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4884クリングルファーマ-銘柄・材料分析

銘柄基本情報

事業内容と開発パイプライン

組換えヒトHGFタンパク質を創薬シーズとして研究開発を行う創薬ベンチャー。開発パイプラインは臨床試験ステージまで進んでいるものが4件(脊髄損傷急性期、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALSという)、声帯瘢痕、急性腎障害)あります。
各パイプラインの進捗は以下の通りです。

クリングルファーマ株式会社HPより引用

直近の業績

株価は一度底を打ったように上昇基調に入っているが、現時点でも時価総額は44億程度で東証バイオ銘柄の中では時価総額最小。
業績も研究開発費が重く、赤字拡大の状況。売上は22年までは米クラリス社の原液供給売上と技術アクセスフィーがあったが、23年9月期は技術アクセスフィーのみとなっており、売上8割減予想と苦しい状況にあります。

材料

前提となる新薬開発の流れを以下に示します。

開発ステージは基礎研究〜薬事承認となり、その期間はトータルで10年以上、かつ承認までつながる可能性は7%程度と長く険しい道のりです。故に、バイオ銘柄が投資対象として注目を浴び始めるのはパイプラインがある程度進んだ第II相以降になることが多いです。

クリングルファーマに関して言えば、やはり直近で株価を牽引しているのは脊髄損傷急性期(第Ⅲ相実施中、23年後半終了予定)と声帯瘢痕(第Ⅲ相実施中、25年終了予定)のパイプラインです。

脊髄損傷急性期パイプラインについて

脊髄損傷急性期に関しては、特徴的な事項がいくつかあります。
①上市確度の高さ
2019年に厚生労働省より希少疾病用医薬品指定(オーファン指定)を取得できています。これによりすでに厚生労働省のお墨付きをもらっていることから、第Ⅲ相が問題なければ薬事承認につながる可能性はさらに高まります。

②サプライチェーンの確立
こちらのパイプラインはすでに丸石製薬と東邦HDと提携を結んでおり、販売網の不安要素は少ないです。すでに出口戦略を見据えて環境を整えている点も自信を感じます。

③製品化・現役供給まで自社で担うビジネスモデル
一般的には創薬ベンチャーは研究成果を導出し、残りの開発や販売は製薬会社に一任して契約一時金やマイルストーン、ロイヤルティを受け取るというビジネスモデルが多いです。実際クリングルファーマでもALSなどのパイプラインはこのモデルを想定しています。
ただし脊髄損傷急性期パイプラインに関しては自社で一貫して製造、販売(物流のみ②のサプライチェーンの力を借りる)を行おうとしており、利益率が頭一つ抜けて高い事業に育てていく想定をしています。

クリングルファーマ株式会社IR資料より引用

声帯瘢痕のパイプラインについて

①希少疾病用医薬品指定の取得意向
こちらも脊髄損傷急性期と同様、オーファン指定を取得することで上市確度を高める狙いです。

②製品化・現役供給まで自社で担うビジネスモデル
こちらも脊髄損傷急性期と同様に自社一貫製造販売のモデルで進めることを想定しており、上市できた暁には業績貢献余地が大きいです。

③他社に先行した取り組み
海外含めた主な競合品で第Ⅲ相に進めているのはクリングルファーマ社のみとなっている

その他

クリングルファーマは希少性の高い難治性疾患に注力しており、故に市場規模は大きくなくとも競合が少なく、営業活動等の費用はかからないというメリットがあります。一方で希少性が高いということはそれだけ需要も小さく市場規模が小さくなりやすいとも言えます。
実際の患者数や市場規模は以下のように見込まれています。

クリングルファーマ株式会社IR資料より引用

感想

バイオ銘柄は初心者手出し無用、と一般的に言われています。その理由は「臨床試験の成功失敗一つで天国にも地獄にもなるというハイリスクハイリターンである」「赤字企業が多く資金調達にワラントを実施する→株式価値希薄化による株価暴落が起こりやすい」などの要素があるからだと思っています。
また、赤字が続けば株価も段々と下げていくことは自然です。
以上からバイオ銘柄特有のリスクが一定数あるのは明らかです。一方で、開発パイプラインについては、調べれば調べるほど状況が見えてくる部分があるので、リサーチを武器に銘柄に挑んでも良いかな、と思い始めました(もしかしてこれは危ないやつ?)。

また、バイオ銘柄に投資するかは別として、人の健康、幸せにダイレクトに貢献する事業ですから企業に頑張ってもらいたいなあ、と思います。

2023/2/13追記

2/10(金)に決算発表あったが、想定内赤字でpts変化なし。13日(月)に前日終値付近からs高付近まで上昇
→想定内決算で、バイオ銘柄であるが無風だった(本来はバイオ銘柄は決算は赤字が基本なので跨ぎたくない)、かつ今後の材料に向けて買いが殺到した?

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