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マーダーミステリーの推理が苦手で苦手で仕方ない人へ ~マダミスの推理マニュアル~

■はじめに

 皆さん、マーダーミステリー楽しんでいますか?

 自分は毎日のように楽しんでいるのですが、「推理が苦手」という声を、同卓者やGMをしている時にちらほら(むしろかなり)聞きます。

 シナリオをプレイするにあたり、自分は推理役を買って出る事が多いですが、毎回都合良く名推理をひらめいたり、古今東西のミステリー小説に詳しい訳ではなく、マーダーミステリーにおける一種の作法に沿って情報整理を行っているだけだったりします。

 「推理」はマーダーミステリーの中心であり、気持ちよく解けた方が気持ち良いですし、苦手意識を持ったままプレイするのはもったいないので、一度、自分が推理をする時に行っているロジックを言語化してみました。

 「推理苦手だよー!」という人は、この記事を読んで見ることで「なるほどそういう風に考えれば良いのか!」と、推理がちょっと得意になるかも?

■注意事項

 ※マーダーミステリーにおける推理を説明する上で、具体的な事例を紹介していますが、これらの事例は何か特定のシナリオで実際にあったことではなく、全て架空のシナリオで事例を作成しておりますので、ネタバレにはあたりません。(とは言え、マダミスあるあるネタで例を作っていますので、意図せずネタバレにニアミスするかもしれない点はご容赦ください)

 ※マーダーミステリーはシナリオ毎にそれぞれ独自の推理やギミックが用意されているため、一般論というものは存在しません。あくまで「自分が経験した中で、色々なシナリオでベースとして利用できる考え」を提示しています。そのため「これがマダミスの正しい推理だ」といった考えや「これを使えば絶対に推理できる」というものではないことはご承知おきください

 ※加えて、この記事は、マーダーミステリーを構造的に(メタ的に)推理する方法を紹介しています。メタ的な推理は没入感を削ぎ、好みが分かれる推理方法ですので、その点もご注意の上でお読みください。

■前提:マーダーミステリーは推理小説ではなく、あなたは名探偵ではない

 マーダーミステリーは「推理小説の登場人物になる」といった形で宣伝されることが多いですが、大前提として、マーダーミステリーは推理小説ではありません。

 あなたたちはシャーロック・ホームズやコナン君、金田一少年のような名探偵ではないため、天才的なIQを持ち、毎回都合よく真相を閃ける訳ではありません。あくまで一般人並みの推理力しか持ち合わせていません

 ですが安心してください、マーダーミステリーはそういった一般人を対象としており、名探偵を対象としたゲームではありません

 一般的にミステリ小説では、緻密な犯罪計画であったり、常人では発想もできないような仰天するトリックが仕組まれており、読者は往々にしてその大胆さや緻密さに驚愕することとなりますが、マーダーミステリーにおいては常人の発想を超えたトリックはおおよその場合発生しません。
 
なぜなら、そんな壮大な謎を用意しても、一般人であるあなた達は誰も解けずに終わってしまうからです。そしてそれは、ゲームとして成立しない(=プレイヤーの満足度が低い)シナリオとなってしまいます。

 
よって、マーダーミステリーのシナリオは、天才的なひらめきを不要とする、一般人でも解けるレベルの謎しか用意されていません。

 「自分は名探偵になれるのだろうか」というギャップに悩んでいる人が多いように感じていますが、真相に至るために必要なのは、名探偵のような天才的ひらめきではなく、一般人でも解ける謎が用意されているということを自覚すること。そして、その上で、地道に証拠を積み上げ、誰にでも分かるような論理的な思考で導ける結論を考えることです。

 具体的な思考方法について、以下に述べていきます。

■基本その①:時系列精査

 何時に誰がどこで何をやっていたか、ということを整理する時系列の精査はマーダーミステリーの基本中の基本でありながら、実は面倒くさくてあまりやりたがらない嫌われ者でもあります。

 概ねのマーダーミステリーは時系列がきっちりと定義されており、各キャラクター間の会話や証拠によって、何時に、誰が、何をしていたという事を確定させていくことで、アリバイの有無をはっきりとさせたり、不審な行動をしていた者があぶり出せる構造となっています。

