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ブルージェイズの22年へ向けたオフシーズン展望


どうも、ヤスです。ワールドシリーズが終わり、既にMLBのオフシーズンが始まっています。今年のオフは現行の労使協定が12/1に失効することもあり、激動のオフとなりそうな様相。MLB側と選手会側の協議がまとまらない場合、ロックアウトに突入する可能性が囁かれています。ロックアウトとはオーナー側が球団の施設全てから選手を締め出す行為のことで、こうなるとMLBにおける全てのトランザクションが凍結されます。数ヶ月に渡りMLBの市場全てが動かない事態となりかねないのです。


という今オフにおける状況を説明したところで、今回はブルージェイズがオフシーズンにどう動くかについて、チームの状況を踏まえて触れていきます。早速行ってみましょう。


ブルージェイズが使えるお金はどれくらい?



まず初めに、チームの財政状態について。MLBにおいてチームの総年俸をペイロールと呼称しますが、来年22年のすでにサラリー(年俸)の支払額が確定している選手は4人います。サラリー額についてはBaseball Referenceを参照し、話を進めましょう。

ジョージ・スプリンガー(OF) 2967万ドル

ヒョンジン・リュ(LHP) 2000万ドル

ランダル・グリチック(OF) 1033万ドル

ルルデス・グリエル・ジュニア(OF) 493万ドル

4人を合計すると6493万ドルになります。

続いて、年俸調停を迎える選手たちについて。年俸調停のシステムについてはここで詳しく説明するのは省きますが、彼らはまだ来年のサラリー額が決まっていません。そこで、MLB Trade Rumorsを参照し、想定額を出してみましょう。このサイトはMLBファンであればお馴染みなのですが、調停を迎える選手のサラリー想定額を、独自のアルゴリズムで算出しているのです。それによると、サラリーは以下の通りになります。


ホセ・ベリオス(RHP) 1090万ドル

テオスカー・ヘルナンデス(OF) 1000万ドル

ブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(1B) 790万ドル

ロス・ストリップリング(RHP) 440万ドル

キャバン・ビジオ(3B・OF) 170万ドル

ダニー・ジャンセン(C) 150万ドル

アダム・シンバー(RHP) 150万ドル

ティム・メイザ(LHP) 120万ドル

ジェイコブ・バーンズ(RHP) 120万ドル

トレント・ソーントン(RHP) 90万ドル

ライアン・ボラッキ(LHP) 80万ドル

以上11人の総定額を合わせると、4200万ドルです。これに先述したサラリー確定ぶんを合計すると、22年のブルージェイズにおけるペイロールは1億693万ドルと想定されます。ここからが自由に使えるお金の話です。ちなみに21年のブルージェイズにおけるペイロールは、親会社であるロジャーズコミュニケーションが運営するメディア、Sportsnetによると1億5400万ドルでした。この記事では球団社長であるマーク・シャパイロが今季からさらにペイロールを増やせることを示唆しています。


近年で最もペイロールが高額だったのは、2017–2018年の1億6000万ドル台でした。このレベルまで増やせるとしてあと1000万ドルと想定すると、ブルージェイズが自由に使えるお金は1億6400万ドルほどまでと推定されます。約6000万ドルがフリーな資金ですね。と、ここまでがブルージェイズの財政状態になります。この状況を踏まえて、ブルージェイズがこのオフにどう補強に動くのか推定していきましょう。ペイロールに関しては推定でしかないため、ざっくりこれくらい補強に使えるお金がありそうなんだな、とチームの状況を理解していただけたらと思います。


ブルージェイズの補強ポイントはどこ?

結論から言うと、スターター、IF(2Bと3B)、ブルペンです。スターターはサイヤング賞候補のロビー・レイ、スティーブン・マッツがFAになり、枠が2つ開きます。


2Bは今年MVP候補にもなったマーカス・セミエンがFA。3Bもビジオがレギュラーでしたが怪我と打撃不振に苦しみ、途中からサンティアゴ・エスピナルがレギュラーになるなど、固定できなかったポジションでした。

ブルペンも1〜2人は加えたいところです。クローザーのジョーダン・ロマノ、メイザ、シンバー、トレバー・リチャーズ、ジュリアン・メリーウェザーとシーズン後半にはある程度形を作れましたが、さらに頼れるリリーバーが多いに越したことはありません。特に今年はクローザー予定だったカービー・イエーツが開幕前にTJを受け、デビッド・フェルプスが背中の怪我で5月にシーズン絶望、タイラー・チャットウッドは7/30にDFAされるなど、ブルペンの質量ともに苦しんだシーズンでした。


FA市場で狙うのは?


