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ロボティクス・メカトロニクス講演会2022シンポジウム『 “いいかげん”を科学して未来を創るソフトロボット学3』

はじめに

今回のROBOMECH2022参加の目的の一つは、「ソフトロボット学」の進捗状況を聴講すること。5時間の長丁場だが、気合いを入れて会場入りした。

科研費新学術領域「ソフトロボット学」のホームページはこちら

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ソフトロボットの研究は世界中で開発競争が行われており、こんな研究も

プログラム

"いいかげん”を科学して未来を創るソフトロボット学3

主催:科研費新学術領域研究「ソフトロボット学」
共催:日本ロボット学会ソフトロボティクス研究専門委員会
コーディネータ:望山 洋(筑波大学)
概要
やわらかい電子回路や機械、やわらかい材料、やわらかな情報処理など、“やわらかさ”に関連した色々な研究をうまく結び付けて、新しいロボットを目指していく「ソフトロボット学」(通称:ソフロボ)が,世界中でとても流行っています。
この学問の最大のポイントは、異なる分野の専門家が集まり,協働する“異分野融合”によって、これまでのロボットにはなかった融通・適応・好い加減さ,といった新しい価値を作り出していくことです。
このシンポジウムでは,ふだんはロボティクスと異なる分野で“やわらかさ”の研究に突き進んでいる研究者を交えながら、ソフトロボット学のめざす“いいかがんさ”の科学を、やわらかく解説します。また、若手ソフロボ研究者にも,未来のやわらかいロボットを大いに語ってもらいます。
ロボットの専門家でない方の参加も大歓迎です。一昨年からの引き続き第3弾です。
参加費:無料
プログラム

13:00~13:05 趣旨説明
13:05~13:20 【ソフロボそもそも講演】
「いいかげんなロボット:ソフトロボットが創るしなやかな未来」
鈴森 康一(東京工業大学、ソフロボ新学術領域代表)
13:20~14:05 【異分野チュートリアル講演1】
「ソフトロボットの手綱を求めて:制御理論からの挑戦」
石川将人(大阪大学)
14:05~14:50 【異分野チュートリアル講演2】
「ソフトロボティクスの視点から紐解く動物解剖学の今と未来」
郡司芽久(東洋大学)
(10分休憩)
15:00~15:30 【ソフロボ若手未来を語る講演1】
「動物の好い加減な振る舞いから切り拓くやわらかいロボット」
福原 洸(東北大学)
15:30~16:00 【ソフロボ若手未来を語る講演2】
「分子ロボット特有の通信システムの解析」
小塚 太資(慶應義塾大学)
16:00~16:30 【ソフロボ若手未来を語る講演3】
「人に寄り添うソフトロボットのインタラクションデザイン」
ソン ヨンア(法政大学)
(10分休憩)
16:40~17:00 講演者によるパネルディスカッション+Q&A講演内容

13:05~13:20「いいかげんなロボット:ソフトロボットが創るしなやかな未来」

鈴森 康一(東京工業大学、ソフロボ新学術領域代表)
鈴森康一領域代表による、ソフトロボット学の概念説明
従来のロボット:固い、精密な制御、要素を分解して各要素の干渉を避ける
ソフトロボット:柔らかい、良い加減の制御、全体を融合して取り扱う

ソフトロボットの考え方が、生物に近く、環境に適用し、制御量が少なく、動きが融合する

(矢野の感想:これで肉体は生物を模倣できた。あとはセンサと知能を統合する形にソフトロボット学の哲学を拡張すればいいな)


13:20~14:05「ソフトロボットの手綱を求めて:制御理論からの挑戦」

石川将人(大阪大学)

(矢野の感想)
産総研の荒井裕彦先生が、「非駆動自由度」を提唱し、「アンダーアクチュエーテッドロボット」として世界中の研究者が取り組んだ。
荒井裕彦先生は、「学問的にはおもしろかったが、自由度とアクチュエータ数は同じ方が制御が簡単に決まっていて、実用的には失敗だった」と反省しておられたが、ソフトロボットの概念の登場で、いよいよ出番が回ってきた感があり、感慨深い

14:05~14:50「ソフトロボティクスの視点から紐解く動物解剖学の今と未来」

郡司芽久(東洋大学)

キリンの研究で超有名な先生。最初にキリンの解剖の話をされたあと、解剖学の見地から設計したダチョウの首ロボットや四脚馬ロボット設計の話があった。
解剖学では、動物の肩関節は固定ではなく、関節中心が円弧状に回転する(肩をぐりぐりする感じ?)この機構を取り入れるとスムーズな歩行が実現した!

(矢野の感想:鈴森康一領域長も、人体模型に空気圧人工筋を組み合わせた時、股関節は転がって可動範囲を広げているとおっしゃっていた)

15:00~15:30「動物の好い加減な振る舞いから切り拓くやわらかいロボット」

福原 洸(東北大学)

郡司先生の研究とかぶるが、ソフトロボット学の哲学「全を制御する」を地で行く研究

(矢野の感想:書籍「量子力学で生物の謎を解く」では、「生物はリズムにより常温で量子効果を利用可能としている」と述べている。
まさしく、「リズム」を活用してロボットの全体を制御する研究)

15:30~16:00「分子ロボット特有の通信システムの解析」

小塚 太資(慶應義塾大学)

(矢野の感想)NHK「人体」で、生体は情報伝達分子を血流に送り込んで情報交換している話が出てくるが、本発表は、同じことを分子ロボットで実現するための拡散モデルに関する研究。

16:00~16:30「人に寄り添うソフトロボットのインタラクションデザイン」

ソン ヨンア(法政大学)

ソン先生の口から「ホイポイカプセルは、SFプロトタイピングを用いて考えました」と発せられた時、「おおっ」と叫びそうになった。講演終了後、すぐソン先生に、SFプロトタイピングの講演をお願いできないか伺った。
「私はSFプロトタイピングの専門家ではないので、専門家を紹介できる」とのお返事だった。

その後、日本機械学会技術ロードマップ委員長の山崎先生が所属する日立でも「SFプロトタイピング」の普及に尽力されている方がいることが判明し、セミナー講師の一人目は、その方に決まった。

(矢野の感想)
ホイポイカプセルを作る発想と、作ってしまうパワーがすごい先生。
ホイポイカプセルの普及活動も積極的にされておられる。

16:40~17:00 講演者によるパネルディスカッション+Q&A

(矢野の感想)ソフトロボットのその先は、当然液体と気体の制御だろう。宇宙空間に超音波の膜を作成し、膜内に気体を閉じ込められたりするといいな

おわりに

私の気持ちは、当日つぶやいたとおりです。
「ソフトロボット学」は、2022年度で終了し、鈴森康一先生は、現在「ムーンショット目標3」に取りくんでおられます。

ソフトロボット学は、研究内容もそうですが、その理念が素晴らしく、明るい未来社会構築に欠かせない考え方だと信じています

ソフトロボット学の動向は、引き続きウォッチしていくつもりです

(おまけ)
日本ロボット学会2022より

ROBOMECH2020の発表動画


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