 ですが、この時系列精査という作業、ひたすらに面倒くさいです。

 何時何分に誰がどこで何していたという情報を、漏れなく、網羅的に聞き取った上で綺麗に整理する必要があり、そのくせ、どこか一箇所でも聞き間違いがあったり、誰かが嘘をついていると崩壊するという厄介もの。まるで賽の河原の石積みの如くの苦行です。

 「推理が苦手」という人は、時系列については重要だということがわかっていても、「卓の中で時系列精査が得意な人に任せる」もしくは「時系列はあまり考えず、証拠品や印象論で犯人を決める」としてしまっているのではないかと思います。

 また、「何時にどこで何をしていたか」とピンポイントで聞くことはよくありますが「全員分の行動を最初から最後まで漏れなく聞き取って完璧にまとめる」までしたことある人はあまり居ないのではないでしょうか。

 ここに対して苦手意識を持ったまま、時系列整理を放棄したままでは、マダミスに対する推理レベルは頭打ちになってしまいます。

 では、推理が得意になるためにはどうすれば良いのか?

 答えは単純です


 時系列精査を訓練しましょう

 

 分かりますよ、面倒くさいですよね、やりたくないですよね。

 けれど、時系列精査はマーダーミステリーにおける「計算ドリル」のようなもので、やればやるほど地力が付いていきますし、やらなければ永遠に身につきません。少なくとも、推理に対する苦手意識がなくなるまで、率先して時系列精査を行いましょう。

 この時重要なのは、中途半端な時系列精査はあまり意味がないということです。

 例えばよくある時系列精査として「犯行時刻と思われる15:00に、Aさんはキッチンに、Bさんは寝室に、Cさんは中庭に居た」という情報は、時系列精査としては片手落ちであり、ただの「特定の時間帯のアリバイ確認」に過ぎず、「時系列精査」にまでは至っていません。

 「その日の行動の始まりである12:00~死体発見の19:00の間を10分刻みで整理して、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんの5名の行動を全て聞き取り、それぞれの相互アリバイは合致しているか、動きとして不審な所はないか、場所の移動にかかる時間は適切か、不自然に空いた時間は無いか、カードとの情報に不整合はないか」という点まで検討して、はじめて「時系列精査」は意味を成します。

 最初はやる気をもって時系列精査していたけれど、途中で何だか面倒くさくなって、部分的にしか埋まっていない時系列を作ることは、(少なくとも時系列精査の訓練をする上では)あまり意味がありません。
 必ず「タテ(時間軸)もヨコ(人物)も全ての時系列を精査する」ことを意識して、練習してみましょう。
 

 めんどくさいですよね、やりたくないですよね。

 真面目に時系列精査をしようとすると、調査時間の殆どをそれにとられる上に、「そもそもマーダーミステリーって時系列を聞き取って整理するだけの数学パズルゲームなんだっけ?」という哲学的な問いかけが発生し「そんなことよりロールプレイして会話する方が楽しくない???」という状態に陥るため、自分も時系列精査はあまり好きではないですし、最近はわざと時系列精査を行わずに推理するスタイルになっていたりします。

 ですが、時系列精査はあらゆるマーダーミステリーで汎用的に活用できる推理方法であり、推理が苦手だとした場合に、個人の努力で力を高めることができる領域であることは間違いありません。

 また、完璧な時系列精査を毎回やらずとも、ある程度時系列精査の作法を覚えておけば、時系列上で怪しい部分を感覚で指摘すできるようになります。
 
 やりたくないかもしれませんが、一度、時系列精査に真面目に向き合うと、間違いなくあなたの推理力は向上するでしょう。


■基本その②:ギミックの把握

 マーダーミステリーのシナリオには、ウリとなる「ギミック」が搭載されていることが多いです。

 それぞれのシナリオによってギミックの種類は千差万別ですが、例えば「カードAとBを組み合わせるとCという追加情報が手に入る」「後半になると調査箇所が増える」「正しい暗証番号を入力すると金庫が開く」などがよくあるギミックです。(勿論、この他にも、想像もつかないような面白いギミックは沢山あります)

