うしろを向くな!先を見ろ!

海北友松という方をご存知ですか?
京都最古の禅寺・建仁寺の方丈の襖絵『雲龍図』と言えば、
多くの方が思い当たる有名な水墨画です。
建仁寺の方丈再建にあたって、
障壁画などの装飾一切を任されたのが海北友松です。
その時、友松の年齢は67歳。
当時の平均寿命を大きく超えてから、
一世一代の事業に着手する事になった形です。

『雲燕龍変』という言葉は、雲が湧き起こり、
龍が勢いを増して、変貌自在に活動する様を表すものです。
『雲龍図』は、まさにそのような様を表現したもので
実に力強く描かれています。
友松は、戦国時代の武将・浅井長政の家臣、海北綱親の五男として生まれています。
父親の戦死を機に、東福寺に入ったそうです。
そこで絵を学んだと言われていますが、
画業の華が開いたのは、60歳を過ぎてからの事です。
一般的な考えでは、『雲龍図』ほどの作品を描けば
これを生涯最高傑作として、その後は余生を過ごすように
画業の勢いに一段落つくのではないでしょうか?
しかし、友松は違いました。
友松は、武家への未練を断ち切れずに過ごしていたと言われています。
それが、60歳を過ぎてから『絵師』として生きる覚悟を決め、
次々と傑作を生み出しています。

人は、年を重ねるとうしろを見がちになると思います。
過ぎ去った過去の栄光に囚われて、
後悔や当時の成功に浸ってしまうばかりになるのではないでしょうか?
しかし、友松は『うしろを見るな!先を見ろ!』と言わんばかりに
70歳、80歳を過ぎても活動を止める事はありませんでした。

私はまだ56歳。
振り返るよりも先を見る。
一歩一歩、足を踏み出す。
昨日に囚われるよりも、明日に希望を見出す。
海北友松に及ぶはずもありませんが、
市井の庶民にもそんな心意気を持ち
遅咲きを目指す中年がいても良いかな?
と思っています。

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