24/01/03 個人的性癖オブイヤー2023

僕が2023年に摂取したコンテンツのなかで偏愛するものを書きます!

とある配信者の方が1年間の振り返りの中で「今年自分の性癖に刺さったキャラ」をTier分けしていたという話を間接的に知り「その手があったか!」となり、急遽やりたくなりました。(ただしこの記事はキャラに限りません)

なお今は2024年ですが、記事中で「今年」とある場合、それは2023年を指します。


セヴン#ス (アイドルマスターシャイニーカラーズ)

今年公開されたSHHisシーズのイベントストーリーです。
僕は毎年、その年に公開されたイベントストーリーに自分の中でランキングをつけているのですが、今年の1位はこの「セヴン#ス」…ではなく、「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」でした。「セヴン#ス」は2位。
じゃあなぜ「セヴン#ス」をここで言及するかというと、もちろん性癖に刺さったからです。

SHHisのストーリーってもうとにかくずっと空回りしてる。
歯車は必死に回っているのだけど、そもそも歯車同士が噛み合っていないような感じ。そしてイベントのたびに歯車同士が近寄っていくところを見せて「きっと噛み合っていくんだな…」という雰囲気だけ出して次のイベントでは普通に噛み合ってない。
僕は誰に見せることなく手元でシャニマスのストーリーの感想を記録しているのですが、「セヴン#ス」の一個前に当たる「モノラル・ダイアローグス」では「良いのはもちろん良いんだけど、なんか毎回同じ味のもの食わされてる気がするな…。」と書いていました。

じゃあ果たして「セヴン#ス」はというと…空回りします。もう「セヴン#ス」は空回りの話と言ってしまってもいい。
ただ今回は、登場人物たちがみんなとっくに壊れてしまったり失われてしまったりしたものを元に戻そうとして空回りしているんだということが明確になる話なんです。
今までは空回りのための空回りをしているように見えていたのが、空回りに具体性が出たというか。既に失われたものを元に戻そうと空回りし続けることの底知れないやるせなさ、虚しさ。これが良かったですね!

それにしても、2023年はSHHisの年でしたね。同年ふたつめのSHHisのイベントストーリー「not enough」も素晴らしかった。

森博嗣は『すべてがFになる』にはじまるS&Mシリーズは「犀川の喪失と萌絵の解放」というテーマを下敷きにしていると語っていて、最終巻『有限と微小のパン』では遂にそこへ至ります。そして「解放も喪失も同じものだが、受手によって印象が違うことだろう」と書いていました。今年のSHHisを見ているとそれを思い出します。美琴の喪失とにちかの解放を描くことで、SHHisはひとつの最終巻に至ったのかもしれません。

おそらく叶わないであろう望みであるとは自分でわかっているのですが、SHHisの物語はnot enoughで終わってほしい。「これからも彼女たちの人生は続いていくが、この物語はこれでおしまい」であってほしい。
というわけで次回からは森博嗣のVシリーズに相当するやつをお願いします!


不知火カヤ (ブルーアーカイブ)

2023年のブルアカが生んだアイドルのひとり、超人カヤ。メインストーリー・カルバノグの兎編2章には大いに楽しませてもらいました。権謀術数をめぐらした暗躍からクーデターを成功させての権力掌握、そしてその絶頂からの転落と情けない命乞いまで序盤・中盤・終盤と隙のないブルアカらしい魅力にあふれたキャラクターなのですが、個人的性癖オブザイヤー選出の決め手となったのは連邦生徒会長への執着です。

この不知火カヤ、ゲーム開始時点で既に失踪している連邦生徒会長という存在にかなり大きな感情を持っています。

考えてみると連邦生徒会長はSRT特殊学園を作ったりエデン条約を進めようとしていたり、アロナは最初は先生にサンクトゥムタワーの全行政権持たせようとしてたり、分散自治を志向する先生とは政治思想が真逆なんじゃないかという気がします。
そうして考えると連邦生徒会長の思想を最も受け継いでいるのはカヤです。彼女から見るとリンは連邦生徒会長代行というポジションでありながらその方針を継承しないように見え、もどかしかったのかもしれません。