 そのギミックを使った情報は、作者がプレイヤーに特別な体験させたいものであり、かつ、何かしらの手順を踏まなければ手に入れられない情報となるため、情報の重みが非常に思いです。

 もっとわかりやすく言うと、ギミックを搭載しているマダミスは、ギミックを発動させないと真相にたどり着けないと考えても過言ではありません。

 逆説的に言えば、ギミックを経て手に入れた情報は非常に重要な情報であるという図式が成り立ちます。

 例えば「古ぼけた鍵」というアイテムを入手し、後半になって調査が可能になった「開かずの間」を開いた結果、「ただのぬいぐるみ」が出てきたとします。

 そんなものが「ただのぬいぐるみ」なんかであるはずがありません。

 それは例えば「登場人物Aが過去に娘に贈ったぬいぐるみであり、親子関係を証明するもの」であったり、「邪神を呼び出すために必要となる供物」であったり、とにかくシナリオの真相に至るための非常に重要なアイテムであることは間違いありません。

 登場人物としては「何だ、ただのぬいぐるみか、期待はずれだ」という反応が正しいかもしれませんが、プレイヤーとしては「これは絶対何かのキーになるアイテムだ」とい考え、そのアイテムに関係のありそうな人物や仕掛けなどを全力で見直しましょう。

 また、ギミックの発動は「被害者が実は死んでいなかった」「実はこの世界は作られた世界だ」など、往々にして前提をひっくり返したりプレイヤーの目標を変更させたりするものが多く、ギミックが発動する前の情報で推理することは、無駄な推理に終わることが多いです。

 よって、最終的な結論を出す推理を行う前に

 ・このシナリオはどんなギミックが用意されているか
 ・そのギミックが発動するのはいつか
 ・ギミックが発動済みで、推理するための情報が全部出揃っている状態か

 といった点を確認の上で推理することは、真相に到達するためには重要な観点です。

 ギミックを狙うことはメタ推理要素を孕むものの、シナリオを体験する上で、積極的にギミックを踏みに行くということは、結果として物語を楽しむことに繋がるため、プレイする満足度の向上につながりやすく、個人的には好きな解法です。

■基本その③:ノイズ情報の排除

 情報の整理と実は同じくらい情報なのが「ノイズ情報の排除」です。

 調査を進めていくうちに、「怪しい情報」「犯人から注目を逸らすためのダミー情報」が次々と出てきます。この内で「真相には関係のない情報」を適切に排除することで、注力すべき真相が明確になり、整理がしやすくなります。

 情報というのは、数が増えれば増えるほど指数的に複雑性が増加します。10枚のカードの内容の把握と関係性を考えるのは容易ですが、100枚のカードがあると、内容の把握だけでも大変な作業となります。そのため、ノイズ情報の排除をせずに推理を行っても、整理が追いつかずに時間切れとなってしまいます。
 
 よって、この「ノイズの排除」をどれだけ早く・適切に行えるかがプレイヤーにとって重要な技術となります。

 「推理が苦手」と言う方は、この「本来考えなくてもよい情報を無駄に考えて時間をとられてしまい、時間切れになってしまう」というパターンが非常に多いと思っています。

 逆に「推理が上手い」プレイヤーは、この「ノイズの排除の上手さ」が推理力に直結しているといっても良いでしょう。

 一方で難しいのが、「一見関係が無いと思い排除した情報」が致命的になることも少なくないですし、上手い構成のシナリオほど、何気ない情報が何かのきっかけで真相に繋がるといったことも少なくありません。

 そのため、自分は情報に対して以下のように分類をして整理しています

★真相と関係ない「別の事件」の情報

 →例えば、今回の殺人事件とは関係ない「過去の事件に関する資料」「特定の個人の恥ずかしい秘密」に関係する情報は、特定の人物には非常に重要ですが、真相には全く関係無いと位置づけられていることが多いです。そのため、ノイズとして排除する判断が容易です。

