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【NPO書評】現代語訳 風姿花伝

先日の「口訳 古事記」に続いて、現代語訳モノをオーディオブックで読みました(聴きました)。

今回は、世阿弥の「風姿花伝」です。
前回の楽しく読んだ古事記とはうってかわって、風姿花伝は現代語訳されても難しいですね。

翻訳者はコピーライターとしてお仕事をされていて、古典翻訳家もされている方です。なので、日本語そのものはとてもわかりやすい書きぶりになっていると思います。
内容も割と平易なものです。
しかしながら、その奥の深さから、ちゃんと理解をしようと思うとなかなか難しいですね。

現代語訳 風姿花伝
2005/1/21
世阿弥 (著), 水野 聡 (翻訳)
‎ PHP研究所

観阿弥・世阿弥の親子によって猿楽が大成され、現代の能につながっています。
その世阿弥がまとめた能の理論書です。1400年代に作られたそうで、約600年前のものです。一子相伝、門外不出の書として引き継がれてきましたが、明治時代になって1909年に出版されました。

現代語訳ということで、文章はとてもこなれたものになっており、読みやすいものになっています。ただ、世阿弥の真意を正しく理解しようとするには難しいというのが印象でした。
「秘すれば花」や「初心忘るべからず」など、有名なフレーズがいろいろ出てきます。

前半は能に関するガイドブック的な内容です。
能の歴史や、7歳から学び始めて、それぞれの年代で目指すべき姿や心得の解説、鬼や老人などのキャラクターごとの演技論など。
あらためて、能について知ることができる内容です。

後半は、その能を極めるための秘訣をまとめたものです。
前半の能のパートは、能というものはこういうものなのかという、知識欲を刺激する内容でしたが、後半は、今でいうビジネス書、自己啓発書的な内容です。
能を通じての生き方、心構えなど、今まで文章にされていなかったものを世阿弥が書下ろし、言語化しているものです。
一回、読んだだけ(聞いただけ)では十分に理解はできませんね。

・心構えや意識、行動などをちゃんと言語化していくこと。
・理解を進めたり、同じイメージを持つために、例えが大事。イメージを具体化するものをしっかり用意する。風姿花伝であれば「花」がそれ。花のイメージに託して、ばんばん言語化されています。
・この当時の能は、他の流派や家との戦いですね。思った以上に、他に負けないという勝負の意識が強い。能というと枯れたイメージを持っていましたが、この時代の世阿弥はバリバリの能の武闘派という印象を受けました。
・能について、演技論だけではなく、一日の公演やシーズンものとしての公演など、興行的な視点や盛り上がりをどのように作っていくかという話もあり、実に面白い。

とりあえず、風姿花伝を一通り読み通したということ、現代語訳にしても難しいものは難しい、風姿花伝を通じて能の歴史を学ぶことができるのはお得!、文章量はそれほど多くないのでまた読んでもよい、などなど、いろんな気づきがありました。

風姿花伝をもとにした話や表現もあるので、一度、読んでおくのは良さそうです。
NPO活動も、風姿花伝のような実践の書が出てくることが期待されます(笑)。


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