで視聴できます。

https://abema.tv/video/episode/221-232_s1_p11

それ以降は、下記字幕はついてないですが、スポンサーのVanishのYouTubeチャンネルで見れます。

自閉症の抱える少女が主人公なのですが、自閉症の辛さを描くだけでなく、それを支える家族や友人のリアルな姿などが印象的でした。

そして、この主演の女性が、実際に自閉症を抱えていることが作品の概要から分かっており(家族や友人も実際の方々だそうです)、審査員一同、その事には驚きました。

ただ、「だからすごいよね」というだけでなく、それを言い出したら、俳優が演じるのはダメなのかとか、ドキュメンタリーと映画の違いなど、根本的なところまで話は及び、私自身とても考えさせられました。

近年、国際的にも「Cultural appropriation(文化の盗用)」という概念が浸透し、安易に設定だけを利用することに警鐘がならされています。それは何もマイナリティ的なことを含めて、設定として使うのがいけないということではなくて、作り手の十分な学びと配慮が求められているということですが、この作品においては、当事者をキャストとして制作することで、おそらく相当なコミュニケーションが必要になったはずで、そのプロセスやクリエイティビティも含めて受賞に相応しいとの結論に達しました。

そして何より見てもらうと分かるのですが、主演女優の演技が素晴らしいのです(そして家族も。特にお父さん!)。様々な立場や思いが昇華されていたこと、そして圧倒的なリアリティには満場一致でのグランプリでした。

そして国内部門(ナショナル)の方は『チャミスル2』が受賞しました。

こちらは見たことある人も多いのではないでしょうか?

https://abema.tv/video/episode/221-232_s1_p106

こちらも、審査員の事前審査(複数の項目ごとの審査の合計)では1位だったのですが、『BRANDED SHORTS』という賞が映画祭の中にある一部門という性質上、議論が白熱しました。

つまり、広告を越えたブランデッドムービーと言えるかということについて議論が行われたのです。

ブランデッドムービーの定義は曖昧で、これぞという決まりはないのですが、個人的には、CMと呼ばれるものではなく「通常の映画と同じように、ユーザーがお金を払ってでも見たいと思えるもの」であって欲しいという思いがあり、その観点から評価に悩みました。

ただ、クライアントワークである作り手の立場を考えると、このブランデッドムービーを見る事によって、「チャミスル」というお酒が飲みたくなり、そのブランドが愛されるようになればいいというのが第一義であり、その上で押し売りではなく、十分観客に対し「映画」として楽しんでもらえる内容になっていると言えます。

他の広告賞であれば何の問題もないが、この『BRANDED SHORTS』で選ぶべき作品かというのは、審査会でも議論された事なのですが、最終的には他の作品を寄せ付けない「面白さ」が光りました。

この作品を見ると、なんだかハッピーになり、他人とシェアして感想を言い合いたくなります。韓国コンテンツの盛り上がりに沸く今の日本を的確に捉え、ある意味での国際交流とも言える次元まで、解像度高く捉えたクリエイティビティと時代性を評価しました。

と、偉そうに批評していますが、どちらも最高に面白く素晴らしいムービーで、作り手の一人として、他の紹介できなかった作品にもリスペクトの気持ちでいっぱいです。

審査員というお仕事は、光栄でもあり、おこがましくもあり、いつも微妙な居心地の不安定さがあるのですが、終わってみれば、たくさんの素晴らしいブランデッドムービーを見れたことに感謝しかありません。

そして、審査員がとにかく素敵な人ばかりで、審査会が楽しかったのが何よりでした。昨年も思いましたが、審査会がまた一つの物語になっていて、独特の緊張感と調和があり、かけがえの無い経験になりました。関係者の皆さんにも深く感謝いたします。

ブランデッドムービーというジャンルは今後も何かしら関われたらと思っています(ご相談もお待ちしています)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?