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FACTFULNESS(ファクトフルネス)

2020年はコロナ関連のニュースで心配や憂鬱な気持ちになった方も多いと思います。事実として、世界中に広がっているコロナは私たちの日常の生活を脅かすものです。一方、時にはニュースやワイドショーで伝えられるセンセーショナルな情報によって「過剰なのでは?」と疑問を抱く人もいたのではないでしょうか?この本は、まさにコロナを経験している今だからこそ、読むべき本であると思いました。

本書は、まず最初に10の3択問題に答えることからはじまります。3択問題ですから、あてずっぽうに選んでも1/3の確率で正解できます。なのに、実際の正答率は有識者と思われるような人でも1/3より低くなる結果がでたそうです。ちなみに、私の正答率はちょうど半分でした。私たちは「知識を持つことで思い込みが形成されてしまい、データに基づく現実を理解することができなくなっている。」のです。では、その思い込みとはなにか?

10の思いこみ その1.分断本能

世界は分断されているという思い込み。

たとえば、先進国 vs 途上国という2項対立で考えてしまう。

本書においては、1日当たり所得を基準にして、<低いー高い>の2分類ではなく4分類にして考えています。1番所得が引いレベル1は人口としては、10億人くらいがあてはまります。レベル1の人たちは私たちが十数年前に抱いていた途上国の人たちの生活レベルのイメージと同じです。1番所得が高いレベル4にも約10億人があてはまります。日本やその他の先進国はレベル4です。つまり、残りの人口50億人は中所得者(レベル2、3)となります。日本人のようにレベル4の位置から見下ろしていると、レベル1-3の違いが見えないのです。さらに、レベル4だけしか見ていないと、ビジネスチャンスとなる50億の中所得者を見逃すことになるのです。

10の思いこみ その2.ネガティブ本能

世界はどんどん悪くなっているという思い込み。

この理由にはメディアがセンセーショナルな記事を報道することによって生じる誤解があります。また、「悪い状況が続いてはいるが徐々に良くなっている」としても「以前よりは良くなっている」とは言いづらい空気が我々をネガティブにさせてしまいます。たとえば、以前に絶滅危惧種とされていた動物の個体数が増えてきても、なかなか「もう心配ないから捕獲しても大丈夫。」とはいえないです。

10の思いこみ その3.直線本能

グラフは真っ直ぐになるだろうという思い込み。たとえば、世界の人口がひたすら増え続けるという思い込み。実際には上限があります。これもメディアがセンセーショナルにアフリカや中南米の大家族を映して、「あの人たちは子供をたくさん産んでいる。」という印象を与えています。なんでもかんでも直線のグラフにあてはめないこと。グラフにはカーブがあることを知る必要があります。

10の思いこみ その4.恐怖本能

センセーショナルな悪いニュースは私たちの関心を刺激する。たとえば、年間4000万機の飛行機が空を飛ぶが死亡事故が発生するのは10機程度。ニュースで報道されるのはもちろんその10機の死亡事故だけ。世界は恐ろしいと思う前にリスクを正しく計算する必要があります。

10の思いこみ その5.過大視本能

一つの数字を見て大小の判断を勘違いしてしまう。「苦しんでいる人たちから目を背けるのは、なんとなく後ろめたい」と思う気持ちをメディアは利用します。一つしかない数字は誤解を招くもと。他の数字を見つけ割合で比較しましょう。

10の思いこみ その6.パターン化本能

一つの例がすべてに当てはまるという思い込み。分類の仕方に疑いを持ちましょう。宗教や文化でグループ分けしてしまい「あの人たち」という見方をしてしまうと、ビジネスの機会を逃すことにもなりかねません。

10の思いこみ その7.宿命本能

持って生まれた宿命によって国や宗教や文化の行方は決まってしまうという思い込み。たとえば、アフリカの国々はあんなだから根本的にはよくならないと思っている。毎年、少しづつでも変化が起きていることを追いかけること。知識のアップデートが必要です

10の思いこみ その8.単純化本能

世界は一つの切り口で理解できてしまう。その道のプロとか専門家の意見だと絶対だと思っていませんか?自分が「こうだ。」って思っている意見の弱点を見つけましょう。

10の思いこみ その9.犯人捜し本能

誰かを責めれば物事は解決する。犯人探しではなく原因を見つけましょう。成功した時はリーダーのおかげではなく、社会システムやテクノロジーに目を向けましょう。

10の思いこみ その10.焦り本能

恐れを煽る。「いますぐやらないと大変になる。」というような煽りに直面したら、自分自身の焦りに気付き、小さな一歩を積み重ねることに努めましょう。

10の思い込みの内のいくつかの責任の一端は、メディアがセンセーショナルに取り上げることにあるようです。一方で、メディアがセンセーショナルなニュースを取り上げるのは当たり前のことです。それは見る側の我々の関心のフィルターがセンセーショナルなニュースを求めているからです。大切なのは見る側がそういう現実もあるということを理解した上で、事実が何なのかを冷静に見つめなくてはならないということです。

「事実は何か?」 我々は知れば知るほど思い込みを持つ生き物のようです。大切なのは知識を持とうとすることではなく、その知識から我々自身が持つ思い込みの傾向を理解して、現実を理解しようとする姿勢です。一つの数字やセンセーショナルな映像を見ても、私たちにはこういう癖があるんだと自己分析していることで冷静に考えることができ、すなわち、それは世界への視野を広げるということにつながります。その点でも、この本は世界を知るためではなく、私たち自身を知るために重要なことを教えてくれているのだと思いました。ご興味ある方はぜひ読んでみてください。

有難うございました!

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