大統領と葬儀屋

「やあ、また会ったね。黒百合さん」
聞き覚えのある掠れた声が聞こえて振り返ると
笑顔で立っているカーテナ・エドワーズの姿が…
僕ら葬儀屋に無茶苦茶な依頼をしてきた人だ。

この人のおかげで怖いものは無くなったようなものだし観音寺さんも戦う力に目覚めて強くなったし
無茶苦茶で死にかけたこと以外は良かったと思う。
大統領なだけあって報酬も大量に振り込んでくれたから悪い人ではないはずなんだけど
僕はちょっとこの人の思考が読めなくて怖いな。

黒百合「僕はこれで…」
カーテナ「逃げるのかい?」
黒百合「葬儀屋は依頼が多くて忙しいんですよ」
カーテナ「それなら手伝いに行くよ」

カーテナ「"給料は受け取らないで"」

彼の圧に負けて結局、葬儀屋まで連れ帰ってきた。
僕の後ろに彼が立っている事に気づいたスネイルが
お茶を吹き出して彼を凝視していた。

スネイル「なんや、また来たんかアンタ」
カーテナ「あの時はお世話になりましたね」
スネイル「俺なぁ、死にかけたんやで?」
カーテナ「まあ、元から死んでますし」
スネイル「二度死にや!!!」

観音寺さんはいつも葬儀屋のメンバーがいる時は
外に出てくるけど彼を怖がっているのか
部屋から出てこなくて天王寺さんも居なかった。
琥珀乃さんはいつもと変わらず楽しそうにしてる

怒り狂うスネイルの顔を手で強引に退けて
彼は僕の作業机に置いてあった依頼の紙を手に取り
「こんな依頼は子供にやらせていいのかい?」
と、とびっきりの笑顔で僕に呟いてきた。

黒百合「その依頼が気になるんですか」
カーテナ「そうだね。葬儀屋らしくないけど」
黒百合「葬儀以外の仕事も受け取りますからね」
カーテナ「面白いね。そういうところ」

琥珀乃さんや天王寺くんのような幼い子供には
刺激の強い内容で隠していたけど彼は紙を広げながら子供達に伝えようとしていたから慌てて止めた。
ならべく面倒事にしたくなかったけど…
周りを巻き込まないように僕と彼の2人でこの刺激的な依頼をするように彼と説得した。

黒百合「……どうするんですか」
カーテナ「面白そうじゃないか、是非やろうよ」
黒百合「お気に召したのならいいですけど…」

依頼は■人依頼で旦那を■してほしいという内容
葬儀屋は人の最後を笑顔で見送る仕事なのに
真逆の不幸にしてしまう依頼を受け取るとは……
よほど旦那を恨んでいたのだろうか。この人は。

黒百合「旦那さん、悪い人では無さそうですし流石に手にかけるのはどうなんでしょうかね」

カーテナ「ええ、まあ罪人だろうがなんだろうが関係ないよね」

黒百合「ちょっと!!!カーテナさん!!」

依頼の内容を読んでいて彼が消えたのに気づかなかった!旦那さんも悪気があるわけでは…
なんて言おうとしてカーテナ大統領の方を向いたら彼は旦那の首を持っていた。

黒百合「別世界にいるくらいですし瞬間移動や察知能力はありますからね…そうですよね…僕のような能力のない普通の人間からただの幽霊になった者は自力で歩いて探さないとダメですから…はぁ…」

カーテナ「何が言いたいのか分からないけど
意外と簡単な仕事もあるんだね。葬儀依頼は難しそうだけど僕もこれなら定期的に手伝えるかもね〜」

黒百合「も、もう…来ないでください…」

遺体はそのままで依頼主にご機嫌よくカーテナ大統領が電話をしている。
人の話を聞かない彼に呆れて僕は依頼主からの金銭は受け取らずに一人で葬儀屋に帰ってきた。

スネイル「帰ってきたんやな。大丈夫なんか?」
黒百合「ええ、まあ…」
コダマ「顔色悪いよ!休もう休もう?」
黒百合「顔色悪いのは元からだよ…」

隠しても無駄だと感じて葬儀屋のメンバー達に
今日起きた事や依頼内容を伝えたけど案外みんな普通の反応をしていて少し怖かったよ…
異常と言われ育ってきた僕が酷いと感じるほどだから彼には本当に人の心は無いのかもしれないね。
今度から葬儀屋を出禁にしようだなんた考えてはいるけど力では勝てそうにないから出禁は無理かな…

しばらくの間あの出来事が頭をよぎって
ご飯が喉を通らなかった。
そしてジュースを口に運ぼうとしてコップを持ったがズボンに直接かけるように零していたようだった

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