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【NPO書評】人情安宅の関

自称「勧進帳マニア」の山田です。
歌舞伎の勧進帳、能の安宅、講談の勧進帳を鑑賞して、義経記と、勧進帳の解説本は2冊ほど読んでいます。
ちなみに、歌舞伎では松本白鸚の弁慶、市川團十郎白猿の弁慶をそれぞれ見て、木ノ下歌舞伎の勧進帳も計3回見ています。
そして、新型コロナの流行の兆しが見えてきた2019年2月、金沢でNPO向けの講座を終えた後に、小松まで足を延ばして、勧進帳の舞台となった安宅の関の跡地を見てきました。
今年の9月の歌舞伎座で、今度は松本幸四郎の弁慶による勧進帳があるので、それも見に行こうとしています。

そんな中で、勧進帳マニアの心をくすぐる本を見つけてしまいました。

人情安宅の関
2011/5/1
戸田 宏明 (著)

著書は金沢市「倫敦屋酒場」というBarを経営、傍ら文筆にも親しむ方だそうです。
安宅の関守・富樫を主人公にした小説です。
ちなみに、安宅の関は現在の石川県小松市にある海岸近くにある関所でした。
源義経・弁慶一行が京都から東北・平泉に逃げ延びる際に通った関所で、あの勧進帳の舞台となったところです。
勧進帳では、山伏に扮する弁慶と、関守・富樫とのやりとりが大きな見せ場です。

その富樫を主人公にした小説なんて!
大変興味深く読みました。
北陸武士として、木曽義仲の配下として平家打倒に加わった富樫。
木曽義仲が源頼朝に討ち取られた後は頼朝の配下となり、安宅の関の関守となった富樫。
そして、勧進帳のあの場面です。
山伏に扮した弁慶らと、合力に変装した義経が、関所越えをしようと、安宅の関に来たわけです。
本書を読むと、なぜ、富樫が義経・弁慶一行と気づいても、主従の関係に感動し、関所を通過することを見逃した時の心情が、ようやくわかってきました。

勧進帳好きの方にはぜひ読んでほしい小説です。
ちなみに、勧進帳は、日本三大募金詐欺事件の一つです。


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