あの人は今、、、(沖縄のおもひで③)
昔よく一緒に沖縄に行ってた友人は、
高い的中率を持った台風女だった。
飛行機の遅延は毎度のことで
強風体験や穏やかな海が大荒れしている姿など、おかげさまで普段見れない台風の沖縄を味わせてもらった。
「明日は大丈夫だろうけど、明後日は飛行機飛ばないかもしれないねー」
明日か明後日には台風が沖縄に上陸するだろう予報の夜、平日大雨にもかかわらず、古酒で有名な居酒屋の一階カウンターはとても賑わっていて
店員さんがお客さんに向かって言った。
そこから「どこから来たのー?」なんてお互い身の上話で、お店の人やお客さんたちと楽しく会話が始まったのだが、
友人が大人しく、隣に座る一人で来ていた男性の話をうんうん親身に聞いている。
気になって男性の話に交ぜてもらうと
「ここにいる誰よりもぼくは沖縄が好きで、この店にはいつも最後まで居てるんだ」と、
ぼくはどれだけだれよりも沖縄とこの居酒屋が好きかという話を、友人は永遠と聞かされていたのだった。
東京で働く男性は
急に休みが取れたから会社には何も言わず
大好きな沖縄に衝動的に来てしまったようで
明日の飛行機で帰って明後日の仕事に行かなければ「クビになる、」と不安も愚痴っていた。
聞いてた私たちもお客さんも
「明日は飛ぶよー、明後日の私たちが帰れないかもねー」なんて同情して励ましたが、
翌日、台風は無情にも勢力を強め
那覇空港発着便全便欠航となった。
大雨で人もまばらな国際通り
レンタカーで走っていると
ビニール傘をさした見覚えのある男性が、、、
昨日のあの人だ!
クラクションを鳴らして友人と笑顔で手を振ったが、男性はひきつった顔で会釈をしただけだった。
「あの人、クビやね。。。」
沖縄への熱い思いが台風に届いて
東京に帰れなかった男性、あの人はいま・・・。
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