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アニメは地面を映さない

アニメはなるべく地面を映さないようにしている。

何故か?

何故かというと単純に歩いているキャラクターの接地を描くのは大変だからだ。

キャラクターが歩いているときに足元が映ると地面とのずれが目立ちやすい。なるべくこの状態を避ける。

作画の方がその傾向は強いと思うが、3DCGの場合もレイアウト的に避ける傾向にある。

難しいというより手間が増えて面倒、といった感覚の方が近いかもしれない。地面と足元がずれると「滑る」状態になってしまってかなり目立つ。

接地を調整するのは地味な作業で根気がいる。時間がかかるわりに出来上がる絵も「おぉ!すごい!」みたいな絵になるわけではない。普通の絵になるだけだ。ならば無くせるなら無くしたい。

気にならない

アニメ制作にかかるまではあまり気にしていませんでした。しかし一回気が付くと確かにほとんどのアニメは足元が映らないようにしている。ちょうど全身入るくらいのレイアウトの時は足元だけ切れている場合が多い。

もちろん引きの絵の時は足元まで映るので無理やり足元を映さなくするわけではないです。切っても問題なさそうなら切るくらいです。

演出的にも足元が重要な場合はあまりないですし、私たちも観たいのはそこではないので気にならない。

結果として足元まで見えるレイアウトはなるべく避けます。

工夫です

ポジティブに言い換えると、限られた時間の中でクオリティを上げるための工夫です。

アニメ制作にかかわるようになって思ったのは、アニメは「作画作業の手間を省く塊」だ。

これは良くも悪くもそう思う。やり方の正解が分かりやすい反面、無理やり昔のワークフローに乗せて面倒な時もある。

もはや共通認識のルールのようになってどっちでもいいんじゃないかな? と思うときにでも指摘される場合もある。

現在のアニメのワークフローは作画時代に最適化されています。私は主に3DCGを扱うことが多いので最適化していく必要があると感じます。少しずつ変わってきていますが、まだ時間はかかるように感じます。

もちろん会社によって大きく違いがあります。CGはアニメ業界的には新しいです。新しいものは試行錯誤しながら使っていくので各会社でやり方が全然違う状態になりやすいです。

整合性がバレる

足元が映ると問題なのは時間的なコストだけではないです。整合性もバレやすいです。

アニメは意外と整合性があってないことが多い。そしてキャラクターと背景をつなぐ部分の接地が見えていると整合性がバレやすい。

背景(美術)のスケール感とキャラクターのスケール感があってないこともよくあります。

様々なパターンがありますが一例を紹介。

キャラが巨大になる

例えば地面をなめて(カメラが地面すれすれ)いる状態でキャラクターを映しているレイアウトの場合は、キャラクターが少しでもずれると巨大になったりすごく小さくなったりしやすいです。

数ピクセルずれるだけでかなり違ってきます。

ズレについてはアナログとデジタルの問題もあります。最近はデジタルも少しずつ多くなってきていますが、まだまだアニメはアナログ作業が多いです。

そしてアナログ作業の場合はピクセル単位の合わせは難しいです。単純に細かすぎる作業は難しいのと、紙に描いた絵をスキャンする時に多少はずれます。

なるべくこういう事故が起こらないようにレイアウトの時点で避けるようにします。しかし起こってしまったら放映されるまでにどこかの段階で頑張ってなんとかします。

あとは地面などの木目のパターンがでかすぎる小さすぎるなどの問題もあります。キャラクターに対して木目パターンがでかすぎると違和感ができます。普段私たちが見ているものと違う場合は違和感がでやすいです。

キャラの接地が映るとこういう整合性もバレやすいです。

地面だけではない

地面を映さないようにしているといっていますが、正確には何かと接地している状態を避けたいです。

これは地面だけではないです。キャラクター同士の絡みや、岩など何かを持っているなども同じように少し手間が発生したり、整合性がバレやすくなったりする場合があります。

そういう時は同じようになるべく避けます。

モーションキャプチャーでも滑る

3DCGでモーションキャプチャーのモーションを使用する場合もあるのですが、それでも滑ります。

モーションキャプチャーで現実の動きを収録しているんだから大丈夫だろうと思われますが、意外と滑ります。

接地の収録が難しかったり、センサーの位置の問題だったり、収録アクターとアニメキャラクターの等身差があったり色々な要因があります。

しかし完全に足元が滑らないモーションキャプチャーは難しいです。

最近はwebカメラでモーションキャプチャーを収録できたり、安価なモーションキャプチャー機材ができます。しかし高価なモーションキャプチャーと違いはこの接地の正確さが違うと感じます。また別途まとめたいと思います。

まとめ

地面が映ると作業コストがかかる為なるべく映らないレイアウトにします。接地が映ると整合性もバレやすい。


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