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【考察】両面宿儺は神霊 ◆呪術廻戦◆

両面宿儺の正体を紐解いていく上で裏梅との関係にも触れていきたい。
本誌のネタバレを含むかもしれないので単行本もしくはアニメ派は気を付けてほしい。

1.領域展開『伏魔御厨子』の建築様式

伏魔御厨子の「厨子」という言葉から仏像や仏舎利、教典や位牌などを安置しておく二枚扉の開き戸がついた仏具を想像する方は多いのではないだろうか。
現に伏魔御厨子の屋根は茅や檜ではなく、瓦で描かれていることから寺院を連想させる。
だがアニメ版で伏魔御厨子が描かれたとき、違和感があった。

その違和感というのが柱や軒裏の色が赤色で描かれていたこと。
赤色の柱や軒裏というと神社を連想しないだろうか。
なぜ、伏魔御厨子には寺院と神社の要素が混ざり合っているのだろうか。

2.領域展開『伏魔御厨子』の牛の骨

この領域展開には牛の骨が"複数"描かれている。
領域展開とは生得領域を具現化したもの。
つまりこの”複数ある牛の骨"も両面宿儺に深く関りがあるものになる。

さて先ほど伏魔御厨子の色合いが神社を連想させるとお伝えしたので、お正月という時期も相まって気づかれた方もいらっしゃるのではないだろうか。

そう、この牛の骨、天満宮の御神牛像に似ていないだろうか。
伏魔御厨子の牛の骨には角が描かれているが、天満宮の御神牛像の牛にも角があるのだ。

また複数描かれている点についても、九州にある太宰府天満宮では境内に10頭以上の御神牛像が祀られているし、北野天満宮では燈籠や欄間彫刻なども合わせると45頭も祀られているという。その内の1頭は目が赤いらしいので一度実際に見てみたい。

確か宿儺(ver.in虎杖)の眼も赤かったような…

ちなみに大阪天満宮は新年のお参りも兼ねて参拝したが、このご時世なだけあってすぐに帰宅したので2頭しかお目にかかれなかった…。
そのとき妹が新年明けて早々、おみくじで凶を引いていたので逆に運がいいと思う。頑張れ国試。

3.日本三大怨霊「菅原道真」

呪術廻戦の中で菅原道真は五条悟や乙骨の先祖にあたる。
その菅原道真は天満宮の祭神であり、天神様と呼ばれていることは万人の知るところだ。

………おっと、、、

伏魔御厨子の神社要素から天満宮の御神牛像、そして祭神。

両面宿儺は菅原道真公か?と思った方、少し待って欲しい。
確かに大宰府天満宮には浮殿とよばれる、昔水面に立っていたとされる御旅所があり、それが水面の上に描かれている伏魔御厨子に通ずる部分もあったりする。

だが伏魔御厨子の「厨子」から仏具、強いては仏教の要素があることも忘れてはいけない。
また伏魔御厨子の「伏魔」とは伏魔殿を意味し、魔のひそむ殿堂、つまり神仏を祭る建築物である。

そう、神仏。神と仏、神道と仏教、その両方を指す。

4.菅原道真の死後

菅原道真は怨念を抱いて亡くなったため、怨霊と化した。
左遷にかかわった人物の相次ぐ死や日蝕、地震、彗星、落雷などの天変地異、干ばつや洪水などの災害による農作物の不作、そして流行病など、次々に起こる天災を菅原道真の祟りだとし、その怨霊を祀り鎮める「御霊信仰」によって畏怖されていく。
そして神号『天満大自在天神』が送られたことにより菅原道真は神格化し、また清涼殿落雷事件が起きたときにはその地に地主神、北野天神の眷属、火雷神の祠堂があったためその火雷神が道真の怨霊により祟りを起こしたのだと結び付けられた。
これにより、主神である北野天神(菅原道真)が火雷神を遣わせたとも考えられるようになる。

