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寂しい寒中見舞い

こんにちは漆芸作家の浅井康宏です。
今日は超個人的なことを書こうと思います。

この時期に来る寒中見舞いは
年賀状のお返事か、喪中の挨拶。

僕が20代の頃、とにかく作品が売れなくてもがいていました。
グループ展に出品してもとにかく売れないから、
親戚にお願いして買ってもらっていました。

そんな時、手を差し伸べてくれた老夫婦がいました。
旦那さんが公務員だった方で、すごいお金持ちでは無いけど
工芸がとにかく好きという感じで、僕の酒器を購入してくれました。

それが家族や親戚以外で初めて売れた作品だったように思います。
価格はたぶん35,000円
その後も作品を少しずつ購入してくれて、
僕が地元に帰ると一緒にケーキを食べに連れて行ってくれました。

そのうち作品価格が上がってゆくと
「あと10年若かったら買えたけど、良いものを見せてくれてありがとう」と言って
少し寂しそうに、でも三人で笑顔でケーキを食べました。

寒中見舞いには奥様が亡くなられたことが書いてありました。
はっきり言って、
最初に購入してくれた酒器がなければ、
僕はもう少し美術の世界をひねくれて眺めていたかもしれないし、
走り続けることに疲れていたかもしれません。

無名の僕の作品を買って励ましてくれたことを僕は一生忘れないと思います。
今でも感謝の気持ちでいっぱいです。


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