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マーダーミステリーのパッケージシナリオ「初心者オススメの作品5選」と「オススメできない作品5選」合計10作品レビュー


■初心者にオススメできるパッケージマダミス

マーダーミステリー業界で度々話題に出る「初心者にオススメできるマーダーミステリーは何か?」という問題。
マーダーミステリーの定義とか小難しい話は一旦全部捨てておいて

「マーダーミステリーに興味があるんだけど、何をすれば良い?」
「知り合いをマダミス沼に沈めたいんだけど…」

といった場合に、具体的に何をオススメすれば良いのかという観点で、特に購入が容易で、今すぐにでも誰にでもできる初心者向けパッケージシナリオについてご紹介します。

具体的な条件として、以下の条件全て合致するものを紹介しております。

・オーソドックスなシナリオ
(基本的にプレイヤーの中に犯人が存在し、各自に秘匿事項があり、疑心暗鬼になりつつも犯人の逮捕が共通の目的である。プレイヤーの調査が無意味になるような極端などんでん返しなども存在しない。)

・入手が容易
 (今すぐにでも通販が可能なくらいに量販されている。実際に販売サイトへのリンクを張っておきます)

・情報が複雑すぎない
 
(情報量で圧殺するようなシナリオではない、情報の読み込みに不慣れな初心者でも無理のない速度感で進行が可能)

・GMレスでプレイが可能である

以上の条件を満たしているため「じゃあ、次の週末にちょっとマーダーミステリーやってみようか」という場合にも、すぐに楽しめるようなラインナップとなっております!

では、実際の作品紹介に入りましょう。

何度だって青い月に火を灯した(6-7人用)


 日本におけるマーダーミステリーのアーキタイプ(原点)

 初心者はまずこれをプレイすれば間違いない。正直これ一本で今回の話は終わるし、これを紹介したいがための記事

 マーダーミステリーに求められる「殺人事件が発生し」「その事件に居合わせた当事者として」「各自の思惑を腹の中に抱えながら」「事件を調査し、推理を行い」「推理発表を行い犯人を拘束し」「それぞれの思惑によって結末が変わる」という点を全て満たした、教科書のようなシナリオ。

 マフィアの抗争を題材にしているため、若干治安が悪かったり、血なまぐさい部分もあるが、あくまで舞台設定としてであるため、そこまでセンシティブだったりバイオレンスだったりする所もない。
 むしろ殺人事件をテーマにしているのだから、これくらいの治安の悪さはあって然るべきであり、マーダーミステリーとしてはあらゆる側面が模範的なシナリオ

 ゲームシステムとしても、「EXカード」「アクションフェイズ」など、現在の日本で流行しているマーダーミステリーのシステムの骨格を過不足なく備えており、システム面でも非常に模範的であると言える。(むしろ後発のシナリオがこのシナリオを参考にしているから当たり前か)

 最初期に出たシナリオでありながら、今なお色褪せない。むしろ、現在のシナリオはやや変化球のシナリオが多いからこそ、マーダーミステリーを初期の頃に触るにあたっては、ぜひ触って欲しい不朽の名作

 マーダーミステリーを400作以上経験した筆者が、これこそが「最も模範的なマーダーミステリーである」と、胸を張って言える珠玉の一作である。

補足:グループSNE作品について

 なお、この作品に限らず、グループSNE作品は一定の品質を保っているため、青い月以外にも初心者にオススメできる作品は数多く存在する。ぶっちゃけ初心者用はグループSNE作品を挙げればそれで全く問題ない。

 ただし、SNE作品にも濃淡はあり

 ・「九頭竜館の殺人」「人狼村の祝祭」は、初心者向けの難易度ではあるものの特定の作品のテーマがあり、それを知らないとプレイ不可とまではいかないが、作品の雰囲気を十分に楽しむことができない。

 ・「あの夏の囚人」「川辺の夜の夢」等は情報量が多かったり特殊ギミックがあったりして、一度オーソドックスなシナリオを経験して、情報処理の余裕をもってプレイした方が楽しめる。

 ・「ダークユールに贖いを」「優しい死神の席」は非常に総合点の高いシナリオだが、ロールプレイ色が強く、プレイにあたってロールプレイの余裕が生まれた頃にプレイした方が楽しめる。

 ・何よりも「初心者向け」と銘打ったシナリオでグループSNE作品を挙げてしまうと、それだけで紹介が全て終わってしまう

 以上の理由から、「初心者向け」としてはグループSNE代表として「何度だって青い月に火を灯した」を紹介させてもらいました。

 都合上、グループSNE作品は1作品しか挙げていませんが、「罪と罰の図書館」「魔女は黄昏の鐘に消える」あたりもオススメできると思います。
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消えたパンツと空飛ぶサカナ(5人用)

ある朝、シェアハウスで暮らす春魚サワラはお気に入りの下着がなくなっていることに気付きます。
もしかしたら誰かが盗んだのかも!? 住人を呼び出し下着の行方を追いますが、事件は意外な方向に進み……?