噛み砕いた説明をすると、天神は元々、国津神(地の神)に対する天津神(天の神)を表し特定の神の名ではなかった。天に居る神=天神と記載すると分かりやすいだろうか。
そのため雷とは天の神による仕業と考えられ、雷神は天神の使い、眷属であり、水田耕作に必要な雨と水をもたらす雷神は稲の実りを授ける神、農耕の神として信仰されていた。
その雷神が菅原道真の眷属として、菅原道真公に代わって意志を伝える使者、神使に結びつけられたことで、清涼殿への落雷も北野天神の眷属である火雷神(火雷火気毒王)が下したとも言われている。

したがって、菅原道真=天神(豊穣の神)の認識となり、そして菅原道真公の御霊に対する信仰が「天神信仰」として広まっていったのだ。

また天神には十六万八千の眷属がいたことから、天神=菅原道真が浸透していったことで、祟りは全て眷属の水火、雷電、風伯、雨師、毒竜神などによるものだと信じられるようになる。

その反面、神仏習合の影響により神号『天満大自在天神』の大自在天は仏教の自在天外道の主神、破壊神シヴァの名を指す。
また神号『天満大自在天神』の他に『日本太政威徳天』としても信仰されており、神号『日本太政威徳天』の太政威徳天には、仏教の大威徳明王、阿弥陀如来もしくは文殊菩薩の化身を表し、西方を守護する五大明王の一尊でもある。また破壊神シヴァの強暴な面をも指す。

そして神仏習合が進む中で、大自在天は観音の三十三身の内の一つと応化するといわれ、十一面観世音菩薩と同一視されていく。
さらには『実道権現』、言うなれば仏や菩薩にならって称した神号で呼ばれるようにもなり仏教でも渡唐天神や妙法天神経、天神経などの崇敬をうけた。

神仏習合が進んだ理由として、神道の太陽神『天照大御神』が仏教の太陽を司る『大日如来』と重なる部分があったため、仏教が日本へ伝来した後、仏教の『大日如来』は神道の『天照大御神』の本来の姿であり、仏(菩薩)が現世で苦しみ悩んでいる生きとし生ける全ての者を救済し、悟りの境界へ導くために神々の姿を借りて現れているという本地垂迹説が挙げられる。

そのため結果として、天神は弥勒菩薩がいる兜率天では千手観音の化身になり、帝釈天がいる帝釈宮では大日如来の化身となり、閻魔大王がいる琰羅天では地蔵菩薩の化身として、京都の北野では文殊菩薩の化身、そして最後に九州の安楽寺では十一面観音菩薩の化身としての5つの名と姿がある。

天神は人間をはじめ、すべての生物を救うため五身、十身、千にも億にも身を変じ、仏身でもあり菩薩身でもあり、長者身、居土身、宰官身でもあるとも言われているのだ。

それ故、菅原道真=天神は大自在天もしくは大威徳明王、それぞれに習合し、天神の本来の姿(仏)は十一面観音菩薩や不動明王、金輪、薬師如来、愛染明王、慈恵大師、阿弥陀如来、毘沙門天、大聖歓喜天、大弁才天神、千手観音、大日如来、地蔵菩薩、文殊菩薩、観世音菩薩などへと結び付けられた。

5.神号『天満大自在天神』

神と仏の両面を持つ。
これこそが両面宿儺と呼ばれる所以なのではないだろうか。
また、両面宿儺の名を冠した理由はもう一つある。
両面宿儺の宿儺は宿禰であり、古代日本の真人 、朝臣に続く高位な姓の一つ。
伝説上の人物になるが日本史に出てくる野見宿禰は天穂日命の子孫であり、後に土師氏と称して、子孫は天皇家の葬儀をつかさどった。そしてその土師氏は奈良時代に菅原の姓を賜る。
事実、菅原道真は天穂日命の子孫で、野見宿禰を先祖とする土師氏の子孫であり、また平安時代の初期、菅原道真の伯母である覚寿尼が土師寺に住んでいたため、左遷される時、別れを告げるために伯母の住む土師寺へ菅原道真が立ち寄ったと道明寺に伝えられている。

