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【格闘技】サモアの怪人

マーク・ハントのUFC契約最終試合を観た。敢えて入場曲をかけずに、ニュージーランド伝統のハカで入場してきた。

試合は判定負け。最後は3連敗でUFCキャリアを終えた。

“8勝8敗1分け1無効試合”

2010年のUFC参戦以降のハントの戦績だ。数字だけ見れば平凡そのものだ。タイトルに絡んだのもファブリシオ・ヴェウドゥムとの暫定王座戦一戦のみ。3敗すればリリース候補といわれるUFCは、それでもハントを手放さなかった。

理由は単純明快。ハントの試合は面白いからだ。

かつてPRIDEに参戦した、バルセロナ五輪金メダリスト吉田秀彦選手はある記事で「負けてもいい試合をすればオファーが来るのがプロの世界だと知った」と語っていた。裏を返せば試合に勝っても内容がしょっぱかったらオファーは来ない。

「プロは結果が全て」とよく言うが、この「結果」とは “勝敗” ではなく “内容” 

カネの取れる試合をしているかどうか。それこそがプロが求められる「結果」なのだ。

そう言った意味で、マーク・ハントほど「結果」を残した選手は他にない。

マーク・ハントのUFCでのファイトはどれも印象的で、非現実的で、スペクタクルに溢れたものだった。

ドローになったアントニオ・シウバとの血みどろの大激闘、

代名詞となったウォーク・オフ・ (ノックアウトした選手に追い討ちをかけずに歩いて立ち去る)KO 。

トップコンテンダーであるロイ・ネルソンもフランク・ミアもマットに沈めた。

特に大巨人・ステフェン・ストルーフェの顎を真っ二つに叩き折って立ち去った試合は、大阪から夜行バスでさいたまスーパーアリーナへ観に行った僕にとって思い出深い試合だ。

JDS、ヴェウドゥム、ミオシッチにアリスター。負けた時の負けっぷりも印象深い。

MMA転向前からハントの試合は記憶に残るものばかりだ。

完全なダークホースだった2001年のK-1グランプリ。一回戦バンナ戦のあのKO。予選で見せたレイ・セフォーとのノーガードの打ち合い。

その後のバンナとの2度の名勝負。

本当に、綺羅星の如く脳裏にに焼き付いて離れない試合ばかりだ。

UFCがPRIDEを吸収合併した時、UFCはハントに残りの契約金は支払うから引退するよう勧めた。立ち技しかできず、当時連敗中だったハントはUFCには魅力的に映らなかったのだ。その半ば戦力外通告の状況から18戦。

「結果」を積み重ねたから戦えた18戦。己の価値を世界に知らしめた。

しかしキャリアを通じてよくあれだけのハードヒットを貰って、まだ現役がやれるなと、改めて怪人ぶりに驚かされる。

いくら頭蓋骨の厚みがピーターアーツの2倍とはいえ、無事なわけはない。一時期重度のパンチドランカーで記憶障害との噂も出た(後に本人が否定)ほどだ。

ハントは命を燃やしてファイトを見せてくれていた。

それだけに、ブロック・レスナーはじめドーピング違反者とのマッチメイクが多かった事は許せない。(あいつらもし街でみかけても無視!ふん!)

あるファイターが「ハントは世界で唯一、アンチのいないファイターだ」と書いていた。

いつも陽気で朗らかで、太った体でのそのそ歩く。常人離れしたタフネスと桁外れのハードパンチ、だけど寝技はからっきし。倒した相手には一瞥をくれるだけで必要以上の追い討ちはしない。

こんなわかりやすくて漫画のようなキャラクターを誰が嫌うだろう。みんなハントが大好きだ。

44歳。まだ現役を続けるらしい。

マーク・ハントの今後のキャリアに幸あれと願う。



コーヒーが飲みたいです。