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お遊び

少し楽しそうなことをされていたので、ひっそりと参加をさせて頂きます。
シロクマ文芸部・小牧幸助様のご企画「雨を聴く」
#シロクマ文芸部

「雨を聴く」

雨を聴いてどうする。

昔、誰かに言われた。
雨音が好きで、窓を開けて、しとしとと降る雨に耳を澄ませて音に聞き入るのだ。何をする訳でも、何がしたい訳でもなく、感傷に浸る訳でもない。ただ、雨の音が好きなのだ。
「…どういうことだよ。」
「そのまんまの意味だよ。」
「出ていくってこと?」
「当たり前だ。」
どこからともなく声が聴こえる。

「いつから決めてた?」
「ここに来る時には決めていたよ。」
どちらも怒る訳でも、責める訳でもない声色だ。悲しさや諦めといった感情も伺えない。ただ耳に入ると、どことなく緊張感を覚える。
「じゃこれからどうするの?」
「またどこかで、ふらっと世話になるよ。」
「宛があるんだ、元から。」
「いや、無いよ。でも予備はいくつかある。」
予備と呼ばれた場所は、どこなのだろう?そんなことを考えていると、雨が止んだ。
「じゃぁね、飼い主さん。」
 一匹の猫が、通り過ぎた。黒い毛並みが美しい、でもどこかまばらな長さを持つ猫。
「浮気者…。おや、お前は予備が無い組か?」

雨を聴いて、どうするの?
普段聴こえない音が聞こえるんだよ。

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