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日本機械学会先端センサ・アクチュエータ・ ネットワーク に関する研究分科会(2022年12月12日)企画

はじめに

名古屋大学の大岡昌博先生から、日本機械学会の分科会を立ち上げて、インフォモーション学関連の研究室を見学し、インフォモーション学を世に広める一助にしたいとのお話があり、幹事をお引き受けした。

分科会は期間3年で、3年ごとに新設して続いている。
先端アクチュエータ・システムの設計と応用に関する研究分科会(2015年4月~2018年3月)、
先端センサ・アクチュエータ・システムの設計と応用に関する研究分科会(2018年4月~2021年3月)、
先端センサ・アクチュエータ・ネットワークに関する研究分科会(2021年4月~2024年3月)で、今回は、この研究会の2年目第2回となる。
本分科会も、例に漏れずリモート会議オンリーとなり、本来の設立目的である「研究室訪問」が行えない状況である。
今回もオンライン開催となった
出席者は17名

プログラム

■令和4年度第2回分科会■
日時:令和4年12月12日(月)15:30-18:00

15:30-16:30ヒトの生体感覚システムを利用した感覚提示技術 

小村啓先生(九工大)
卓球が趣味で、卓球をしている時に「運動センスとは何か」と気づき、
「後天的に運動センスは付与できるのではないか」と考え、研究が動機付けられた。
(感想:科研費申請書に「気づき」の項目がある効果で、最近の先生方はみなさん、目標を定めて研究を進めていらっしゃる印象)

研究の筋道は、心理学からはじめて機序解明の数理モデルの確立、そしてセンスの制御技術確立へと進めていく予定。

1)運動錯覚の研究

運動が筋紡錘を発火させ、それが脳に伝わる。
筋紡錘に振動刺激を与えると、運動したと脳が錯覚する。

実は、運動錯覚は医療分野で利用されている。
① 手首固定時に、運動錯覚を与えて脳の運動野の萎縮を防ぐ
② 感覚のない義手を動かした時、義手の動きを感じることにより義手の操作性が向上する

角度、各速度を測定した例がない
錯覚量の測定は、右手を振動刺激し、右手の曲げ推定角を、左手を曲げて示してもらう方法による
筋紡錘に正弦波振動を与え、正弦波の周波数および振幅と錯覚量の関係を測定した
周波数は低く、振幅は大きい方が錯覚量が大きくなる

測定結果をもとに、筋紡錘のモデルを立てた
① 弦を入力、ばねの長さを出力とする弦、ばね、ダンパモデル
② 個人差の原因は、腱の共振周波数と判明
腱の共振周波数は、インパルス応答で同定

視覚との重畳効果の解明
開眼視すると錯覚量が減少する。
手の動きを模した腕を映しても、自分の手と認識しない
→5分間、実際に腕に刺激を行い、刺激の映像と連動させた慣らし運転を行うと、うまくだますことができた

2)乗り心地を考慮した制御技術

自動車の乗り心地は、加速度とjerk(3秒分)により決まる評価式がある
数値は0と4の間で、数値が小さいほど乗り心地が良い
ブレーキペダルの初期速度と制動距離から乗り心地の最適軌道を設計する手法を開発した

3)触覚に、ゲシュタルト崩壊はあるのか?

ゲシュタルト崩壊は、注視すると形が崩れてくる現象
視覚と聴覚にはあるが、触覚にはあるのか?
ベルベット感覚について調査した
ベルベット感覚は、近接、閉合、類同、共通運命が備わっている
点図ディスプレイを用いて、掌の点弁別圏(8mm)との関連性を発見
脳領域の活動調査により、本来のベルベットイルージョン(平行線)は、脳領域が変化するが、点図では変化しないことが判明)→感性の変化と関係あり?

さまざまなゲシュタルト崩壊

質問:卓球のセンスは、ボールタッチだけではなく、風圧や音、服のすれなどさまざまな要因が統合されて生まれるのではないか?

16:30-17:30  空気圧ソフトアクチュエータを用いた可変剛性機構の応用

八瀬快人先生 (近畿大学)
香川大学佐々木大輔研究室で補助具の研究。近畿大学で原田孝研究室

1)体幹姿勢矯正用可変剛性空気圧アクチュエータ

加齢による後湾症、円背は、圧迫骨折、呼吸低下、移動能力低下を引き起こす
現在の装着具であるギブスは、装着し続けると圧迫されて良くない

空気圧アクチュエータと複数の樹脂製ブロックの組み合わせで、素骨の湾曲に馴染み、かつ背骨を矯正する空気圧矯正装置を開発した
空気圧アクチュエータはモデル化が難しいが、垂直力と水平力に分離してモデル化に成功した

さらに、回旋動作をプラスする研究を進めている
回旋トルクは2~4Nm、周波数は2.5Hz
ベアリングとベローズを組み合わせたユニット2個セットで回旋を実現
ベローズアクチュエータのモデル化も、先ほど同様の手法で成功した
現在、歩行リズムを検出し、リズムに合わせて回旋動作を組み入れる段階

2)デジタル・ツインのためのソフトブイ

クレーン船のデジタルツインを構築し、クレーン船近海のブイから波のデータ(周期、波高、スペクトル)を得て、デジタルツインで再現、コントローラで制御可能か不能かを判断し、作業するか中止かを判断するシステムを構築中
ブイを、可搬性の高いシート状の可変剛性ソフトブイに変更することを検討中

おわりに

新進気鋭の先生お二人の研究内容を伺うことができた。
早くリアルの研究室訪問が復活するといいな。
まさか、遠隔のままメタバース見学の時代に突入することになる?



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