まず最初にこの2人に触れないわけには行かないでしょう。

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レイとセミエンに関しては、ブルージェイズも再契約には前向きな模様。ただ、おそらく両者ともと再契約するのは難しいでしょう。今季の大活躍で市場でも引き合いが多く、高額契約が予想されます。2人ともと再契約すると合わせて年単位4000万ドル以上は確実にかかるので、他に回せる資金がかなり目減してしまうからです。


ということを踏まえると、どっちを優先すべきかとなりますがセミエンを優先すべきでしょう。2Bで45HRというパワーは代替が利かず、守備、走塁も高レベル。さらにビシェットやエスピナルといった若手選手のメンターとなる存在など、いろんな意味で替えが利きません。

一方のレイですが、今年はFA市場のスターターが非常に豊作という点があります。マックス・シャーザー、マーカス・ストローマン、ケビン・ゴーズマン、カルロス・ロドン、クレイトン・カーショウ、ジャスティン・バーランダー、ザック・グレインキーなど、ビッグネームが並んでいるのです。レイはこの中でも最上位クラスのスターターですが、彼に拘らずとも選択肢は多く取れます。


スティーブン・マッツについてですが、ブルージェイズは彼との再契約にかなり前向きなようです。GMのロス・アトキンスが明かしています。

スティーブンが大好きだ。彼が成した1年と、彼の労働倫理の大ファンなんだよ。彼はここ(ブルージェイズ)での生活を楽しんでいたと思うし、トロント、バッファロー、ダニーデンでの生活も大事にしていた。3つのスタジアム、アリーグ東で彼がやったことを考えると、驚くべきことだ。彼はしっかりとアジャストしていて、それが功を奏した。私たちは間違いなく彼と関わっていくよ。


既に複数年契約をオファーしているとの話もあります。


彼との再契約の優先度が高いのは間違いないようですね。


それでスターターの補強候補ですが、ケビン・ゴーズマンを挙げます。

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彼には20年オフにもブルージェイズが複数年契約を提示していたとの情報がありました。また、彼はメジャーデビュー登板を果たした地であるトロントについて、好意的なコメントもしています。

トロントは大好きな街のひとつなんだ。いつでもここでプレーするのが好き。デビューしたのがトロントだったから、僕にとって特別な場所なんだよ。

ゴーズマンは今年サイヤング級の成績を残したため、高騰が予想されますがブルージェイズが彼に関心を寄せる可能性は高いと思われます。


2Bはセミエンが移籍してしまった場合になりますが、エドゥアルド・エスコバーが無難なところでしょうか。今年は3Bの方が守ったイニングは多いですが、2Bも守っています。

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さらに彼はスイッチヒッターなので、あまりに右打者偏重すぎるブルージェイズへのフィット感はいいと思います。



3Bに関してですが、市場に大物候補がひとりいます。ドジャースからFAになったコリー・シーガーです。

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彼の現在のポジションはSSですが、年齢を重ねるにつれて3Bに移ることを考える必要があるでしょう。ブルージェイズにはSSにビシェットがいるため、最初から3Bとしての想定を受け入れるなら、可能性はあるかもしれません。


ただ、実力は間違いないものの怪我が多く出場が計算できないこと、カルロス・コレアに次ぐ今オフFAのNo.2選手と位置付けられていることから超高額契約が予想されるため、やはり現実味は薄いように思えます。現時点では夢物語かもしれません。



シーガーつながりというわけではありませんが、3Bならコリーの兄であるカイル・シーガーもアリです。

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左打者という点もポイントです。契約するなら1〜2年契約でプロスペクトの昇格を待つためのつなぎのような動きにはなりますが、個人的には今勝ちたいチームの動きとして少し悠長かとは思ってしまいます。


リリーバーですが、トップリリーバーのケンリー・ジャンセンライセル・イグレシアスが移籍候補として予想されています。

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イグレシアスはエンジェルスがクオリファイングオファーを提示しているため、拒否してFAになった彼と契約した際には、来年のドラフト指名権を失ってしまいます。個人的にはリリーバーへ長期契約を与えるのはリスキーだと考えており、さらにドラフト指名権のことを考えると、契約は避けたいですね。



その点、その縛りがないジャンセンであれば年数、金額も抑えられ、長年クローザーとして活躍してきた実績もあるため、リスクは小さめかと思います。



三振を奪えるリリーバーがあともうひとり、終盤スコアが競っている場面で起用できるような選手が欲しいと思った場面が後半戦で何度もあったので、イグレシアス、ジャンセンを移籍候補として挙げられること自体は納得です。

トレード市場ではどうなる?


