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カナダでレイオフになった。だからこそ学べたこと

先日(2024年)、カナダで3年間ほどソフトウェアエンジニアとして働いた会社でレイオフになった。確かに「レイオフ/Layoff」と聞くと、怖いイメージがあり、避けるに越したことはない。ただ僕はこのレイオフを通じて多くを学べた、良い機会になったと思ってる。

そこで、この経験を通して感じたことや準備しておいて良かったこと、そしてこうしておけばよかったことをメモにまとめた。ソフトウェアエンジニアに則した内容になるかもしれないが、このメモが少しでも誰かの役に立てば嬉しい。

💡 TL;DR

先に簡単に要点を以下にまとめた:

  • ビザがとにかく重要:日本国外おいてはまずこれが一番大事。とりあえず安定したビザや永住権さえあれば、なんとかなることが多い。

  • レイオフは誰にでも起こり得る:レイオフは誰にでも、いつでも起こり得るため、最終的にはどうしても運ゲーになる。回避しようにも限界がある。

  • だからこそ自己成長を目指す:なのでレイオフを回避しようとするより、日々キャリアアップを目指し、自己成長に励む姿勢が結果的にレイオフ対策になるのでは、と感じた。

  • 定期的に転職の準備をしておく:仕事がある間も、定期的に転職活動の準備をすることがとても重要。これはいつでも逃げられるようにする、というよりはさらなる可能性への意識と客観性を磨く、という方向性が近い。

  • 日々の業務を記録する:関連して自分の成果物や業務内容を記録し、規定の範囲内で個人のスペースに保存しておくとことが役に立つ。

  • 人とのつながりが重要:普段から個人のことを話せる人がいたり、一緒に励む仲間がいたことで、いろいろな機会に恵まれ、また精神的にも大きく助かる。レイオフに限らず人との繋がりは大切だと再確認した。



以下から詳細。

補足: レイオフ/Layoffとは?

めちゃざっくりいうと2種類の解雇がある。レイオフと聞くと「クビだ!」のイメージがあるかもだけど、そっちはファイア(Fire)の方を指す

レイオフ(Layoff)
会社都合で解雇される場合を指さす。
主に会社の経済状況や組織再編成などの理由で行われる。
従業員の能力やパフォーマンスには関係ない。
なので会社や国からの補助が多い。

ファイア(Fire)
従業員都合で解雇される場合を指す。
主に従業員の能力不足や不適切な行動など、個人的な理由で行れる。
なので会社や国からの補助があまりない。

📣 どんな感じでレイオフされた?

レイオフに関しては本当に一瞬だった。ある朝起きると、定例会議よりも20分ほど早くSlackで偉い人からDMが来て、「申し訳ないが、重要な会議があるのでぜひ参加してほしい…」という通知があった。参加者リストを見ると明らかにの共通性がなかったので、この時点で少し察し。そして、実際に会議が始まると、トップのPM(Product Manager)とHR(人事)がいたので「ついにこの時が来たんだな」とわかった🥲 理由としては、会社のメインの商品が思ったより売れず、経費削減のために大規模なレイオフを行うとううもの。詳細はあとでメールで伝えるという感じでミーティングが15分くらいで終了。一瞬だった。

衝撃だったのが、レイオフのミーティングがあってから1時間後、突然PCが強制再起動されもうロックアウトされたこと。その後、GitHub、スラックなどのアカウントが次々にdeactivateされ、半日もしないうちに会社に紐づいたすべてのアカウントが使えなくなっていた。噂に聞いていたけど、本当にその日からいきなり、そして完全に締め出されるんだなと痛感した。なのでその後からは個人メールでHRと業務手続きをやりとりすることになる。同じチームとのお別れをいう機会もない。

後からこっち育ちの友達にそのことを伝えても「残念ながら、こっちでは普通の対応やで😏」と普通のリアクションだった。やっぱそういう世界なんだと改めて感じた。

幸いにも僕自身はその会社で2年半以上も働いていて、永住権を取得していた。なんなら、そろそろ他の会社に移りたいと転職を少しずつ始めていたので、むしろちょうど良い機会だった。ただ実際にはしばらくあたふたしてた。人間は未経験だったり、急に環境が変わるとやっぱりパニックになるんだなと学んだ。

✍️ レイオフ後に自分がやったこと

レイオフされた後、僕が実際に行ったことを以下にまとめた。基本的には事務手続きが中心になる。

会社の書類にサイン:

  • 会社からレイオフ関係の同意書がすