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秋田県能代市・職員の旅費【棄却】

平成20年5月に実施された住民監査請求の結果です。職員の旅費の執行方法についてなされたものです。


住民の請求

平成20年4月24日、住民は能代市の職員措置請求書を提出しました。請求の要旨は以下の通りです。産業振興部農林水産課の農政係長が平成19年7月13日に宮城県仙台市で開催された農林水産省東北農政局主催の平成19年度農業振興地域制度地方研修会に参加し、能代市はその研修会の旅費22,420円を支払いました。平成19年度の予算書には、この旅費が「イオン株式会社からの農振除外申し出に伴う、能代農業振興地域整備計画(能代地区)の変更に係る国協議に必要な経費」と特化して明記されていました。しかし、当該職員は研修会に出席したものの、イオン株式会社からの農振除外に関しての国との協議は一切行っていませんでした。よって、この研修への支払いは目的外使用であり違法と考え、研修会旅費22,420円を能代市に返還することを求めました。提出された事実証明書類には予算内訳書と当該研修会の復命書が含まれていました。

監査委員の判断

監査委員は本件請求を棄却することを決定しました。以下、その理由を述べます。

  1. 研修会への出席の妥当性について
    当該研修会は、農業振興地域の整備に関する法律に基づき、農業振興地域制度および農地転用許可制度の運用がより適正に行われることを主眼に開催されたものでした。研修会の内容は制度全般に関わるものであり、市の農林水産行政の遂行に必要不可欠なものであったと判断されました。よって、研修会への出席自体は妥当であり、不適切な内容ではないと認められました。

  2. 予算説明と異なる内容での旅費の予算執行について
    年度当初予算は、その調製時の予測や見積りによって作成されるため、実際の予算執行時において予算内容と異なる事由が生じる場合があります。当該旅費については、予算調整時に先進地事例を参考に仙台への旅費として5回分を予算計上しましたが、研修会旅費の予算執行時点では国との協議回数も未定であり、全ての旅費予算が未執行であったため、補正予算や予算流用にはなじまなかったと判断されました。当該旅費の執行は、農業振興地域整備計画の変更を円滑に進めるために必要な内容であり、その事業目的に照らして不適切ではないとされました。

  3. 議会での説明と異なる予算執行について
    議会で説明した内容と異なる予算執行は適切ではないと判断されましたが、当該旅費の執行はどのような手続きを執るにしても執行してしかるべき内容であったと認められ、市に損害を与えた行為とは言えないとされました。したがって、本件請求については、住民監査請求の対象とはならないと判断されました。

付言

監査委員は、予算の議決事項は款および項であるとはいえ、それに付随する目や事業内容等を踏まえて決定されることを鑑みると、説明した事項は拘束力を持つと考えられます。市はこれと異なる執行を決定したため、今後は予算執行にあたって議会や委員会での説明を行うべきとされました。


公務員の旅費の世界はなかなか難解です。