存在の重さ

※絵画の知識は本当にない

・結果も大切だけど、曖昧な過程に想いを馳せられる余地も大切

・空気感とか迫力とか、言葉にしづらい曖昧なものを全てひっくるめて存在感として解釈する。人間の感覚は曖昧

・「そこに在る」ということに正面から向き合わされた。現実、風景、人なんかを見る目がひとつ増えたような気さえする。元々「目に見える全てのモノに人間が関与している」、街という存在に残留している他我(自我の他人版)の多さにはくらくらしていたけれど、それをさらに人の手によって重く美しく再構築されていて叫びたくなった。人類がこれまで積み重ねた文明の層の深さを考えてしまう。

・リアルに存在する空気感という曖昧なものを具体的にイメージや言語で解釈して、それを二次元のキャンバスに一から再生成しているの、本当に意味がわからない。すごすぎる。20cmくらいまで顔を近づけて見てみると、本当に細部まで描き抜こうという意志を感じた。写真だと一瞬で処理が終わる1ピクセルを描くのにどれだけの時間をかけたんだろう。

・フローリングの木の模様、裸体にかかる白い布の陰影、朝焼けに照らされている水の波紋、そのどれもから匂いも肌触りも音も記憶もイメージができるくらい写実的かつ美しく描かれていて印象的だった。これを描ききる労力を考えると途方もなさに頭がくらくらした。変態しかいない。写実絵画は構図の美しさを表現するだけなら写真やその加工品で十分なはずなのに、写実絵画家はそこをそうせずに、自分の筆で美しさを解釈・再構築することで、より美を探求したい欲があったりもするんだろうな。見せるための絵の前に、自分が描きたい絵なんだろうと思う。じゃなきゃこんなの描けないだろ。

・写真との違う点としては、なんとなくの素人の主観でしかない意見だけど、描き方が「存在する現実を描いている」というより「私が見ている現実を描いている」風に見えた。若干の誇張表現のような。人間がピントを合わせて見ることができる視野は意外と狭いのだけど、今回観た絵画の多くはその視野以上の広さを描いている。絵画には「パッと見で目を引かれる場所」があると思ってるけど、そのパッと見時点ではその周りの描き込みはぼやけている。そのぼやけて見えている状態の時に「周りのこの辺りがこんな色だったら現実を想起させつつもそれ以上に美しい」みたいに思える色使いをしているように感じた。本当に主観だから全然違うかも。

・その焦点の範囲を変えながら見るのも楽しかった。かなり近づいて「こんなに近づいてもまだ写実なのかよ」と思うこともあるし、一歩引いて自分の視野がちょうどその絵でいっぱいになる辺りで見ると「本当に森のなかに立ってるみたいだな」とか思えたりした。遠い場所にある複数の絵画を眺めた時の景色はかなり異質で、これは写真展では感じられないものかもしれないなと思った。

・なんとなく今回の展示で芸術的なエロスの意味を少しわかったような気がする。木と女性が並んでいる絵があったが、そこで女性の肌の質感と木の無骨さの差を否応なしにぶつけられて狂った。なんで今までデッサンに女性のヌードなんかがあるのかと思ってたけど、確かにこの表現が描けるようになるなら今でも続いてる理由がわかる。これを見て思い出したのはヴィーナスの誕生。あれ何世紀に描かれてたっけ、調べたら18世紀後半だった。生で観たことないけどそんな時代からこれ以上のとんでもない質感で描けているのすごすぎる。いつか観てみたい。今回の展示で初めてヌード作品を観て、実際にエロいなとは思ったけどそれは性欲とはまた違った変な感覚だった。それ以上に「絵ってすご!?!?」の気持ちに圧倒されていたから頭がぐちゃぐちゃになっていたのかも。観たことない人には本当に観てほしい。

・東京のゴッホアライブに続いて二度目の美術館(ゴッホアライブは映え向けのエンタメ展覧会に近かったけど)。画家の名前も絵画の歴史も知識としては全然知らないけど、「自分の身長より大きい絵を見る」とか「静かで秩序的な場所で作品を見る」とか「なんかわからんけど良かったな」と思うことが体験として好きだということは分かってきた。


・ここであえて語彙力と感性の深さをあえて下げた感想も書くか


・まじで良かったな。正直ここまで喰らうとは思わんかった。一番最初に目についた絵がもう立体アートかと思うくらい奥行き深く見えるし思わず真横から見てみて本当に飛び出してないか確認したもんな。この時点でかなり面白くなってた。入口付近は人がつっかえやすいからあえて少し先の絵から見始めたのが大正解で、人物画とかをゆっくり見れたの最高だった。絵画と目が合うと本当に目が合ったんですよ(?)。森の絵なんかはもう家の近くで探検ごっこしたのを思い出したくらいリアルだし、なんかその記憶を7割増くらい美化して思い出させてくれるくらい綺麗だったな、めちゃくちゃ素敵!本当にもう美しい絵を描ける人が美しいと思ったことを描いてくれてありがとうって感じです。また行きたいし、今回の本家であるホキ美術館はいつか行ってみたい!!

・あんまり変わんなかったな

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