ショートショート『エコ社会』

　近未来。エコ社会も成熟し、人間の怒りを電気エネルギーに変換するシステムが開発された。これにより犯罪が減少するかと思われた。が、しかし怒りを鎮めることで犯罪が減ることにはならなかった。

　結局そのシステムは、とある施設だけに設置されることとなった。

　刑務所内にある一室。そこには電気椅子が置かれていた。そして今すぐにも死刑執行が始まろうとしていた。

　一人の看守が資料に目を通すと、電気椅子に縛られた死刑囚に近づき、彼の耳元で囁いた。

　すると突然、それまでおとなしくしていた死刑囚が物凄い剣幕で怒りだした。

「ふざけるなー。てめぇー！！」

　怒りが全身からみなぎっていた。

「充電完了……。では、これより死刑執行いたします」

　看守は電気椅子のスイッチを入れた。