（勝手に）恐妻家劇場

俺は極度に妻を恐れている

いつからかわからない

”母になった時に女は強くなる”

のであればおそらくそれ以降だ

紀元前が生まれる前だとすれば

今は西暦１２年だ

恐妻課勤務１２年の係長だ

恐妻課

今年の流行語はこれだ

気をつけろ

鼻唄を過信するなよ

嫁の機嫌察知センサーは常に最新式にしておけ

特に音に敏感になれ

扉の閉め具合の音の違いにメモリーを割け

ぶつぶつと台所でつぶやいているとき

それは俺の何かに腹が立っている時のサインだ

なんだ

弁当箱を片付け忘れたか

洗い物の並べ方がまずかったか

乾いた洗い物の上に濡れた洗い物を重ねてしまったか

体調が悪いか

炊飯器の保温スイッチを切り忘れたか

いややはり洗い物関係か

食器洗うスポンジを絞り忘れたか

なんだ

ナンダ

何んだ

わからないから恐る恐る聞いてみた

「どうしたの？」

「別に。」

言ってくれよ！

わからんだろうが！

お願いだから言ってくださいよ！

わからないじゃないですか！

直しますから！

気をつけますから！

額に油性ペンで肉って書いていただいてかまいませんから！

そんな日の夜に

わざわざ部屋まできて

おやすみ前にハグされにくるんだよ

俺はまた聞いたんだ

「どうしたの？」

「別に。。。」

やられたぜ

別にを使い分けてやがる

読んでた本の内容はまるっと飛んじまったぜ

記憶と時間を可愛いプッシーキャットにまんまと盗まれちまったみたいだ

「そう。おやすみ。また明日ね。」

そういいながら僕は立ち上がり頭を撫でてきゅっと抱きしめてあげた

その先は想像にお任せするぜ

ここまでお読みいただきありがとうございました！
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