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【市民的コモンズに関する読書会】『人が集まる「つなぎ場』のつくり方 都市型茶室「6次元」の発想とは』

ナカムラクニオ『人が集まる「つなぎ場』のつくり方 都市型茶室「6次元」の発想とは』, 2013, 株式会社阪急コミュニケーションズ

目次
01 6次元とは何か?
02 実験喫茶の誕生
03 カフェ化する都市
04 BOOK BANGが起きている
05 本がライブになった日
06 なんとかナイトの成功
07 ミニマルメディアの可能性
08 デジタルハラッパであそぶ
09 あたらしい世界のつくり方
10 Book to the Future

著者紹介
ナカムラクニオ
6次元店主/映像ディレクター。1971年生まれ。荻窪にあるブックカフェ「6次元」店主。フリーランスで美術や旅番組などのディレクターとして番組制作に携わり、これまでに訪れた国は40カ所以上。趣味は世界の本屋さんとカフェ巡り、古文字収集、うつわの金継ぎ。(本書より)

本の概要紹介
著者が運営するブックカフェ「6次元」はカフェとギャラリーと古本を扱う空間。6次元での出来事や情報と人が集まる「場」の歴史を交えて、6次元がなぜ人を集めるのか、未来のカフェの姿を模索する。

市民的コモンズというテーマを考えるうえで、特に示唆的な内容
 いつの時代も場づくりにかかせない「ミニマルメディア」という考え方が参考になった。著者によるとミニマルメディアとは、小さいながらも意志がはっきりとある、小さくシンプルだけど、強いメディアであり、以下の特徴を備えている。
①    小さいため機動力がある
②    維持費が少ないため長続きする
③    大きな力にも対抗できる
 現代で有力なミニマルメディアはSNSであるという。同じく記載されているこれまでに発展してきたミニマルメディアと比較して、SNSは、より小規模(個人)で、情報発信・受信の頻度が高く、容易という特徴が挙げられる。現代では個人の所属コミュニティが細分化されているため、イベントのテーマが大雑把だったり、対象者が広範に及ぶ企画では、参加者がそれぞれに求める交流を提供することは難しいと考える。よって、現代において場づくり的活動を盛り上げるには、対象者の具体化やテーマに興味を持っている個人へのアプローチが重要であるといえる。情報発信や話題づくりの場として、ミニマルメディアの活用は不可欠だと考えさせられた。

紹介された市民的コモンズの面白い事例
 6次元は観客参加型カフェを志向し、個人のギャラリー展示やさまざまなイベントを開催しているが、特に興味深かった企画が「○○ナイト」。「雑多な企画を、雑談しながら、雑学とともに楽しむイベント」である。カフェのオーナーが個人的に興味のあるテーマのみでなく、カフェを訪れたお客さん主導の開催も多くある。本書では、著者にとって印象的だった○○ナイトとして、苔・金継ぎ・書道などまさに雑多なテーマが紹介されている。
 6次元は、カフェという特性から地理的な地域性はなく、また個人で運営されているという点で市民的コモンズとは言いづらい。しかし、○○ナイトについては、カフェの空間という共有資源を媒介にして、お客さん主導で空間の利用方法を決定し、企画を通して交流することでコミュニティが形成・強化されると考えられる。そして、空間の利用に注目すると、その利用は分野ごとである。このことから、6次元のような空間を提供する場づくりにおいて、市民的コモンズにおける地域性は分野・ジャンルと言い換えられるのではないか。
(Y. S)


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