タイトルを見てぎょっとする作品。

 内容を想像することが難しいが、中身としては非常にライトなマーダーミステリー作品であり、ボードゲームをプレイするような層から、マーダーミステリーの導入を行うのにちょうどよい塩梅の軽さのシナリオ。

 「マーダーミステリーって興味があるけど、たくさんの情報から推理したり、疑いあったりするのってちょっと怖い…」という未経験のプレイヤーに対して「推理体験」「駆け引き体験」を楽しく提供するのに適切な作品。

 設定としても現代設定で「シェアハウスで過ごす青年達」であるため、おそらくマーダーミステリーをプレイする主要層であろう、20~30代のプレイヤーとして、無理にロールプレイをしなくとも、素の喋り方でも雰囲気を崩さずに楽しめるのもメリット。

 一点、注意すべき事項として、シナリオの前提説明に

 「ある朝、シェアハウスで暮らす春魚サワラはお気に入りの下着がなくなっていることに気付きます。もしかしたら誰かが盗んだのかも!?」

商品説明より抜粋

 と書かれている通り、「女性用の下着が無くなった」という導入であるため、議論の最中も「○○の下着が~」といった言動を行わざるを得ない。
 下ネタが苦手な人や、男女のグループで遊ぶ際は予め「そういう話題が出てくるシナリオ」という事を認識しておいた方が良い。
 逆に、そういった話題をゲラゲラ笑いながらプレイできる間柄であれば、むしろ加点要素となるため楽しめる。

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猟奇はカクテルに滲む(4人用)

どこにでもある普通のバー。馴染みのメンバーで手持ち無沙汰にしていると、マスターから「マーダーミステリー」なるゲームを渡されて……。

あらゆるプレイヤーにプレイして欲しいオシャレなパッケージマダミス。

 おしゃれなパッケージデザインから、物語への導入、コンポーネントのデザイン、そして真相に至るまで全てが非常に丁寧に作られており、コンパクトながらも確実に満足感を得ることができる良作。

 初心者にオススメできる親切さやオシャレさでありながら、一方で筆者のようなマダミスジャンキーがプレイしても物足りなさを感じることはない工夫が凝らされている。

 コンポーネントデザインがとにかく秀逸で、それらを見るだけでもこの作品をプレイする価値は高い。

 コンポーネントには、プレイヤーの推理を補助するような親切な資料等も入っており、これも初心者に進めやすい一因でもある。
 ただし、経験者がプレイするには若干親切すぎる側面もあるため、ある程度腕に覚えのあるプレイヤーは、補助資料無し、メモも無しでプレイするなどしてある程度の難易度調整は可能。

 なお、タイトルやパッケージイラスト等から想像できるように、バーを舞台とした設定のシナリオなので、もし可能であれば、開催する場所をセッティングし、オシャレな雰囲気ジャズミュージックをBGMに、カクテルを片手にプレイすると、雰囲気が高まってより楽しむことができるだろう。

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オッドタクシー ショー・タイム(5人用)

名作ミステリー作品「オッドタクシー」をテーマにした作品。

 原作付きに定番の「原作を知らないと満足に楽しめないのではないか」という懸念があるが、この作品については、良くも悪くも原作を知っていることによる世界観の理解や満足についてはほとんど差異は無い。

 「オッドタクシー」という元の作品は非常にミステリとしての完成度が高く、冒頭からクライマックスまで非情に緻密に作られているが、おそらく意図的にその「本編の真相」部分は語られておらず、本編のネタバレを気にする必要は無く、仮に本編を履修済であってもその部分で有利不利が出ることはない。

 原作のキャラが一部で出てくるため、知っているとニヤリとする部分はあり、そういった意味では勿論原作を知っている方が楽しめるのは間違いないが、あくまでオマケ要素であり、原作を知らない人が疎外感を感じたりすることはない。