上の項でも書きましたが、僕はこういう「物語開始時点でもういない人のことを引きずって、不幸せになる方へ自分で舵を切ってしまうキャラ」に弱いです。

ナギサなんかもそうですが、「政治」をやろうとする生徒はブルアカのストーリー(というか先生)の得意技である「ジャンルを『青春学園モノ』に上書きする」という手筋にめっぽう弱いですね。でもこういう生徒、好きなんだよなあ。


橘ありす (TVアニメ版アイドルマスター シンデレラガールズ U149)

U149の原作はマンガなのですが、アニメ化ということでメディアが変わるにあたって橘ありすが視点人物として固定されることになりました。
マンガってめちゃくちゃ視点やモノローグの融通がきくメディアで、話の中で様々なキャラクターの間で視点が次々入れ替わってモノローグを言っても違和感なく読めるんですよね。ただこれはマンガだけの強みで、アニメではそうでもいかなかったりする。というわけでありすが「視点人物」の役割を負うことになったのだと思うのですが、これが大変良かった!

U149アニメのありすって、進行に対して非常に献身的なんですよ。作品の進行に対する貢献って僕のキャラの好き嫌いに影響の大きい要素なんだということに気づきました。とにかく毎週僕の中でありすの好感度が上がるアニメでした。
視点人物としてありすは物語に巻き込まれ、振り回され、リアクションし、そして物語を潤滑に前へ進める言動をとるのですが、これってそのまま「ヒロイン力」でもあるんですよね。

そういえば昔二次創作でありすを主人公にしたときもめちゃくちゃ書きやすくて好みの作品になったなあ…実はシンデレラガールズ屈指の主人公力、ヒロイン力を持つアイドルなのかもしれません。


志岐間春恵 (パラノマサイト FILE 23 本所七不思議)

パラノマサイトは昭和後期の日本、墨田区を舞台にしたホラー・ミステリーアドベンチャーゲームです。実在する怪談《本所七不思議》に基づく呪具によって呪いの力を授かった登場人物たちが《蘇りの秘術》を求めて呪詛バトルを行うというものなのですが、やがて物語はその登場人物たちの裏でつながっている事件の真相を追うこと、そして呪いの真相を追うことにも繋がっていきます。

この志岐間春恵もまた本作の呪詛スタンドバトルに参加するひとりなのですが、職業は主婦です。名家の娘でいわゆるお嬢様育ちの彼女ですが、事件で亡くした息子を蘇らせるために《蘇りの秘術》を求め、呪詛バトルに身を投じます。作中でも作外でも「マダム」と呼ばれています。

この人の何がいいって、殺意。誰よりも目が据わっている。息子を失ったときから人生が空っぽになってしまったかのように、一線を越えて人間性を捨て去ることを一切厭わない、漆黒の意志を持っています。グラフィックがまた良いんですよね、上品で落ち着いた佇まいでありながら光のない目。夜中に明かりもひとけもない堤防で深い川を見たときに感じる「もし落ちたら助からないんだろうな」というアレにも似た雰囲気。

上述のようにストーリーは「真相を追う」方にも向かっていき、呪主(スタンド使い)同士協力する展開にもなるのですが、このマダムの何がすごいって、最後まで選択肢に「殺すこと」があり続ける。
善悪も、物語すらも超えたところで唯一無二の昏い輝きを放つ、本作随一のキレたキャラクターです。


逆転サーカス (逆転裁判2)

底しれないやるせなさ
それがこのエピソードの最大の魅力です。

「逆転裁判2」全4章中の第3章にあたる本エピソードは、タイトルの通りサーカスが舞台となります。
サーカス団の団長が殺害され、団の看板マジシャンが容疑者として逮捕されます。主人公は彼の弁護人として真実を追うことになります。

まず前提として、団員たちから慕われている団長を失った時点でサーカス団としては大幅な痛手で、しかも関係者である団員たちの誰が真犯人だったとしてもサーカス団は大打撃を受けることが確定しています。
それでありながら、登場する団員たちは皆サーカス団以外では生きていけないような人ばかりなのです。

逆転裁判の犯人は根っからの悪党であることが多く、逆転裁判2もその例外ではないのですが、このエピソードに限っては芯から悪人といえるような人はいません。悪人のいない、傷つく人しかいない事件の真相を、それでも露わにしなくてはならないのです。