このことから両面宿儺は「神と仏の両面を持った菅原道真」とも読める。

だからこそ、実在した人間は『菅原道真』を指し、仮想の鬼神は『天満大自在天神』であり、その信仰の強さから呪いの王『両面宿儺』と呼ばれるようになったのではないだろうか。

天神とは災禍を与える荒ぶる神を指すことから、菅原道真を「天神様」として畏怖の対象とする天神信仰により神霊の両面宿儺が生まれたと言っても差し支えないだろう。

6.神霊の両面宿儺

両面宿儺=天神様(菅原道真)と考察したところで、作中の伏線にも紐づけていこう。
呪術廻戦7巻の第55話から始まる八十八橋編。
ここで伏黒の姉、伏黒津美記が呪われ昏睡しているシーンが描かれている。
その背景には花言葉が「呪い」の黒ユリが描かれているが、このユリの花、両面宿儺にも共通する部分がある。
それが領域展開『伏魔御厨子』の牛の骨、天満宮の御神牛像である。
御神牛像は臥牛とも呼ばれいるが、臥牛という和名の植物があり、それがユリ科に分類されるガステリア。ガステリアの花言葉は「子宝」
牛が寝ている様子に見立てて臥牛と呼ばれており、天満宮の御神牛像も寝そべっているため、この共通する部分において伏黒津美記が呪われた要因に両面宿儺が絡んでいてもおかしくない。

呪術廻戦14巻の第116話の宿儺による火矢。
この炎の能力は神号『天満大自在天神』の大自在天、仏教の自在天外道の主神である破壊神シヴァの名を指していたことから炎を扱えるのではないかと思う。
また矢の形状にしても、神社の魔除けの矢である破魔矢を模していてる可能性が高い。また漏瑚が死んだような描写があるが、その前に宿儺は漏瑚に対して救いの言葉をかける。
その言葉により漏瑚が涙を流すことになるのだが、これは天神の生きとし生ける全ての者を救済するということに当てはめれば、漏瑚は宿儺に救われ祓われたのではないだろうか。
そうなれば漏瑚に対する宿儺の「俺はそれを知らん」というセリフは、神(宿儺)は救済されたことがないともとれる。

おっと?虎杖…?出番ですよ……宿儺を救ってあげて……

呪術廻戦14巻の第117話の宿儺の察知能力
伏黒が調伏の儀式「布留部由良由良 八握剣異戒神将魔虚羅」を発動させたとき、宿儺は何かに勘づいている。
これが伏黒の調伏の儀式が発動したこと自体を察していたと仮説した場合、なぜ知ることが出来たのだろうか。
その理由としては伏黒の現在地に理由がある可能性が高い。
伏黒の現在地、その近くに神社が「千代田稲荷神社」「中川稲荷大明神」の2社、存在している。天神と稲荷神は少し違ってくるが、稲荷神は豊穣の神様でもあるため宿儺=天神(豊穣の神)として共通する部分がある。

呪術廻戦14巻の第118話の退魔の剣
八握剣異戒神将魔虚羅の退魔の剣、この攻撃を受けて宿儺は自身が呪霊なら一撃で消し飛んでいたと評している。
この言い方、宿儺は呪霊ではないような意味が感じられないだろうか?
また呪術廻戦14巻の第119話で展開された宿儺の領域展開、この解説に結界を閉じず生得領域を具現化することは神業だと記されている。
実際、空に絵を描くことは人間には到底できないことだろう。
宿儺が天神、強いては神であるならこの領域展開が可能な理由にもなる。