 一方で、原作のオッドタクシーにあるように、動物をモチーフにしたユニークで濃いキャラクターになってプレイできるというのは看板に偽りなしで、ポップでダークなオッドタクシーの世界の当事者の一人として楽しむという目的は十分に達成できる。

 対立構造やロールプレイも「楽しく」プレイできるような配慮がされており、マーダーミステリーとしての楽しさをぎゅっと凝縮した一作。コラボシナリオとしても、純粋にマーダーミステリーとしてもオススメの作品。

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腐草館からの招待状(7人用)

山の奥深くにある「腐草館」と呼ばれる洋館。
心霊スポットとして知られる場所なのだが、こんな場所にも人が住んでいる。
物好きな人間もいたもんだと周辺に住む人からは変わり者呼ばわりされているそうな。

ある日、そんな洋館から数名の元に手紙が届く。
それは洋館での会食の招待状だった。
不審に思う者、期待するもの、それぞれ様々な思いで指定の日時に洋館へと集まる人々。
執事に案内をされた洋館は不気味な雰囲気が漂っていた。

挨拶に現れた、当主との会食を終えた人々はそれぞれ洋館で過ごしていたが、突如悲鳴が。
全員が駆けつけると、そこには当主の遺体が……!

山道を車で数時間かけないと辿り着けないこの洋館。
招待された人物以外がこの館に来ているとは考えにくい。
もしかして、この中に殺人犯がいるのだろうか……?

  こちらもマーダーミステリー最初期から存在しており、「九頭竜館」「鬼哭館」と並んで「三大パッケージ館マダミス」と呼ばれている(呼ばれていない、僕が勝手に呼んでいるだけ)

 「マーダー★ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~」というマーダーミステリーをテーマしたドラマのオーディション用に書き下ろされたシナリオであるため、役者が演じることを想定したストーリーやハンドアウトであることが特色。

 キャラクター毎に若干濃い色付けがされており、それぞれスポットライトが当たりやすいような形となっている。そのため、普段よりも少しだけロールプレイを意識したやりとりをすると楽しみやすい

 とはいえ、プロの役者のように、感情的に激昂したり、感涙でむせび泣いたりといった演技が求められる訳ではないのでそこは安心して欲しい。

 ロールプレイ色が強いという側面では若干ハードルの高さはあるが、そもそもオーディションに来る役者は、マーダーミステリー熟練者を想定されてはいない。
 そのため、自ずとマーダーミステリー初心者にほどよい情報量となっており、ロールプレイを楽しめるような配慮がされているので、全体的に安心感を持って楽しめる良作。

 コンポーネントが楽しげなのも非常に良い。

 テレビの企画と連動している一点もののシナリオでありお金がかかっているためか、他のパッケージマダミスと比べて全体的な品質がワンランク上であるため、全体的なリッチ感も感じられる嬉しい作品。

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■初心者にオススメできないパッケージマダミス

 では逆に、初心者にオススメできないパッケージマダミスとは何か。

 それはつまるところ、初心者向きの要素を全て反転させた、ハードルの高さがある作品であり、「作品としてつまらない」という意味では全くない(むしろエキサイティングな楽しい作品である。筆者としてはこちらの群の作品の方がむしろ好き!)

・オーソドックスなシナリオであり、奇をてらったシナリオではない
 ⇒刺激を求めるプレイヤー向けの、変化球なシナリオである

・入手が容易
 ⇒入手が困難、やろうと思ってもすぐに手に入らない。Amazonでプレミア価格で売られていたり、boothで直販されていたりするが、入荷状況が不安定であるため各自で探す必要あり

・情報が複雑すぎない
 ⇒情報量が多い。腕に自信のあるプレイヤー向け

・GMレスでプレイが可能である
 ⇒GM必須。そういったツテが必要

 これらのハードルの高さは、一概にデメリットとは言えず、ハードルが高いが故に「より興奮度の高い経験が可能」ともいえる。

 よって、マダミスをある程度プレイしており、より刺激のある作品をプレイしたいプレイヤー向けの商品もいくつか紹介していきたいと思う
 (むしろ、この記事を見る人は、こちらの方が需要が高いかもしれない)

キルタイム・キラーズ 絶泉館の殺人(5~6人用)

ヨドバシ.com - オーシャンフロンティア キルタイム・キラーズ 絶泉館の殺人 [ボードゲーム] 通販【全品無料配達】 (yodobashi.com)

