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【函館のおっちゃん】

15年程前に函館に旅行に行った時の事。嫁と2人。昼間は【五稜郭】【函館山】など王道の観光地、【ラッキーピエロ】【はせがわストア】などのご当地グルメを巡る。
夜はやっぱ海鮮だろ、と言うことで近くの海鮮居酒屋へ。

『いらっしゃいっ!』

威勢の良いおっちゃんが出迎える。いかにも漁師、といった雰囲気だ。
『2人?じゃぁカウンターでいいかい?』
友達を案内するかのようなタメ口でカウンターに通される。
目の前には水槽があり、名物のイカが泳いでいる。どうやらコレを調理してくれるようだ。
オーダー取りに来るのもあのオッチャン。
『どっから来たの?』『イカ食べる?』
最初はそのフレンドリーな感じがよく感じたが、徐々にウザくなってきた。すげー話しかけてくる。漁師居酒屋的な感じだから有りなのかもしれないが、少しは2人の時間をくれよ。

そろそろ帰ろうか、お会計をしようとすると
『どこ泊まってるの?この後どこ行くの?』
近くのホテルでこの後は特に予定はない事を告げると
『飲みに行こうよ!俺ももうすぐ仕事終わるから』

『え?』

どうして知らないおっさんと飲みに行かないといけないの?2人で来てるんだから2人で過ごしたい。悪気はないと思うので丁寧にお断りする。

シツコイ

断っても、じゃぁアレは?とかこうだったらといろいろ提案してくる。行けない訳じゃなくて知らないおっさんと飲みたくないの。
ただ単にフレンドリー過ぎるだけなのかもしれないが、ちょっと気持ち悪い。連れて行かれて騙されるじゃないかという気さえしてきた。
頑張って断っていると

『明日何時に帰るの?明日ご飯食べようよ』

なぜそこまでして俺らを誘いたいの?そんなに仲良くなった訳でもない。もうよく分からない。
明日は昼には帰る予定だった。あまりにもシツコイので昼飯を一緒に食べる事で話はまとまった。昼であれば危ない事はまだないだろう。

なんだったんだ、あの人

嫁と逃げるように居酒屋を後にした。

翌日、待ち合わせ場所に行くとおっちゃんが待っていた。
『よし!行こう!』
どこに向かうかもわからずおっちゃんの車の後を追う。
しばらく車を走らせると着いたのはお寿司屋さん。もちろん回ってない寿司屋だ。昼飯とはいえ時間はまだ早い。まだ準備中の寿司屋のシャッターを上げるおっちゃん。

『ごめんね大将!』

そう告げると僕らを中へ通してくれた。
カウンターに座ると
『遠慮しないでいいからね』
といっても何を頼んでいいかわからない。マグロとかサーモンとかと後はおっちゃんに任せる事にした。
『大将今日は何入ってるの?』
オススメが出てくる。一貫ずつ目の前で握ってくれる。ネタはもちろん美味しい。が、状況があまり味を感じさせない。なぜ僕らは今寿司屋に??
そろそろ帰ろうか、嫁とアイコンタクトをとる。おっちゃんに帰る事を告げる。

『大将お会計!』

大将『2万円で』

『2万円』

もっとしてたかも。
僕らは基本少食。その上状況的にそんなにたくさん食べれない。2人で10貫程だ。おっちゃんもそんなには食べてなかった。3人で20貫くらいだと思う。
さすが回らない寿司屋。何を出されたかはわからないが相当いいネタか珍しいネタだったのか。
『じゃぁ2万置いとくね』
と、おっちゃん。
イヤイヤイヤイヤ。ちゃんと払いますから!
自分が連れて来たんだからと断るおっちゃん。流石に支払わない訳にはいかないので、少しでも払わせてくれと僕達。

『そう?じゃぁ1人1000円で!』

僕らは2000円支払った。

なんだったんだ、あの人

後で名刺を受け取った。どうやらマグロを卸している会社の社長らしい。あの居酒屋は卸先でヘルプでたまたまいたらしい。
結果僕らに函館の思い出を作ってあげたい親切のスタイル強めなおっちゃんだった。

おかげ様で函館と言えば夜景でもイカでもなく

【マグロのおっちゃん】

と、僕らの中ではなっている。
#函館
#マグロのおっちゃん

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