[介護ライブレポート]薬篇 「お薬手帳」

病院に通院している一人暮らしの高齢者の方に、一度はご確認をしていただきたいのが「お薬手帳」についてです。

「お薬手帳」は、1995年(平成7年)1月17日に起きた阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)のときに見直され、普及が進みました。
このような大きな災害のとき、最初に必要になる医療はケガや火傷などの外傷が主なものになります。
急性期が一段落すると高血圧や糖尿病などの慢性疾患に関する治療が必要になってきます。
患者さんには、災害前に服用していた同じ薬を提供する必要があるのですが、通院していた病院や薬局が被災していた場合には仮設の救護所にいかなければなりません。
救護所に訪れる患者さんの薬についての記憶は、剤形や色に限られることが多く、それまで服用していた薬を渡すことができない事態が起きました。
このときに必要性を見直されたのが「お薬手帳」だったのです。

2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)においても、「お薬手帳」の災害時の重要性は再確認されました。

内閣府が2020年(令和2年)10月に行った「お薬手帳」に関する調査では、「お薬手帳を利用している」と答えた人の割合が71.1%、「利用していない」と答えた人の割合が28.6%となっていました。
ほとんどの方が「お薬手帳」を認知し、7割以上の方が利用されている現在、改めて「お薬手帳」の説明をさせていただきたいと思います。

お薬手帳は、薬の処方歴、既往症、アレルギーの有無などを記載する小型の手帳です。
どのような薬をどれくらいの期間飲んでいるのか、これまでに経験した大きな病気はなにか、アレルギーの体質などを確認するためのものです。
初めて医師の診察を受けるとき、調剤薬局で処方せんの薬をもらうときに、この「お薬手帳」をお見せいただくのですが、ここに書かれた情報は非常に重要な情報ばかりで、診断や薬の選択に大きく役立つのです。

他の病院で処方された薬がわかっていれば、同じような薬を避けることができます。
また、今回処方される薬とこれまでに飲んでいる薬の相互作用も確認できます。

このように「お薬手帳」は、普段の病院や薬局に行くときに利用されるものですが他のケースにも役立ちます。

・災害のとき
・旅行
・転院
・休日診療所に受診したとき
・健康食品やサプリを購入するとき

このようなときは、お薬手帳をご持参くださいね。必ず役立ちます。

さて、「お薬手帳」の使い方でまれに見られるカン違いをご紹介したいと思います。

[病院ごと、薬局ごとに「お薬手帳」を持っている]
薬局で「お薬手帳」を出すとき、「えーと、ここはどの手帳だったっけ?」とカバンを探しておられる方がいらっしゃいます。
病院や薬局ごとに「お薬手帳」を作っているのです。
これ自体は別に悪いことではないのですが、薬の情報を管理するうえでは、1冊にまとめる方が簡単で、患者さんも保管や持参も楽になります。
「お薬手帳」は1冊にまとめることをオススメします。

[歯医者さんに「お薬手帳」は関係ないよね]
大いに関係あります。
確かに歯科では、薬が処方されることは少ないかもしれませんね。痛み止めや抗生剤などが数日分でることが多く、長期間に渡って飲む薬はあまり処方されません。
しかし、これも薬ですので、記録しておきましょう。(短期間の薬や抗生剤の記録がなぜ重要なのかは次の項目で説明しますね。)
歯科でご注意いただきたいのは、あなたが飲んでいる薬を治療する先生に伝えてほしいことなのです。
特に「血液サラサラの薬」や「骨の薬」は歯科の治療するとき、注意するべき薬になります。
「血液サラサラの薬」は、出血が少し止まりにくくなることがあるので、歯の治療のときに注意しなければなりません。
また、「骨の薬」とは「骨粗しょう症」の治療薬の一部のことです。これを飲んでいるときは、歯の治療を慎重に行う必要があるのです。

なお、整形外科や眼科も同じようにお考えになってる方がいるかもしれませんね。
どの診療科でも初めて受診する場合には、自分の飲んでいる薬を「お薬手帳」でお伝えください。

[かぜ薬だけなら記録はいらないよね]
このように考えられている方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか?
通常、かぜの薬は3日~5日分、多くても7日分程度ですよね。続けて飲まないから、記録は省いてもいいんじゃない?
この気持ちもわかるのですが、実はこのような短期間の薬(前項目の歯科の痛み止めや抗生剤)も記録する意味があります。
かぜ薬で比較的発生しやすい副作用は、かぜの症状を軽減する薬の「眠気」と抗生剤の「下痢」「便秘」です。
このような副作用が発生した場合には、是非、医療機関へお知らせください。
これが、次回のかぜ薬の投薬のときに大変重要な情報になるのです。
反対に副作用はなく、無事に全部飲んじゃったよと言う方もこのこと自体が参考になります。
なぜなら、あなたが安全に飲める薬のリストになるからです。

[「お薬手帳」は毎回記録しましょう]
「お薬手帳」は一度見せたら終わりではありません。
毎回、薬の処方を記録していきましょう。
飲んでいるお薬が変更になったとき(新しい薬が増えた時、減ったとき、変更になったときなど)は、特に記録が必要なのですが、いつ処方の内容が変更されるかは、受診しないとわからないですよね。
だから、毎回記録することが重要なのです。


以上、「お薬手帳」について、ご紹介しました。
同じ薬で2回目の副作用が出ないようにするため、他の医療機関から出ている薬と相互作用を起こさないようにするために「お薬手帳」は非常に役立ちます。
また、大きな災害はいつ来るかはわかりません。
日頃のお薬を安全に飲んでいただくため、災害時に命を守るために「お薬手帳」をご活用ください。

この記事が皆さまの親孝行に役立ちますように。

以上

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