東京から程近い避暑地、その外れの山奥にある古びた洋館「絶泉館」。
その館の主が殺された。
容疑者は現場で気を失い倒れていた男女5名。
奇妙なことに皆、昨夜の記憶を失っているが、館の執事が提示した調査資料によると、この5名は全員が「未逮捕の殺人鬼」であるという。
あなたは事件の謎を解くとともに、殺人鬼としての自分を覚醒させ、果たすべき殺人を達成しなくてはならない。

 プレイヤーが全員殺人鬼というぶっ飛んだ設定と、ポップな絵柄。加えて調査システムもかなり独特かつ複雑であり、殺人鬼という設定上、やりとりも剣呑なものとなり、プレイヤー間の対立が発生しうる。

 漫画を用いた導入の読み合わせや、ともすれば次の瞬間には凶器を振るってくるかもしれないサイコパスを自らが演じる&相手することこそが醍醐味であり、濃いキャラクター達になりきってロールプレイを全力で楽しむことがこの作品をプレイするにあたって必要な心構えとなる。
 もちろん、ただの朗読劇だけではなく、推理要素や対立要素を含めた、マーダーミステリーとしての面白さも備えられており、ロールプレイしながらもしっかりと推理や駆け引きといったことを考える必要がある。
 推理、駆け引き、ロールプレイ全部載せの、その全てをマルチタスクで楽しみたいプレイヤー向けの贅沢なシナリオ。

  GMレスも可能ではあるものの、調査のルールや情報の出し方がかなり特殊であり、マーダーミステリー経験者でも円滑に進めることはかなり困難
 それ以上に、GM処理を行いながらロールプレイを並行して行うのは、進行役のプレイヤーが処理に追われて作品に没入できないことが確定するので、GMを立てて処理することを推奨する。

 そういった意味で、推理、RP、進行全てに対して自信が持ててきた頃にプレイして欲しい、初心者向きではない一作。

焚家(5~6人用)

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舞台は現代、アメリカ・ニューイングランドの地方都市。大富豪グレッグ・モリスは街のはずれの丘の上に屋敷を建てた。しかし、完成してみると、館には暗い影が落ちることになる。建築にかかわった者たちの不可解な死や行方不明。館周囲での不気味な現象の数々。美しい新築の館は、幽霊屋敷だと噂されるようになり、館の主のグレッグ・モリスとその妻も、館に引きこもり、人前に姿を出さなる。そんな中、グレックの息子、設計士、新聞記者、霊媒少女、精神科医、収集家の6人が館に招かれる。これが惨劇の始まりとも知らずに……。

 美麗なパッケージイラストが目を引き、グループSNEが送り出す新レーベル、MYSTERY&ADVENTURE BOXの第一弾。

 万人にオススメできる新世代のシナリオ…かと思いきや、中身としては特殊な進行方法骨太な作りとなっており、考慮するべき情報量がやや多いため、中級者以上向き。

 一応GMレスも可能ではあるが、特殊処理や複雑な条件な部分も多く、各プレイヤーが正しくそれらを解釈して処理する必要があるため、GMレスで実施する場合はプレイヤーへの負担が非常に大きく、事故の可能性がある。
 それでいて、処理を一手ミスするとそれだけで致命的となりかねない危うさも秘めているため、仮にプレイヤー全員が熟練者だとしてもあまりお勧めはできない。

 何より、システムが独特故に「こういった進行をするのがマーダーミステリーなのか」と認識を与えてしまうと、他のマーダーミステリー作品との認識のズレが発生してしまう懸念もあることと、純粋にその「独特な」部分に対して処理しなければならない思考に相当な負荷がかかる。まずはオーソドックスなシナリオを経験してからの方が良い。

 GMを立てることにより、複雑な調査システムについてはプレイヤーの負担を緩和することが可能であり、少し特殊で骨太なシナリオをプレイしたい人には満足できるであろうシナリオ。
 勿論、パッケージイラストのキャラクターに惹かれた人がプレイしても満足できるだろう。

テセウスの手引き(8人用)

テセウスの手引 - newmerous 作品通販 - BOOTH

 【合衆国】と【連邦国】。
二つの大国が睨み合う情勢の中、他の国々はどちらの陣営につくのか選択を迫られた。

そんな中、【合衆国】陣営に所属する【メスカリア】という小さな王国で革命が起きる。 人々は【革命軍】を組織し、【王国軍】と武力衝突を繰り返す。
序盤は惨敗を繰り返していた【革命軍】であったが、【連邦国】の支援もあり徐々に勢いを増す。 そして【××59年】、【革命軍】は王宮に攻め込み、国王一族を処刑し、革命を成功させる。

