【向日葵の咲かない夏】構成力がすごい!ただ内容は....【小説感想】
■評価
3.5/5.0
全体の構成は面白かったが、内容の描写や扱うテーマが気持ち悪く、読後感がよくない...。小説全体の違和感を最後一気に回収する様は気持ちいい。
サイコパスホラーミステリー小説
以下ネタバレ
帯の「すべての違和感が論理的」の通り、途中途中で出てくる違和感がすべて最後に回収される。母はなぜ妹にだけ優しいのか?ミカは3歳にしては聡明すぎないか?S君はなぜ蜘蛛に生まれ変わったのか?などなど...。話の中心の謎は「S君の死の真相は?遺体は誰が持ち去った?」だが、それ以外の箇所で違和感を出し、話の全体像を仄めかしている。
S君が蘇るところは「そう言うのがアリなファンタジー世界なのか」と納得してしまったが、そんなことはなかった。
信頼できない語り手、ミチオの目線で話が進む。登場人物の半数がミチオのイマジナリーフレンドというのが話の核心。
しかし、キャラクターがやべやつすぎる。やべえやつアベンジャーズだこれ。
■一行要約
表:主人公ミチオがS君の自殺の真相を探究する話
裏:信頼できない語り手による叙述トリック
■話の核心
信頼できない語り手。読者の頭の中の世界を最後にひっくり返す手法。事件の真相は核ではなく、世界がひっくり返されるのを楽しむ系の小説。
似ているところでは歌野昌午「葉桜の季節に君を想うということ」でしょうか...。語り手や周辺の人が実は老人でした!というのと似ている気はする。(読後感は葉桜の方が圧倒的にスッキリするが...)
■作中の違和感のメモ
(0.p5,6)
・妹は「あの事件」の時3歳、4歳で死んでしまっている
・主人公はその遺骨の一部を大切に持っている
→妹が人間であるというミスリードをしつつ、主人公はトカゲの骨を持っていると言う真実を裏に仕込んでいる。
(1.p7〜p55)
・窓を横切ったS君
・吠えるダイキチ
・S君の首吊りを発見
・S君の死体が消えてしまう
・兄にだけあたりが強い母
・動物殺し事件、足が折られ口に石鹸が含まれている
(2.p56〜p92)
・トコ婆さんの能力、「臭い」の発言
・部屋に来たS君
・S君の作文、希望を食べる王様
・泰三が見たS君
・泰三が警察に話さなかったこと
(3.p93〜)
・蜘蛛になったSくん
(4.p138〜)
・泰三を襲うダイキチ
(5.p172〜)岩村宅潜入、泰造が警察へ
・消えた名札
・風で聞こえなかったS君の言葉
(6.〜p211)
・トコ婆さん「ダイキチ、英語」
●六村かおる=岩村先生
・S君とミカのヒソヒソ話
(7.〜p274)
・ダイキチへの腐った肉を取る練習
・女郎蜘蛛をS君にぶつけるミチオ
・ミカに手を出すミチオ
・泰造 1年前に目撃した事故
(8.p324〜)
・泰三の過去
(9.p351〜)
●犬猫の足の犯人は泰三
●ミカ、トコ婆さんはミチオの想像