21/08/14 【感想】ぎんしお少々(1巻)

「カメラを持って外に出るとね、景色がちょっと特別に見えるんだよ」

若鶏にこみ先生の4コマ漫画「ぎんしお少々」単行本1巻を読みました。
きらら4コマらしくエンジンがかかるのに時間がかかる感じでしたが、「いいエンジンを積んでそうな音」は確かにしていました。

現在4話まで無料公開されてるので興味のある人は読んでみて…と言いたいところなのですが!この漫画に関しては、「まだ変身を隠し持ってるぞ」と言いたい!!あっでも無料公開のリンクは張りますね。

言葉が足りずどこか誤解されがちなカメラ少女のもゆる。
物静かでコミュニケーションが不得手な美少女の銀(しろ)。
写真を撮りたい(お近づきになりたい)もゆると、拒む銀。
それとは対照的にお互いの姉同士は偶然の出会いから急速に仲良しに!?

上記の公式あらすじ通り、春にはじまるこの物語は就職して独立する姉からフィルムカメラを渡された新高校1年生もゆるが双子の姉妹と別れて高校に進学したに出会い、カメラを通じて不器用に仲を深めていく話…として始まる、のですが!

途中からそれとは別に、就職して独立したもゆるの姉、新社会人のまほろと家を出て越境し遠くの高校に通う銀の双子の姉の話が同時進行しはじめます。
妹たちが新しく入った高校で偶然出会うその頃、新天地で暮らしはじめたこのふたりも偶然アパートのお隣さんになっていたのだ!

僕はこっちのパートで一気にグッときました!
初めて実家を出て新天地で暮らしはじめるというシチュエーション、新社会人と新高校生という組み合わせも良い。そしてもゆるにフィルムカメラを託していったまほろは元々フィルムカメラ好きなひと。そのまほろの言葉が良いんですよ。

「何かに焦っているヒトに フィルムカメラは丁度良い」
「大変スローな趣味だから…」

そしてまほろにフィルムカメラという趣味の良さを教わり学んでいく鈴の感じ方もとても良い。
デジカメやスマホでの撮影と違って現像するまで撮った写真が見えないフィルムカメラ、という「時間差」の切り口で独特の味わいを表現しているのがこのパートの面白いところでした。

現像された写真を見た鈴が、

「わっ…ホントにあの日のだ! すごい……」

って言うんですよ。このセリフがとても印象的で。

その場で撮った写真を見られるカメラだと、撮られた風景もその日の記憶で撮った写真もその日の記憶になるわけじゃないですか。でもフィルムカメラは時間差があるから、風景だけが「その日の記憶」で写真は「今」のもの。
この感性を切り取ったことはこの漫画のクリティカルヒットだったと思います。

もっと読みたい漫画です。続刊が楽しみ!