ここに数百年続いた【メスカリア】王国は滅んだ。

【革命政府】を樹立した【メスカリア】は【連邦国】陣営に転向。
これにより【合衆国】と【連邦国】間の緊張状態は一気に高まることなった。

平穏とは程遠い世界。

あなた達の物語はこれより始まる。

 筆者が今までプレイした中で最も重いパッケージシナリオ。公開情報にもある通り「二重人格」をテーマにしているため、それだけでも情報整理が大変であることが伺えると思うが、設定も重厚で、やりごたえ抜群。

 「パッケージマダミス」といえば、コンポーネントの制約や、GMレスである以上、どうしても情報量や面白さが「頭打ち」になってしまうような印象があるが、この「テセウスの手引」は、店舗シナリオ相当の重厚な情報量や駆け引きを楽しめる、最重量級のシナリオだと言える。

 濃厚な情報が楽しめる分、参加者全員に情報の波を泳ぎきってやるという覚悟が必要であり、一人でもそこから振り落とされてしまうと楽しむことができない。参加者全員が中級者以上である必要がある。

 独自の世界観をもとにシナリオが展開されるため、世界観および、自分がどのようなキャラクターであるのかというのをしっかりと認識する必要があり、情報の量だけでなく、質も「重い」ものとなっている。
 
 加えて、”二人一役の「二重人格システム+」”という、二重人格をテーマにしたからこそできるかなり変則的な配役となっており、擬似的なペアマダミスともなっている。
 全員と顔見知りである必要はないが、少なくとも同じ人に入るペアは知り合いでプレイした方が、情報伝達もスムーズになり、プレイ感覚としても楽しいものとなる。
  
 総じて「中級者以上の」「8人のプレイヤーを」「ペアを加味して」集めなければならないという、非常に高いハードルの作品。ただし、そのハードルを乗り越えた先の、パッケージシナリオとは思えない濃厚な体験は保証する。

超能力者バトルロワイヤル(5人用)

(現在入手不可能?)

ー私たちは、神にも等しい力を得た。

 プレイヤーは超能力者となり、超能力を駆使して事件を暴くが、もしかするとこの超能力者たちはニセモノかもしれなくて…? という、某TRI○Kを思い出すようなトンチキ設定
 
 某TRI○Kの劇場版「霊能力者バトルロワイヤル」をタイトルからして明確にオマージュしており、登場人物達も、どこかで見たことがあるような人物っぽいキャラクターが並んでおり、作品の随所からうさん臭さが漂う。

 プレイヤー全員が超能力者であるため、議論中も超能力の応酬となるが、超能力を使用する際に自ずとそのキャラクターに注目が集まるような仕組みになっているため、各プレイヤーに順番にスポットライトが当たり、かつ、ロールプレイの楽しさや、このシナリオならではのびっくりどっきりギミックも多数用意されており、議論時間はとてもエキサイティング

 筆者はこのシナリオが大好きであり、ぜひ皆に体験してもらいたいシナリオだが、このシナリオはいわゆる「マーダーミステリーのお約束」を意図的に踏み越えたり、プレイヤーの悪ノリを推奨するシナリオであるため、模範的なシナリオとはおおよそかけ離れたプレイ感覚となる。

 まずはオーソドックスな形のマーダーミステリーを経験してからの方が、「ズレ」による面白さを実感できるという意味で、初心者向けではない。(※シナリオの骨格はしっかりとしたマーダーミステリーの構造であるためその部分は安心して欲しい)

 プレイヤーのロールプレイ力も楽しさに直結する。
「スキルを使います、あ、こういう情報が分かりました」と淡々と処理するのではなく「俺のターン! 超能力を発動するぜ! はああああああっ!!!!  来た来た、俺の頭の中に…この事件の真実が…!!! …こ、これは…。 ふふっ…教えて欲しいか? 仕方ない、そこまで言うなら教えてやろう…。」と、派手派手しく、うさん臭く、騒がしくプレイすることが推奨されるため、そういった意味でも、全く初心者向きではない。

 また、入手難易度も非常に高い。ゲームマーケット2021秋で販売され、その後も一回だけ再販されたが、現状ではほぼ入手不可能と言っても良いため、そういった意味でも初心者には向かない。

 それでも、この場で強くオススメいたい唯一無二の楽しいシナリオなので、プレイする機会がある人はぜひプレイしてみて欲しい。

銀の瞳の君を求めて(2人用ストーリープレイング)