★使用済みの情報

 →例えば「どこかを開けるための鍵のアイテム」であったり、「AさんがBさんの親であることを証明する情報」のような、「情報の使用用途が明確であり、その情報は既に解決済みで、今後再利用されないであろうもの」は、意識する必要はありません。(逆に言えば、使用用途が明らかでない情報カードは、まだ何かそのカードを利用していないと思った方が良いでしょう)

★紛らわせであることが明らかな情報

 →例えば、死因が「アイスピックによる刺殺」であることが判明しているのに「血まみれのナイフ」や「拳銃」といった一見それっぽいが明らかに辻褄があわない怪しい凶器を持っている場合、アイテムの意図として、紛らわせであることがわかりやすいです。

★何も確定しない、意味のない情報

 →例えば「死体には殴打の跡と刺し傷があった。おそらく刺し傷によって死亡したものだと思われるが…」「Bさんは昨日何かを思い詰めていた様子でした」といった情報があったとして、この情報に価値はありません可能性や推論を論じているだけで、その情報では何も確定していないためです。

 情報が価値を持つのは、推理に対して道筋を確定させる役割であり、不確定な情報や、ただの不安や想像といった情報は論じるだけ無駄になります。

 ここで重要なのは「一見意味のない情報」と「意味のない情報」をしっかりと区別することです。

 例えば「被害者はコーヒーが大好きで、紅茶が嫌いだ」というような情報は、一見どうでも良さそうな情報ではありますが、被害者がコーヒーを飲み、紅茶は飲まないという動作を確定させる重要な情報となります。こうした情報は積極的に拾う必要があります。
 
 重要なのは「その情報で何が確定するか」です。これを常に意識しながらカードを見ると、情報収集力は確実にアップします。

★装飾部分の排除


 →例えば、とある薬品を調査した際に、以下のような説明文があったとします

 医務室の棚の中に常備されている薬品で、瓶には白いラベルが貼られている。正式名称はトアルヤクヒンXYZ、睡眠に利用される薬品で、一般の薬局でも販売されている。無色透明の液体で匂いもしない。瓶は開封済みで、10cc程度使用された形跡がある。飲み物に混ぜる形で摂取し、2cc程度摂取すると1時間程度で効果を発揮する。10cc以上を摂取すると気を失うようにその場で即座に睡眠する。30cc以上を一度に摂取すると死亡に至る。被害者は生前から不眠症に悩まされており、時折この薬を服用していたようだ。

 この説明で重要なのはおそらく「10ccで即座に睡眠」という1点です。
 「医務室の棚の中に常備されている」「30cc以上摂取すると死亡する」「被害者は生前からこの薬を服用している」といった情報は、確かに事実を述べているかもしれませんが、クリティカルな情報を隠すための賑やかしの文章であり、つまりはノイズです。
 
 一見長ったらしい文書でも、その情報が伝えるべき情報を絞ると1つか2つであることが多いため「この情報のうち、クリティカルな情報は何で、装飾部分の情報は何か」ということを考えるクセを付けておくと、効率的に情報を考えることが可能となります。

 また、これは他人への情報共有を行う際にも有効で「調査結果を教えて」と言われた際に、上記の説明文を最初から最後まで文章を読み上げると、おそらく1分程度かかるでしょう。
 ですが「この薬品を飲まされたらその場で即眠る。けど死因ではない」端的にまとめて発言することで、5秒程度で伝えることが可能で、差し引き55秒の議論時間が確保できます。

 以上のように情報を分類し、整理することでノイズの排除が可能ですが、重ね重ね怖いのは「必要な情報の取りこぼし」。これについては正解は無く、慣れや勘、センスといった部分で「良い具合のノイズ排除」を身につけていくしかありません。

■「絞り込み」の推理

 マーダーミステリーの推理は、精査した情報による犯人候補の絞り込みによって犯人を特定することが基本となっています。
 また、今まで積み上げてきた「時系列精査」「ギミックの把握」「ノイズ情報の排除」は、この「絞り込み」を行うための準備であると言えます。