その前に、ブルージェイズのC事情について話しておく必要があります。現在ブルージェイズは40人ロスターにCが4人います。ジャンセンアレハンドロ・カークリース・マグワイア、トッププロスペクトのGabriel Morenoです。このうちマグワイアはトレード価値が低く、次代のスターC候補であるMorenoは既に3Aまで到達しており、来季のメジャーデビューはほぼ確実。彼を放出不可と考えるとジャンセン、カークがトレード候補となりますが、守備に優れ経験も積んできたジャンセンは、Morenoがメジャーに到達してきたときのバランスを考えると置いておきたい存在です。

というわけで、トレード候補として最も価値が高いのはカークとなります。バツグンの打撃センスに加えて来季24歳と若く年俸調停前のため、ペイロールを低く抑えたいチームにとっても垂涎の的でしょう。さらにこのオフはC市場が不作で、トップフリーエージェントでもマニー・ピーニャ(ブルワーズ)、ヤン・ゴームズ(アスレチックス)という状態です。ブルージェイズが非常に価値が高いカークをエサにトレードを仕掛けるには追い風が吹いていると言えます。



以上のことを踏まえてトレード候補を挙げると、まずスターターではシンシナティ・レッズのルイス・カスティーヨ、アスレチックスのショーン・マナエアフランキー・モンタスサンディ・アルカンタラ(彼を出す可能性はかなり低いと思いますが)、パブロ・ロペスといったマーリンズの若手スターターたちでしょうか。いずれもトレードの可能性があります。

23年までコントロール可能なカスティーヨのトレードについて耳を傾けるとのこと。

While Forst understandably sidestepped a definitive declaration on the team’s payroll direction, USA Today’s Bob Nightengale writes that a pair of MLB executives told him Oakland is expected to slash payroll to as little as $50MM.

アスレチックスはペイロールを5000万ドルほどに減らす(つまり高額な選手をトレードする)可能性に触れています。

マーリンズはコントロール下にある若手スターターが多いため、中軸を打てる打者とならトレードの可能性があるとのこと。打力があり、さらにマーリンズにいない正レギュラー候補Cとなるであろうカークであればニーズに合うのではないでしょうか。


この中でブルージェイズが獲りに行くなら、ルイス・カスティーヨでしょうか。23年までコントロール可能でエース級の能力を持つ彼は、ブルージェイズ側のニーズにはマッチします。ただ、レッズは今年タイラー・スティーブンソンが台頭してきたため、Cのニーズはさほど高くないかもしれません。マーリンズの若手スターターたちも非常に魅力的です。


そしてブルージェイズがトレード市場で狙うかもしれない超大物候補がひとりいます。それは3Bのスーパースター、ホセ・ラミレスです。

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ガーディアンズがスーパースターのラミレスをトレード? と思った方もいるかと思います。しかし、彼がトレードされる可能性は決して低くないのです。球団社長のクリス・アントネッティが言っています。


我々はどんなドアも閉じることはできないと思う。

ラミレスは22年に1200万ドル、23年はオプションで1400万ドルと彼クラスのスーパースターとしては非常に安価です。しかしガーディアンズは今年1月にチームのスターだったフランシスコ・リンドーアをトレードした過去があり、ラミレスが23年オフにFAとなった際、予想される超高額契約を結べるのかは疑問符がつきます。とすれば、出て行かれるよりトレードで最大限の利益を得られるこのオフ、彼をトレードしようという動きを起こしても不思議ではありません。


ただ当然ながらアントネッティは彼を高く評価していることも言っており、交渉は非常にタフになりそうです。今年の夏にはブルージェイズがラミレス獲りに動いていたとの情報がありましたが、その時は相手方の要求が高すぎて、トレード成立には至らなかったようです。

In fact, one source told Inside the Mets that the Blue Jays rejected a deadline offer from Cleveland that would've sent Ramírez to Toronto in exchange for young catcher Alejandro Kirk, plus an assortment of top prospects and major league players.

夏の時点ではカーク+トッププロスペクト+メジャーの選手複数人を要求されたとのこと。これを踏まえてブルージェイズが出せるチップとしてカーク、打撃力があり、安く使えて23年までコントロール可なルルデス・グリエルを軸にしたトレード案として、トッププロスペクトのJordan Groshans、あともうひとりくらいをつければ成立する可能性は決してゼロではないと言えるのではないでしょうか。コントロール期間がまる2年となったことで、夏よりは多少安価になるかもしれません。


アトキンスは打線のバランスを整えたいということを語っており、アベレージ、パワー、選球眼、さらにブルージェイズに足りない左打者という点で、スイッチヒッターのラミレスはこれ以上ないほどフィットします。ガーディアンズ側としても、安く使えるカークとルルデスを手に入れられるという点で、お互いにニーズが合うように思えます。彼がブルージェイズでなくとも、オフに実際トレードされるのか、注目です。


さて、今回はここまでとしたいと思います。労使協定の関係で色々大きな動きが起きそうな今年のMLBにおけるオフシーズン。ブルージェイズが実際どう動くか、私と一緒に注目していただけたら幸いです。