銀の瞳の君を求めて - StudioOZON - BOOTH

 当シナリオはマーダーミステリーではなく、ストーリープレイングとなるため、若干ジャンルは異なるが、類似したジャンルであると思うため紹介する。

 今でこそいちジャンルとして確立された「ストーリープレイング」だが、そのストーリープレイングの原点となったのがこの「銀の瞳の君を求めて」であると筆者は認識している。

 内容については何を語ってもネタバレになってしまうが、筆者がプレイしたところ、非常に満足する時間を過ごすことができた。「大切な二人の関係性で」「会話を交わしながら」「かけがえのないひとときを過ごす」という意味では、間違いなく楽しめる一作であることは間違いない。

 ただし、この作品を十全に楽しむにあたっては、相当なハードルの高さが要求されてしまう。

 人気作品であるが故に入手は困難であり、ゲームマーケットで販売され、その後、都度再販されているが、即座に売り切れてしまう状態が続いている。

 また、プレイヤー層としても「35歳以上」という、マーダーミステリーやストーリープレイングの主要層からはやや高めの設定とされている。20代のプレイヤーでも楽しめなくはないが、やはり、想定されたプレイヤー層でプレイした方が楽しめる。
 加えて、プレイする2人は親密な関係であることが望ましい。夫婦や恋人、親友等のパートナーでプレイすることが望ましく「とにかくこのシナリオを通過してみたいから、誰かプレイしてくれる人を募集」という形の募集はオススメしない。

 価格としても、2人用60分で7000円という価格帯は、他のマーダーミステリー/ストーリプレイングのパッケージ作品と比べて高額であるし、映画やゲームといった他の娯楽と比べても高額であることは否めない。
 先述の年齢層の話も含めて、この価格を払うことに抵抗感のないプレイヤー層をターゲットにしていると思われる。
 なお、本の装丁はかなりリッチなものとなっているため、プレイした二人の思い出も含めて、7000円相応の豪華さはあると思ってよい。

 総括すると、当作品はあらゆる観点から「敷居は高いが、大切なパートナーと濃厚な時間を過ごすことができる作品」であると言える。学生や新人の社会人ではなく、落ち着いた暮らしで、何でも話せるかけがえのないパートナーのいるプレイヤー同士でゆっくりとプレイして欲しい。

 補足となるが、ここで求められるハードルの高さは、マーダーミステリーをプレイするために求められるものとはベクトルが異なるため、マーダーミステリーの初心者であっても、想定されたプレイヤー層であれば、プレイしても全く問題はない。

■最後に宣伝

最後に、パッケージマダミスでもなく全く脈絡はないのですが、自分の作成したマーダーミステリーのオリジナルシナリオの宣伝をさせてください!

異世界転生者になろう! 超豪華版

「異世界転生者になろう!」が、AIイラストやココフォリアの機能をつかった「超豪華版」になり、業界最高峰のリッチなプレイ感覚の作品に生まれ変わりましたので、ぜひ皆様プレイしてみてください。
プレイ済の方も、改めてココフォリアのコンポーネントを見るだけでも、「こんな事やってんのか…」と面白いと思います(?)

異世界転生体験型マーダーミステリー「異世界転生者になろう!」超豪華版 - BlueBirdStore - BOOTH

サザンクロス20xx

また、「サザンクロス20xx」も、作品のロゴ、全体的なデザイン、ユーザビリティ向上、および追加コンテンツの大型アップデートを行いました。
こちらの作品、既にプレイした方も多いかと思いますが、追加コンテンツは「20分の音声付きムービー」とかなり豪華なので、ぜひ当時を思い出しながら聞いてみてください。
まだプレイしていない人は、GMレスでもプレイ可能なので、ぜひプレイしてみてくださいね!

ペア選択型マーダーミステリー「サザンクロス20xx」 - BlueBirdStore - BOOTH

マーダーロワイヤル

最新作「マーダーロワイヤル」も好評発売中です!
「オープニングムービー」や「リアルタイム時系列」「1時間以上の読み合わせ」など、様々な意欲的な取り組みを行っている豪華な作品ですので、ぜひプレイしてみてください!

覇権争奪型マーダーミステリー「マーダーロワイヤル」 - BlueBirdStore - BOOTH

ちなみにyasu作品をまだ経験していないという人は
まずは「サザンクロス20xx」(初心者~中級者向け)からプレイするのがオススメです!

マダミスに慣れてきてる人は「異世界転生者になろう!」および「マーダーロワイヤル」をプレイしてみると、刺激的なプレイができることをお約束します!

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