 この絞り込みを単純例として示すと、以下のような推理方法となります。

【例】
時系列を精査した結果、犯行時刻にアリバイが無いのはA,B,Cの3名
物証として拳銃を所持しているのはB,C,Dの3名
被害者部屋の鍵を持ち出せるのはA,C,Dの3名
 ⇒全ての条件を満たすのはCのみ、よってCが犯人である

 こちらについては、文章よりも、Excel形式、もしくはベン図で表現した方がわかりやすいかと思います(実際、絞り込みを行う際にもこちらのツールは有効です)

 この推理方法は論理的に説明できるため納得度が高く、プレイヤーが収集した情報および推理(情報整理)に正比例する形で犯人が絞り込まれるため、プレイヤーの納得度が高く、情報量や情報の出し方によって推理の進度をコントロールしやすいため、作品を作る側としても使いやすい方法です。そのため、おおよそのマーダーミステリーはこの概念で推理を進めていくことになります。

 推理難易度が「高難易度」となっているマーダーミステリーについても、突飛なひらめきが必要という訳ではなく、情報の量が多く、比例して整理に時間と思考を要するために高難易度となる構造となっています。
 そのため、どれだけ複雑で難しいマーダーミステリーだとしても、基本はこの「絞り込み」だということを考えれば混乱することは少なくなります。

 この方法の一番のメリットは、先程も述べた通り、情報および推理(情報整理)に正比例する形で犯人が絞り込まれることです。

 そのため、たとえ十分な推理ができなかったとしても、その分の絞り込みは可能で、「Aさんが違うことだけは分かる」といったことや「BとCが同程度に怪しい、その根拠はこれだ」と論理的に説明ができることです。

 犯人の特定に至らなかったとしても「全く分からない5択」ではなく「特定はできないけどおそらく2択」といった段階的な絞り込みをするだけでも十分な推理と言えます。

 また、新たな要素が出てきた場合でも、評価軸に1つ増やすだけで絞り込みが可能ですし、推理をする人同士で同じ「絞り込み」の概念を共有できれば、それぞれの推理結果の統合もやりやすいです。

 「誰でもできる」「やってきたことが無駄になりにくい」「他の人とも強力しやすい」という、シンプルかつ汎用性の高い方法ですので、推理の基本として、メモでも頭の中でも構いませんが、常にこの「絞り込み」を意識して物事を考えましょう。

 推理発表の時に、あなたは何かをひらめく必要は全くなく、今まで調査した情報をもとに作った絞り込みの結果を淡々と伝えれば、それが例え完璧な推理でなくとも、あら不思議、それだけであなたは他の人から見て名探偵に見えるはずです。

例:
「(手元のメモを見ながら)まず、時系列ではAさんは絶対に不可能です。Bさんは凶器となる拳銃を所持できないので違います。とすると、残ったのはCさんとDさんですが、正直ここは分かりません。Cさんは被害者に借金をしていて、Dさんは睡眠薬を持っていた点がそれぞれ疑わしいですが、この二人で迷っています。」

 このような推理発表は、本人からすれば「犯人が特定できていない、自信のない推理発表」かもしれませんが、他の人から見れば非常にしっかりとした推理っぽく見えて、後の人にも繋がる、良い推理発表に見えます。

 冒頭でも述べた通り、マーダーミステリーはシナリオによって千差万別であり、「マダミスにおける推理はこれが正解だ」と主張するつもりは全くありませんが、この作法を知っているかどうかで、マダミスの推理に強くなれるかどうかは大きく変わると思います。
 
 推理が苦手な人は、この記事をもとに、一度挑戦してみてください!

