21/03/24 【感想】大人だって読みたい!少女小説ガイド

いわゆる「読書ガイド」的な書籍が好きで、見かけるとつい読んでしまいます。好きなジャンルがミステリなので今まで読んだガイドもミステリを扱ったものが多いのですが、これまでの印象は一言でいうと「玉石混淆」。
そんな中にあって今回読んだ『大人だって読みたい!少女小説ガイド』はこの手の読書ガイドに備わっていると嬉しい美徳をいくつも備えた、良質なガイドでした。

美徳1: 対象者におすすめの小説を紹介している

当り前じゃないかと思うじゃないですか。僕も当り前であってほしいと思うんですが、これをやっていないガイドのなんと多いことか。
このガイドは"対象者におすすめ"の小説を"紹介"しているという大きな美徳を備えているのです。

今回の本だと「大人」をターゲットに定めていたり、よくあるものとしては「入門者」をターゲットにしていたりするのですが、ここで素直にターゲットに合わせたチョイスをしていないガイドって多いんです。
本当に筆者がその本をターゲットに向いてると思ってるならともかく、ナメられたくないのかなんなのか定番のチョイスをわざと避けたりすることが多い。わざと外したチョイスを紹介して最後に「入門者には××をおすすめしたい」とか書いてたりする。じゃあ最初からそっちを選べよ!

そしてもうひとつ、「紹介」しているというのも大きな美徳です。ちゃんとあらすじを載せ、筆者の思う魅力や見所を書き、最後に現時点での展開やちょっとした補足を載せる。この基本ができているだけで良質なガイドです。
このあたりの情報を数行で終わらせるや「うんちく」という欄を設けて小説本編に関係ない情報ばかり載せてるガイドもあるので…。

美徳2: たくさん紹介されている
美徳3: 筆者がたくさん読んでいる

この本はとにかく紹介している量がすごい。紹介シリーズ数なんと約179。179冊じゃないんですよ、179シリーズ。巻数の多いジャンルらしく、紹介されているシリーズで単巻のものはあまりなく、多くが5巻以上、半数近くが二桁に乗っています。なので扱われている小説を実際に集めたら軽く冊数は四桁に届くでしょう。
更にすごいことに、筆者はちゃんと全部読んで紹介してるみたいなんですよね。それだけで説得力があります。

美徳4: 幅広い年代から紹介している

本書のカバー範囲はジャンルの興った1980年頃からはじまり、なんと2020年にスタートしたシリーズまで抑えています。古典ばかり紹介しているガイド本もある中で最新のトップランナーまで追っているのは本当にすごい。
3人のライターの方が書いているのですが、それぞれ生年が1962年・1979年・1989年と散らばっているのも守備範囲の広さに繋がっているのかもしれません。
電子書籍でしか出ていないタイトルまで抑えていたりして、ジャンルに対する熱意に頭が下がります。

*   *   *

本書は200近いシリーズを大まかにサブジャンルで分類して紹介しています。
1章から順に「妖」「宮廷」「仕事」「謎解き」「SF」「青春」「恋愛」「歴史」「異世界」となっているのですが、まだ当該ジャンルの受容体がない方はいきなり頭から読むのではなく「青春」「恋愛」から読むことをおすすめします。このふたつは世界観の設定などが現実に近く、あらすじが読みやすいです。また一般小説に近い立ち位置のものが多く興味も持ちやすかったです。

[ファンタジー]とか[友情]とか[逆ハーレム]とか[シリアス]とか成分表をキーワードに抽出してタグを付けてくれていたりと大変配慮の行き届いたガイドなのですが、ひとつだけ要望があるとするなら見出しのレイアウトは逆が良かったかな。
何を言っているかというと、普通こういうガイドって冒頭に一番大きい文字で紹介する本のタイトルと作者名が載って、その次の行とかにその本をあらわすキャッチコピーが次に目立つ形で載っていたりするんですが、本書では最初にキャッチコピーが一番でかく載ってるんですよ。この形式は最後まで慣れませんでした。

↑出版社の作品ページ。

↑Amazonでは実際の作品紹介ページ例が見られます。