21/01/26 【感想】know

野崎まど『know』を読みました。

ミステリに出てくる美少女の話を書いたあと無性に読み返したくなって野崎まどのデビュー作『[映]アムリタ』を読み返したんですが、やっぱりイイなあと思うと同時に他の作品も読みたくなって。
実は以前、アムリタに続けてメディアワークス文庫で出していた3作品を立て続けに読んだことがあったんですが、この3作ともさほど刺さらなかったのでそこでご縁が切れちゃってたんですよね。

なので今回はちょっとジャンプして、氏がハヤカワ文庫で書いた『know』を読みました。なんかちゃんとハヤカワっぽい文体になってる!ってのが第一印象。デビュー作の頃からライトではありながらも臭みのない文を書いていた人でしたが、器用なんですねえ。これは僕がSFをあまり読まないからかもしれないですが、話の進め方とかに同じハヤカワ文庫の伊藤計劃みを感じたかも。

感想ですが、おもしろかったです!
個人的に結構感想が難しい作品で、実は読んでから数日空いちゃってるんですけど、面白かったのは確か。ハッタリのきかせかたがうまい。
もっともらしい技術の発展や未来像を描く一方で感覚干渉ハッキングバトルでは外連味に振り切っていたり、ギアの入れ方が巧みでした。ぐいぐい読ませて失速しないまま最後まで走り抜けた小説だったと思います。

以前「SFは超技術や超自然そのものを描くのでなく、それによって変化する社会を描くもの」という主旨の言説を読んだことがあり、僕自身それをやっている類のSFが好きなんですが、この作品では「脳内に埋め込んだ装置によって高速で情報の検索と参照ができるようになり、『知っている』ことと『調べられる』ことの境界は限りなく曖昧になった」という設定が特に良かったですね。これに関しては今の社会でも結構リアルですもんね。
この概念によって我々がいまいるこの世界と作中の未来世界に導線を一本引けた時点でこの小説は「勝ち」だったと思います。