きらびやかなサーカスの裏にある疲れ傷ついた顔、条理と不条理の汽水域で生きる人々に入る捜査の手、そして最後に辿り着く過去と現在それぞれの事件における真相の救われなさ。とにかくこのエピソードは「やるせない」。


荻野目苹果 (輪るピングドラム)

ボブカットで! だわ口調で! 顔芸が面白くて! 片思いする乙女で! 暴力ヒロインで! 奇行を連発する変人!! …という僕の好きな要素の詰め合わせのようなキャラなのですが、それに加えてなんとこの子、「物語開始時点でもういない人のことを引きずっていて破滅的な行動を取るキャラ」なのです。数え役満。

自分でも同じようなストーリーやキャラばっかり刺さってることに気付かされてちょっと恥ずかしいくらいなのですが、でも性癖ってそういうものですよねぇ!?
世には数多の作品がありますが受け止める側は僕ひとりなので、同じところに刺さるのは仕方ない。穴はひとつしかないから。


アン&リコ (アニメ ポケットモンスター リコとロイの旅立ち)

サトシの卒業から全く新しいシーズンとしてはじまった新「アニポケ」、第1話は新主人公のリコがセキエイ学園に入学するところから始まります。故郷を離れてセキエイ学園に入寮したリコ、人見知りでまだポケモンも持っていなかった彼女を迎えたのは外向的な少女・アンでした。八重歯がチャーミング。

リコが「豪快で、今まで会ったことのないタイプ」と評するアンはまさに正反対の性格。ルームメイトになった二人の生活が幕を開けるのでした。

百合だろうがっ…!
百合じゃねえのかよっ…!

失礼、百合厨のカイジになってしまいました。(存在しないものになるな)

見てない人には信じられないでしょうけど…アン、ほとんど出ないんですよ! なぜなら1話ラストで早くもリコが学園を離れて冒険の旅に出てしまうから…。どうして『30分』だけなのよォオオオ~~ッ!! 失礼、百合厨の山岸由花子になってしまいました。

閑話休題、リコは上の橘ありすと同じく「理知的だが内向的で、モノローグが多くて、物語の中で成長していく視点人物」です。これまた非常に魅力的な主人公で、彼女の魅力で僕は久しく見ていなかったアニポケをワンシーズン一気見してしまいました。


中野二乃 (五等分の花嫁)

中野二乃だけは知っていました。

2023年冬にもなって今更「五等分の花嫁」をちゃんと読むにあたって、僕がストーリー内容について持っていた知識の話です。「残念だったわね」というあのあまりにも有名なシーン。
読んでいない僕はあのセリフだけは知っていて、しかもそれが大好きだったのです。あのシーンは様々な作品の様々なキャラクターでパロディが描かれていますが、当然だと思います。あまねくラブコメで誰かしらのキャラクターがあのセリフを潜在的に内包している。ただ五等分の花嫁がそれを完全な状態で発掘したのです。リンゴが落ちることは誰もが知っていても万有引力の法則を発見することは特別であるように、あまねくラブコメで働いていた力学を紙面に描きだした「五等分の花嫁」のあのシーンはラブコメの歴史に残るべきだと思います。

僕が「五等分の花嫁」をちゃんと読もうと思った理由の7割くらいはあの歴史的名作シーンをちゃんと知るためでした。

ただ残念ながら、その有名さゆえに、中野二乃のその後の展開についてもある程度ネットで雰囲気を察してはいました。

それもあって二乃についてはあまり本気で肩入れせずに見ていたというか。実際に「あのシーン」の前フリに当たるシーンが出てきたときは「だ…駄目だ…まだ笑うな…こらえるんだ…し…しかし…」の表情になってました。

だったのですが。

第104話「最後の祭りが二乃の場合②」のラストの見開きを見て、思わず「頼む、勝ってくれ…」と声が漏れてしまいました。
魂が震えたシーンでした。カッコよすぎる。ここまで熱いものを見せてくれたのだから、この熱が物語に繋がってほしい。愚地克己がピクルにマッハ突きをしていたときにおぼえたのと同じ感情。

少女 中野二乃 高三の秋…………灼熱の時間とき――――