22/09/27 【感想】皇帝フリードリッヒ二世の生涯

塩野七生『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』を読みました。

フリードリッヒ二世は中世、13世紀前半の神聖ローマ皇帝です。
歴史オンチなのでここは素直にWikipediaに頼らせていただきます。

西欧の封建社会に君臨した事実上最後の皇帝。学問と芸術を好み、時代に先駆けた近代的君主としての振る舞いから、スイスの歴史家ヤーコプ・ブルクハルトはフリードリヒ2世を「王座上の最初の近代人」と評した。中世で最も進歩的な君主と評価され、同時代に書かれた年代記では「世界の驚異」と称賛された。(中略)
一方、「早く生まれすぎた」彼は教皇庁や北イタリアの都市国家と対立し、ローマ教皇から2回の破門を受けた。治世をイタリア統一のために費やしたが、教皇庁と都市国家の抵抗によって悲願を達することなく没した。

Wikipedia「フリードリヒ2世 (神聖ローマ皇帝)」

本書はフリードリッヒ二世の生涯をもとにした作品で、彼の進歩的な改革と、ローマ法王との対立を描いています。

同じ筆者による『コンスタンティノープルの陥落』を読んだときも書いたんですが、僕は学生時代から歴史が本当に苦手で全部丸暗記ですませてきた人です。
実はそれを読むより前から塩野七生の『ローマ人の物語』シリーズをのんびりボチボチ読んでるんですが、歴史に対する集中力がなくてこうして寄り道しています。

『ローマ人の物語』の方は今ユリウス・カエサルの時代になるちょっと前くらいまで読んでいて、なので当然共和政ローマの時代。
そこから寄り道してこの皇帝フリードリッヒ二世の中世、神聖ローマ帝国の話を読むと…こう…あの紀元前2世紀の頃は理にかなっていたローマが教会のもとでこんなになってしまったのかと非常に残念な気持ちになります。

「進歩的な改革を行おうとするヒーローとそれに共鳴する者たち、それと対立して妨害する保守権力」というのは実に王道なテーマで、これこそまさにフリードリッヒ二世の「原作」としての面白さです。
その一方で史実であるがゆえにフリードリッヒ二世は志半ばで急な病に倒れてしまい、打ち切りのように彼の物語は終わってしまいます。その後の歴史絵巻に残されることとなる虚しい行く末を見ても「ここまで好条件でゲームスタートしてこんなに正解択を採っても届かないのか」とガックリきちゃいます。この虚しさもまたフリードリッヒ二世の物語の味なのかもしれません。

題材の面白さに加えてさすがの筆力もあって面白く読めたんですが、皇帝の側近についての記述がもうちょっと厚かったらもっと楽しめたかなー。
重鎮や青年期からのメンバーでもそれこそ「ナレ死」的に終わることが少なくなかったのですが、せっかく筆者の独自解釈を随所に盛り込むスタイルなんですしもっとドラマが感じられるような情報の出し方がほしかったです。
本書は塩野七生が70歳を超えてからの作品なんですが、この歳でこれだけの大作を取材し書き上がるんですからすごいですよね。若い頃だったらそれこそ同志達の話もどんどん膨らまそうとしたのかもしれませんが、そうしなかったのも枯淡の味なのかもしれません。

ちょうど今大河を見てるのもあって教会権力に立ち向かって中央集権国家を築こうとするフリードリッヒ二世が朝廷に対抗して幕府を築く源頼朝に重なって思えたんですが、書評がまさにこの二人を重ねる話で面白かったです。