7.裏梅の正体

さて、両面宿儺=天満大自在天神=菅原道真と考察したところで今度は裏梅に触れていこう。
菅原道真には梅に関わる伝説がある。それが飛梅伝説。
菅原道真が遠く大宰府へ左遷されることとなったとき、梅の木に語りかけるように詠んだ和歌がある。
その和歌で主人である菅原道真が遠い地へ去ってしまうことを知り、菅原道真の後を追う気持ちを抑えられず、空を飛び、その日一夜のうちに大宰府の地に降り立ったという。

呪術廻戦の裏梅も宿儺の元へ駆けつけたとき、どこからともなく飛んできている。
旧知の仲のように会話をしているのも納得がいく。
そして飛梅伝説の梅の木として大宰府天満宮にあるのは白梅である。裏梅が白髪なのも白梅の精だからだろうか。
また飛梅伝説を元にした能の演目「老松」では梅の精を紅梅殿と呼び、男神や女神として擬人化されていることから、裏梅という名は女性の着物柄としてよく利用されているため女神を指し、のちのち別の梅の名を持つ男神の梅の精が登場してきてもおかしくはない。

8.番外編「幼魚と逆罰」

アニメで幼魚と逆罰が放送されました。
ええ…あの……音声がつくと………すごく………
し ん ど い

漫画だと一旦とじることが出来るので落ち着かせて読み直すことができるんですが、アニメは画面から目を逸らしても音で追い打ちをかけてきやがりますね。
再生ボタンはやく止めないと……

この幼魚と逆罰ですが、幼魚は吉野順平を指す。
これはアニメOPからも考察されていらっしゃった方がいたようです。
では逆罰は?何を指すんでしょうか……。
逆罰とは理不尽なことを神仏に願い、かえって罰を受けること。もしくは理不尽なことを神仏に願った罰。

願っていましたよね。虎杖。宿儺(神仏)に吉野順平を治してくれと……。

理不尽なこととは物事の筋が通らないこと。
簡単に言うと無茶苦茶なことという意味になります。
虎杖は「なんでもする。俺のことは好きにしていい。」だから「吉野順平を治してくれ」と無茶苦茶な願いをした。
以前、虎杖の心臓を治したのは筋が通っていたから。でも今回は筋が通らない。

もっと簡単に噛み砕くと、以前、宿儺は自分で虎杖の心臓を潰してしまった。だから宿儺は治した。
でも今回は真人が吉野順平を無為転変してしまった。にも関わらず無為転変をしていない、関係のない宿儺に治してもらおうとした。

それ故に理不尽な要求として、筋が通っていない願いとして、吉野順平の死という罰を受けた。
両面宿儺は天上天下唯我独尊、己の快・不快のみが生きる指標、神であるからこそ、虎杖が提示した対価も意味がなかったということになる。

なのでこのタイトル、幼魚と逆罰も「吉野順平と虎杖の願い」とも読めることになります。



さて、今回の考察は以上です。
ここまで考察していると神の要素が強いので神仏の仏要素どこ行った?って感じですが、まさか宿儺の企みって仏の面を取り戻すことだったりします?
神仏習合って、江戸時代から神道の優位を説く思想が栄えて、明治維新の時代では神仏判然令が出されて神仏分離され、神道有利な考えが広がりましたし……
神仏判然令が出される前は1000年以上「神仏習合」の時代が続いたので宿儺の狙いって……もしかしてそのために伏黒を気に入っているんです?

ん?禅院家と五条家の仲が悪くなったのって、神仏習合の時代から神仏分離の時代に代わり始めた江戸時代だったよね…?おや…?????

呪術廻戦14巻 第116話の漏瑚が涙を流しているシーン、救われたことは描かれているのだが、『悟りの境界へ導く』という部分がないように思われる。だとすると、神仏分離の影響で救済はできても導くことができないのではないだろうか……。

ここら辺の深堀は面白そうなので追々していきたいと思います。ではまた。




神社……ジンジャ……ジンジャー…………なんつって

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呪術廻戦界隈に住まう方々の考察に影響を受け、自己満足で妄想した内容です。
一種のエンターテイメントとして捉えていただければと思います。
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