㉓[介護ライブレポート]施設でクリニックにかかるとき

一人暮らしの義母がケアハウスに入所したとき、医療面をどうするかを施設のスタッフさん(ケアマネさんと看護師さん)と話し合います。
施設に訪問診療いただけるクリニック以外の診療科目については、私たち家族が義母を診察に連れていくことになりました。
その中で、ふと疑問に思ったことがあります。
それは、介護保険と医療保険の使い分けについてです。

恥ずかしい話ですが、私は介護施設に医師が診療に来ていただける場合はすべて「往診」と思っていました。
しかし、定期的に医師が施設を訪問する場合は「訪問診療」になるのです。
「往診」と「訪問診療」の違いを簡単に説明します。

「往診」とは、通院が困難な患者様の容態が急に悪くなった場合などに、医師が自宅(施設)に訪問して診療するものです。
これは、医療サービスにあたりますので、医療保険の適応です。

「訪問診療」は、緊急の対応ではなく、定期的・計画的に医師が訪問して診療するものです。
訪問診療も医療サービスのため、こちらも医療保険が適用されます。

ちなみに「在宅医療」には、このように医師が訪問して診察や経過観察を行う訪問診療の他に、看護師が訪問してケアを行う「訪問看護」、理学療法士や作業療法士が行う「訪問リハビリテーション」などの医療サービスがあります。

ややこしいのは、往診や訪問診療と近いもので「居宅療養管理指導」というものがあることです。
居宅療養管理指導とは、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士といった医療の専門家が定期的に訪問し、治療を行ううえでの健康管理や健康維持についての指導や相談をするというものです。
これは、医療サービスではないことから、介護サービスとして介護保険が適用されます。
居宅療養管理指導は、往診や訪問診療の時に組み合わせて行われることが多いサービスです。
具体的には、下記のアドバイスや指導です。

・薬剤師による薬の飲み方や管理方法についての指導
・管理栄養士による治療中の病気にあった栄養ケアや調理方法について
・歯科衛生士による、正しい歯磨きや義歯の手入れ方法、嚥下機能の維持・回復のためのアドバイスなど

ちなみに、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士については、医師や歯科医師の指示に基づいて指導を行います。

居宅療養管理指導の自己負担額は、介護保険限度額基準の対象外となり、所定の利用回数内であれば自己負担率1~2割でサービスを受けることができます。
月の利用回数は指導を行う職種により異なります。


在宅医療にかかる費用は、医療保険と介護保険の自己負担分を払うのですが、医療保険の自己負担は、「病院・クリニックへの支払い」「薬局への支払い」となります。
ここで知っておきたいのは、「高額療養費制度」です。
健康保険の毎月の自己負担金が一定以上になったときに、払い戻しが受けられる制度です。上限額は、年齢や所得、利用している健康保険の種類によっても異なります。自分の上限額と申請の方法については、健康保険証に記載された問い合わせ先(保険者)に確認するのがベストでしょう。この払い戻しについては、自主的に申請するものなので、注意が必要です。


介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)といった公的な施設の場合、医師と看護スタッフの常駐あるいは非常勤が義務づけられています。
介護付有料老人ホームにも看護スタッフが配置されており、健康・服薬の管理、緊急時における医療機関への連絡、医療サポートなどを行っています。

しかし、老人ホームで提供される医療行為は、制限されています。
たとえば、インシュリンの注射、在宅酸素療法などを実施されている方は、あらかじめ施設に治療内容を話して、対応を相談するのが良いでしょう。

有料老人ホームの「設置運営標準指導指針」は、平成30年4月に厚生労働省により改正されました。
内容は、「入居者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、医療機関と協力する旨及びその協力内容を取り決めておくこと」となったのです。
この改正により、各施設は協力医療機関との連携を強化し、看護スタッフの充実に取り組んでいますが、その内容は施設により差があります。

入所される方が、「がん」「透析を受けている」「在宅酸素」「栄養制限」などがある場合は、特に医療面の連携を重視して施設を選択すると良いと思います。


医療費と介護施設の関連で知っておきたいこととして「老健の医療費」があります。
老人保健施設(以下、老健)に入所しているときの医療費は、基本的に施設の負担になることです。
そのため、持病で高額な薬を飲んでいる場合には、入所できないケースもあると聞きます。

個人の事情で他の医療機関を利用する場合には、在宅と同じような医療費が必要になるのですが、老健の医師の許可なく他の医療機関を受診した場合は、保険が適用されない場合もあります。
その場合には、医療費の全額自己負担となることもあるので、個人の事情で他の医療機関を受診したい場合は、まず老健に在籍する医師に相談しましょう。


介護施設で医療機関にお世話になるとき、疑問に思ったことを紹介いたしました。
この記事が、皆さまのご両親の親孝行に役立ちますように。


以上

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