小泉構造改革

最近からではないが、よく見るようになった小泉構造改革の元で竹中平蔵氏らが進めた新自由主義への批判がよく見られるようになった。終身雇用が終わり、非正規雇用による雇用の流動化と不安定性、超格差を生み出した。さらに今のインフレが追い打ちをかける。ただし、今はそれを支えた人材派遣業自体が人手不足で回らなくなっている。当時回り始めた新自由主義が閉塞に向かっている時期でもある。

小泉構造改革が始まった当時の状況は、バブル時に上げた賃金がバブル崩壊後下げられず、デフレだが賃金が高く、その賃金を維持するために新規雇用が出来ない。インフレだが賃金が安い今とは真逆の状態だった。

我々団塊ジュニア世代はまさにその就職氷河期をくらった。ただ、その意識として会社に生涯を捧げるという終身雇用はダサいという当時の若者ならではの意識もあった。「最近の若い奴らは・・・」と言われても仕方のない愚かな若者たちだった。だから自らフリーターをしている人もいた。そういう人はその後生きられくなった。バブル崩壊までは団塊ジュニア世代は団塊世代にとって消費して内需を支えてもらう存在だった。そのことが当時の愚かな若者たちを作り出していた。

仕事の方はどういう状態だったのか。働き手にとって今は仕事自体の内容が問題になる時代だが、当時は人についていく時代だった。今は雇用が流動化し同じ人とずっと仕事が出来るわけではない。求められる仕事によって現場は変わり、人も流動化していく。当時はこの人と一緒ならやっていける。だから仕事を続けるという時代だった。言わば共同体意識が強かった。

だから、専門職よりも総合職ばかりで、学校も普通課の時代だった。仕事内容も生産性よりもコミュニケーション能力が求められた。今はリストラの現任は生産性だが、当時は派閥からのけものにされたコミュ障が原因となることが多かった。当時のリストラサラリーマン像は禿げた汗臭い、リストラされたことを家族にも言えないみじめな男だった。

そういう時代は会社に馴染んでいれば、会社は居心地のいいところだった。だが、人たらしが多く、本当に働いている人は半分以下という時代だった。それに加えてバブルの頃からの高い賃金、会社は維持出来ない。そういう会社が時間制でなく、裁量労働制にするとさらに働かなくなる社員が増えた。実作業は外注に丸投げ。内容すら理解できていなかった。

小泉構造改革はそういう社会のスリム化だった。バブルの時代に大量に作られた法人も潰されていった。人依存から実際の仕事依存に社会を変えていった。雇用の流動化からの新自由主義の超格差社会という閉塞を今にもたらしているが、当時としてはやらなくてはいけなかったことだった。

その後に続く民主党政権はマスコミのせいとネトウヨは言うが、本当の原因は小泉構造改革が自民党の基盤を破壊したことだ。新自由主義のやり方は地方の人依存の基盤を破壊した。人が少ない地方では人の繋がりが重要で仕事依存のやり方は向いていなかった。

民主党から政権を奪い返した第二次安倍政権は新自由主義とは真逆で、ケインズ経済学による財政支出の政策だった。これにより雇用はその前より安定化した。公共を削減し、赤字を減らした政策から、財政支出で経済を活性化させる社会主義のような経済政策だった。その前提は社会が発展し続けることだった。私もケインズ政策の必要性を民主党政権当時に書いている。

新自由主義が回り始め、それが前提になった時代で、公共、政治よりの政策を実施すると権力が集中し、腐敗が生まれる。今騒がれている自民党裏金問題よりも、森友問題で、公文書の改竄を拒んだ方がそれだけででなく、死に追いやられるという事態が発生した。当時政権はそれを揉み消し続けた。アメリカは情報公開法があり、ある年数を超えると公文書は公開される。それは当時の事実を再検証することが国家の存続として必要だと考えているからだ。森友問題は一人の死という犯罪だけでなく、国家の屋台骨を腐らせる国家の存続に関わる問題だ。裏金という表面的な政治家個人問題よりも、隠れたその中心が腐る問題で、これを放置することはもう国家は存続出来ないことを意味する。ネトウヨが世論誘導してマスコミの力を削いだことはこれだけの問題を生み出した。

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