ひとりぐらし

一人暮らしが不安定である。きちんと家事はできるのだが、精神面が綱渡りでもしているようなグラグラとした不安定さで、その事実がとてもおそろしい。
親のことは嫌いであった筈である。一人暮らしとは親から離れられるという事である。さすればそれすなわち幸福の訪れであると単純に考えて、一人暮らしにわくわくしていたのだが、どうも毎日胸がセンチメンタルな発想にギュウギュウ締め付けられて苦しい。
生ゴミの袋を見る度に、新しい家で初めて料理をした後に、親に生ゴミの水分が少ない、上手くやったねと言われた事を思い出す。実際のところ、私は母親よりも家事を上手くこなせているような気さえしてくる。しかしそれがなんだか適当な母親の家事を思い出し、家族全員の家事をして大変だったんだろうに私は常に母親に苛立ってばかりだった…と後悔の念を呼び覚まし、母親が死ぬまでにこのことを謝罪できるのだろうか…とか、親が死んだら一人でこうやって生活して行くのだろうけど、そこにすっかり生活に慣れて何も不便を感じていない大人の自分がいるのだろうということをなんとなく考えて、それがとても嫌で仕方なくなってしまった。自分が今の自分の抜け殻に見向きもせずに進んでいく未来が漠然とこわいのだ。時間は不可逆である。もう昔に戻れないという事実を小学3年生あたりで気がついて不安すぎてオイオイ泣いてしまったし、そのあともそういうかなしいことばかり考えていたせいで不安神経症になってしまったんだと思う。もう取り返せないものの事について考えてとても深いブラックホールに落ちてしまうのが癖になってしまっている。かなしくて耐えられないから、本当はこんな所に落ちたくないのに、どうしても足を滑らせてツルッと落ちてしまう。最近は上手くやって落ちないでいられたのに、こんな時にやってしまうなんて。1度不安にとりつかれると、芋づる式に不安要素が飛び出してきていっせいにメンタルを攻撃してくるのでもうどうしようもない。どうすればいいんでしょうね。大学が始まれば何とかなるんでしょうか。そうでしょうね。はい。

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