■おまけ:推理発表の時にやってはいけないこと

 今までは「推理はこうした方がいいよ」という意見でしたが、逆に、推理発表の時にやってはいけないことをお伝えします。

 それは、自分の推理に自信が無いために答えを濁して発言しないことです。

「すいません、全然何もわかりませんでした。
「私の考えを喋っても逆に迷惑だと思うので…。」
「○○さんの言うことが正しいのでそれでいいと思います」

 上記のような内容は、推理が苦手な人なら思ったことがあるのではないでしょうか。

 マーダーミステリーにおいて、真相が完全に分かり、自信満々に推理ができることは稀です。

 不確定要素がある中で推理発表をして、全然違ったことを言ってしまったらどうしよう、みんなから戦犯扱いされるかもしれないし、馬鹿にされるかもしれない…それくらいだったら黙っておいた方が…。

 「自分の考えを主張して、その結果大きく転ぶ」よりは「何も言わずに自分は転ばない」方が安心できるという考えの人は、結構多いのではないでしょうか。

 ですが、この考えは誤りです。

理由その1:あらゆる推理発表は他の人の推理の助けになる

 推理発表時点では、誰しもが十分な情報を持ったまま発表に望む訳ではありません。当たり前の共通認識だと思っていた情報が、実は特定の人物に伝わっていなかったり、あなたのキャラクターのHOにしか書かれていない情報があったり、何気ない一言が真相に至るための大きなヒントだったりします。
 「当たり前」「どうでもいい」「きっと間違っている」と思っても、あなたの視点で発言した情報は、他の人は推理の材料として活用してくれます。推理発表で黙るということは、最後に他の人を助けるチャンスをみすみす捨てることになります。

理由その2:間違った推理発表は戦犯ではない

 僕自身、「戦犯(=誤った行動によってチーム全体に対して不利益を及ぼす存在)」という概念は好きではないのですが、敢えてこの場では「戦犯」という言葉を使って説明させて頂きます。

 例えば、全体会議の場ではAさんが犯人という方向に概ね決まっていて、あなたが推理発表で「実はBさんが犯人では?」と発表し、その結果としてBさんが最多票を集め、真犯人であるAさんが逃げ切ったとします。

 この場合、あなたは戦犯でしょうか? 違います強いて戦犯を挙げるのであれば「間違った判断をしたあなた以外のプレイヤー」が戦犯です。

 大前提として、プレイヤーは限られた情報から推理を発表せざるを得ないため、推理発表時は皆が等しく間違える可能性を持っており、正しい推理であるという保証は誰もしてくれません。また、狂人でもない限り、わざと皆の意見を誤った方向に誘導しようという意図は無いはずです。

 だとすれば、あなたは誠実に自分の考えを述べただけであり、その結果誤った判断をしたのは他のプレイヤーです。

 万が一「お前が誤った推理発表をしたから皆が間違えた」と責めるようなプレイヤーが居たとしたら、その人はマーダーミステリーというゲームの性質を理解していないだけですし、そもそも誰かを責めるというのはゲームをプレイする上でのマナーとして不適切です。
 

理由その3:一歩踏み出さないと成長もしないし勝利もない

 「推理に自信が無いし、様子見で黙っておけばいいや」という動きがクセになってしまうことが、一番マズいです。

 推理発表や情報整理などは、当然間違えることは多々あります(自分も未だにかなり間違えます、昨日プレイしたシナリオでも間違えました)。けれど、そこで間違えたら「あの情報はノイズじゃなかったのか!」「あの違和感をもっと追求しておけばよかったー!」と、何かしらの反省点は見つかります。

 推理発表で黙ったままでは、他人の推理に乗っかっただけで、そもそも自分がどこまで理解していたのか、もっと考えないといけない部分はどこかなどが曖昧になったままゲームが終わり、反省することができません。

 また、これが一番の理由ですが、真相が分からない中で、不安ながらも発表した自分の推理が見事に真相を言い当ててていた時の気持ちよさは、マーダーミステリーをプレイする上で気持ち良い瞬間の1つであり、これを味わう機会を自分から捨てるというのは非常にもったいないです。

 また、思いっきり自信満々に推理発表を行った上で、全然真相が違っていた場合も、それはそれで楽しい思い出になることが多いです。

 マーダーミステリーは誰もが主役になれる遊びであり、推理発表はまさにあなたが主役になる時間です。ぜひ、自分の意見を堂々と主張して、当たるか外れるか分からないドキドキの中で、勝利を勝ち取ってみてください!
 


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