21/07/06 【感想】映画大好きポンポさん(劇場版)

劇場版「映画大好きポンポさん」を観ました。面白かったー!!

僕はホントに映画を見ない人で、なんとなく上映前に直近で自分が映画館で見た映画を思い返していたらここ10年間で5作品しか見ていないことに気づきました。(古い方から順に湊かなえの「告白」、劇場版「アイドルマスター」、実写版デビルマン同時鑑賞をやろうという悪魔の誘いを断って行った「美女と野獣」、地上波でもう一度見た「シンゴジラ」、千葉県で見た「翔んで埼玉」)

かように映画に興味のない僕ですが、最近仕事中にToDoリストとカレンダーを見ていると有休消化チャンスなことに気づき、最近周りで激賞されているポンポさんを見てみようと偶然にも思い立ったのでした。
そして見終わった今は、「もっと映画館来たいな」と思っています。それくらい人を映画好きにさせる映画でした。

『探偵映画』とか『[映]アムリタ』とか「アクタージュ」とか映画を作る側の話が出てくる作品が好きなんですけど、本作は作る側全開!でとても良かったです。撮影後の編集作業でこんなに盛り上がることある??

すっごく見やすくていっぱい楽しくて、物作りの浅瀬で足をチャプチャプしたことのある身としてココロが熱くなるものもあったこの映画ですが、特に好きなところが4点!

以下の話は一応物語の根幹や結末には触れていませんが本編中のシーンについて話す箇所があるのでご注意くださいね。特に4点目。映画観た後に読んだほうがいいかもよ。観よう?



人種の混在とリスペクト

ここでいう人種は血や種の話ではなく、characterの話。
作品中では才能あふれる映画プロデューサーや才能ある監督、才能ある俳優などが出てくるのですが、それらはみんな違う人種です。
カリスマ性あふれる映画プロデューサーのポンポさん、目が死んでてどもりがちで映画オタクなジーン、そして目の輝きが数段違う俳優たち、キャラクターだけ抜き出したら同じ場所で仕事をするどころかつるむことすらなさそうな違う人種の人達が協力してモノを作る。これがとてもいい!

作中で新人監督のジーンが新人女優のナタリーと励まし合うシーンがあるんですが、目が死んでて目の下にクマができてて撫で肩ヒョロヒョロなジーンと瞳がまんまるで大きくて脚の長いナタリーの対比がめちゃくちゃいいんですよ。無名とはいえスタアの卵なんだなって感じさせられる。この二人が同じ境遇で共に頑張ろうと誓うのがアツい。

そしてこの違う人種の人々が、お互いそれぞれの領分でプロフェッショナルだとリスペクトしあってるのがいいんですよね。
やっぱり俳優ってスゴいやとか、監督が撮りたいものを撮ってくれだとか、お互いの仕事に対して能力を認め合い信頼しあっている。この空気が非常に気持ちよくて、観ているだけで元気をもらえます。


メッセージがイイ!

映画大好きポンポさん(このタイトルからした想像は本編で裏切られるのですがそれはまた別の話)をはじめ、本作に登場するニャリウッドの人々は自身の映画論を熱く語るのですが、これがいちいちイイ!
この映画論がどれも端的で力強くて、自信があってときに傲慢だったりワガママだったり。大好きなものなんだから理想もワガママで当たり前なんですよね。この言葉がどれもいい。

製作論もいっぱい出てくるんですが、メッセージとして語られる精神論がただの気の持ちようだけでなく具体的なアクションに落ちているので、観ていてとても入ってきやすいです。フワッとしたイイコト言ってるふうのメッセージじゃなくて、手応えがある。


夢と狂気がいっぱい!

この映画、映画狂いがいっぱい出てきます。狂った人のメッセージって熱があっていいんですよ。
作中で「ようこそ、夢と狂気の世界へ!」って台詞があるんですが、本当に夢と狂気がいっぱい描かれています。そして夢と狂気が本質的には同じものであるということを取り繕おうとしていない。普通の「いい話」ならこうなるだろうなという甘い読みはどんどん狂気によって裏切られます。常識を捨てた先でやってる仕事なんだなとフルえるような心地で観ていました。
目が覚めてるうちは夢は見られない。夢を見ている人たちのニャリウッドがこの作品の大きな魅力です。

本作をはじめニャリウッドシリーズは映画関係者が一緒に食事しているシーンがよく出てくるのですが、これがとても好きです。
エラリー・クイーンの『ハートの4』でもハリウッドの人たちが一緒に朝ごはん食べてるシーンがめちゃくちゃ好きだったんですが、なんでしょうね、仲良さそうでとても嬉しくなるんですよね。


情報の出し方がうまい

この映画を見ていて最初に感じたのがこれでした。説明がうまい。
どんなコンテンツでも、見ていると「こっちはパッと見で既に察しているのにそれを改めて言葉で説明される」という時間があって微小な退屈が積もっていくことがあるものですが、この映画はこれが少なく快適でした。

そう!この映画、「待たされる時間」が非常に少ないんですよ。
導入から既にそれが顕著で、最初ポンポさんとジーンの登場があったあとナタリーが抜擢されて物語にナタリーという登場人物が顔と名前付きで登場する際に一気にバックグラウンドを差し込んで合流させる。しかもそれまでにナタリーのチェックポイントは既に置いてあるのでテキパキと導入できる。
それによって最初の「ジーンが最初のチャンスを掴むまでの物語」の間に「一方その頃」みたいなカットインが入ることがなく、待たされる時間がない。テンポがいい。それ以外でもこの映画は徹底的に「一方その頃」がほとんどなく観客が今まさに見たい目の前のものがちゃんと進行していた印象があります。
原作だと普通にナタリーも同時並行的に導入されていたようなので、この映画を90分にするにあたってよりスピーディーになったのでしょうね。

とにかくギュッと濃縮された、飽きない90分でした。
やっぱりこの映画のいいところは、時間が90分というところです!