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新109のロゴは何故ダサいのか 109はただの商業施設じゃない

4月、109のロゴが変わる。

昨年から言われていたことではあるけど、10数年ギャルをやってきた身としてはやっぱり悲しいものがある。
実際に109のロゴの場所に足場がかけられて、工事が始まったというツイートがあった。
これも悲しいんだけど、もっと悲しいのは新しい109のロゴが掲げられた画像だ。


……

……ダサい…


いや、しかしデザインなんてものは人それぞれの好みだし、ただただ「昔は良かったゾンビ」になるのもそれはそれでダサい!なぜダサいと思ったのかをちゃんと言語化しよう!と思って、このブログを書いておく。

ファッションの発信地→メディアのフォロワーへ…?

まず、変更後のロゴを見て、最初私が思ったのは、「109、インスタの手下になったの?」ということだった。

10数年前、109は本当にギャルの聖地であり、ファッションの発信地だった。
流行りのテナントが立ち並び、セールや初売りでは引くほどの行列が出来ていたし、雑誌にも出て来るようなショップ店員の人たちはスターだった。修学旅行シーズンになると、雑誌には必ずと言っていいほど「109攻略フロアマップ」がつけられ、まだギャルにもなりきれていない私たちに、109のどこで最先端のファッションが展開されているかを教えてくれた。
SNSもない時代、情報源は雑誌か現場だった。私も毎週のように109に行っていたギャルの友達から、再入荷やセール情報をゲットして、親へのおねだりに備えた。

それが今回のインスタグラムのようなカラーリングのロゴになったのを見たとき、109はもう自ら発信するメディアになるのをやめたのかな、と思った。
もちろん、もうリアル店舗に大きな価値はない。入荷情報もセール情報もSNSで簡単に追える。海外通販も増えまくってて、ドメブラも別に強くない。昔ほど、発信源として機能する場所ではないかもしれない。
だけど、「インスタで流行ってる、みんなが好きそうなものを集めるよ〜!みんなの意見で109を作ってこ☆」みたいな流行に流されまくりのテンションというか、渋谷のファッションを牽引していくつもりがかけらも感じられないように見えたのだ。

109はコミュニティ、ギャルはマインド

でもよく考えてみると、今回のロゴは一般公募だ。とすると、問題はロゴそのもの(から感じられるメッセージ)じゃない。
そもそも今回のリブランディング…とも言い難い、109ブランドのオールリセット感が、このしっくりこなさの原因なのだ。

まず1年前にも「は?」と思ったけど、今回のロゴ変更に際しての109サイドのコメントを見てみたい。

https://www.wwdjapan.com/599925

変更の理由を木村知郎SHIBUYA109エンタテイメント社長は「来年で40周年を迎えるにあたり、これまでの“ギャルの聖地”という渋谷109のイメージを払拭したい。この数年はギャルだけに限定せず、“幅広い若者たちの夢や願いを叶える場所“というコンセプトで、新たな館作りに取り組んできた」と語る。

「ギャルの聖地というイメージを”払拭したい”」なんて言葉、BtoCビジネスをしている人が言っちゃだめでしょと思うが、要は「ギャルは嫌だ!」というコンプレックスに溢れたリブランディングだったわけだ。

そんなSHIBUYA109のコンセプトは以下だ。
”Making You SHINE!”「新しい世代の”今”を輝かせ、その夢や願いを叶えていく」

このコンセプトを読みながら、過去の109が産み出した「ギャル」とは?ということを考えてみる。
(2017年に株式会社東急モールズデベロップメントが会社分割されて、株式会社SHIBUYA109エンタテイメントにその事業母体が引き継がれたから、そこでのコンセプトチェンジはあっただろうけど、それはちょっと置いておかせてもらう。)

私という一個人、一ギャルとしての主観かもしれないけど、
ギャルって、元々ギャルになる前は「何も持っていなかった人たち」だったんじゃないだろうか。

クラスの人たちと同じものを着るのにはちょっと馴染めなくて、なんか居場所がなくて、人とは違う何かが欲しかった人たち。
それが109の発信するファッションや、ブランドや、そのショップ店員たちに影響されて、
それぞれの「好き」を見つけて、好きなものを身にまとって、居場所を見つけて、遊んで、ギャルになっていった。

そういう意味で、「ギャル」っていうのはファッションじゃない。
好きなものを体現して、突き詰めていくポジティブなバイブスを持っている人、それがギャルだ。

109にたくさんの憧れをもらって、夢を見て、その夢や願いを叶えてきた。個性を持って、人として大きくなれた。
そんなギャルが109にはたくさん集まっていたはずだ。
そのギャル達がそのままショップ店員になったり、モデルや「オシャレな先輩」になったりして、また夢のない人に夢を与えていく、109はある種コミュニティであり、サークルだったはずだった。

今回のリブランディング、ひいてはロゴが愛せないのは、その109が持っている過去の功績…「109が誰に対して、何を与えてきたのか」を完全無視した結果だったから、じゃないだろうか。よく考えれば当たり前すぎる結論だけど。

109の社長がインタビューで言っていたことを引用しておく。

働いている社員、ショップ店員さんも過去の109のことなんて誰も知らないんですよ。おじさん達が「全盛期はすごかったよ、床が見えないくらいお客さんがいて……」なんて言っても、昔話で終わってしまい、109で働いているスタッフには全く響かない。だったら、「みんなと一緒に新しい109を作っていこうよ!」というのが、今回の見直しの根底にあるんです。

だけど、その時客だった私たちは109のことを知ってるし、その過去を讃えて「ギャルの聖地」って呼ばれている事実があるわけだから、それを完全に無視することはどうしたってできないはずなのだ。それが歴史だろ、と思う。

ランドマークの「ロゴ変更」自体はめちゃめちゃキャッチーだし、だいぶ話題になった。だけど、これまでの歴史をリセットする「脱ギャル」っていう後ろ向きな理由と、ロゴメーカーを使った「大衆に意見を聞く」という、「みんなで」という言葉に逃げた一手がアプローチとしてそもそも良くない。

それにさっきも言ったけど、ギャルはファッションじゃない。マインドだ。そして109はただの商業施設じゃない。コミュニティーだ。
だから、109がここまで育ててきたギャルというリソース・そして思想を手放すのは勿体無いしナンセンスすぎる。

「ギャルの聖地である109が、新しい”ギャル”のあり方を再定義します」
って言った上で、ロゴの変更も含めたリブランディングを行っていくくらいが正攻法、っていうか歴史を作った側としてやるべきことだったはずだ。

だから今回のロゴも、コンセプトありきで「今、若者にとっての夢や”好き”を見つける場所はWebとかインスタで、その憧れを探しに来る場所としての109になってほしいから、ロゴを変更します!」って言われたら、ああ〜時代だもんね〜くらいに思ったかもしれないんだけど。
ただ急に脱ギャルとか言われたら、こっちはちょっと裏切られた気分だ。

別にもう、ガングロギャルの時代じゃないのは誰でも分かってる。109の売上も、ギャルのイメージが強すぎて落ちてるのかもしれないな、ってことは容易に想像がつく。
それが事実としてあったとしても、その積み上げたブランドを、歴史を、ファンを無駄にしてほしくはない。

だって109に輝かせてもらった自分が、確かにここにいるから。

…とまあ、もちろん、109がファッションで狙うメインターゲットは私みたいなアラサーではない。今後新しいロゴの109でも、若者がたくさんの憧れや夢と出会うことを願ってやみません。

(Special thanks:KANEKO https://twitter.com/taneumastyle?lang=ja


おまけ:Kダブのあまりにも痛烈なdisを見て流石に笑いました。


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