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フィルウッズをブルーノート東京で聴き終わったときに事件が起きて。。

高専卒業して、一年“遊んで“、大学に入ってすぐだと思うから、もう30年ぐらい前かな。
当時、仲良くしていたHくん、また別のHくんと一緒に。
僕の中で想定した後者のHくんってやつが良く言えば“ぶっ飛んだやつ“で。
常識がないというか、“こんなことやるかね??“ってことを普通な顔してやるやつで。

いつだったか、海を見に行こうとなったときに。
不動産会社の息子だったHは、自分の車、ワーゲンゴルフを乗っていて。
川崎の方だったかな、土手沿いの道をわざと逆走して、同乗者を驚かせてみたり。
というか、対向車がきて、避けていったので事故直前だったんだけど。
ドラマみたいに、急ハンドル切って、ほんとに危うく大事故になる経験をもたらしてくれたスリリングな人間。

そんな三人で、ブルーノート東京へ。

フィルウッズの艶っぽい音色は魅惑的。
なによりも驚いたのが、生音が大きい。
というか、デカい!
なにこれって、感じ。
当時、ヤマハのサックス教室に通ってすぐだったかな。
そのときに講師がクラシック育ちだったので、なんというか木管楽器らしい音色の方で。
もちろん、それはそれでよかったのだけれど、僕的には、もっと艶っぽくエッジが効いた音に心奪われることがわかってきた時分。
なので、ウッズの、“キュイーーン“という吹け上がる感じに、これだ!と思った。

トムハレルっていう名前だったかな。
フリューゲルホーンかペットかの柔らかい音が印象的なステージが始まり、途中端折ると、セットが終わったその瞬間に事件が起きて。

その後、数々のライブに出向いているけれどついぞそんな場面に遭遇しないので、「事件」って言ってもよいと思う。

ステージ終わりの、なんというか、演者さんも客も“終わった”という雰囲気ありますよね?

その空白の時間帯に、Hくんが、ステージに向かって黙々と歩き。
突進、という感じじゃなかったんですよね、一部始終見ていたんだけれども。

手に持っていた何か、ノートみたいなものかな、それとマジックでウッズに向かっていったんですね。

忘れないなあ。
そのときの、空気。
演者さん、残っていた観客、動きが止まったもんね。
僕も、声かけられなかった。
というか、その時間がなく、ウッズに迫っていったんです。

同席の別のHと、“ヤバヤバあいつまたなんかやらかすよ“と目配せをしたのも覚えているし、スタッフスタッフどうする?って見たのも覚えてる。

なのですが、これも社会経験のない僕が驚いたのだけど。
慣れているのか、NYでは当たり前なのか、当のウッズはなんてことなくHの求めるサインになんてことなく応え、バンドメンバーもそれに笑顔で応え。

そのときの、会場の雰囲気、すごい覚えてる。
今、書いてて、鳥肌立ってきた。

えっ!!、いいんだ!!!

ってなったんです。ブルーノート東京が。

それは僕らもそうで。

それからが、あろうことかサイン大会になったんです。
すごかったなあ。

サラリーマンの人たちは、ウッズ、メンバーに前屈みで変わるがわる背中にマジックでサイン書いてもらってた。
今考えるとめちゃくちゃ羨ましい。

今だったらスマホで写真撮りまくりだろうけど、当時はそんなのなかったからなあ。
僕の脳内にあるだけ。
残っていた観客のほとんどがステージに向かったんじゃないかな。
僕も、財布とかにサインもらった時、もう、いろいろ入り混じってゴッたがえしてたぐらい。
あの人、サインで忙しそうだから誰にもらう?、って感じで。

今では、その彼と数十年ご無沙汰で、今後も連絡は取ることがないと思うけれど、僕はその彼に超絶に感謝している。
彼がいなければ、その“事件“は起きなかった。
そして、フィルウッズの思い出もあり得ないほど強固にならなかった。

その日、そのときのブルーノート東京に圧倒的な思い出を撒き散らしてくれた、HAYAKAWAくんさ、今も元気でやってるのかい?




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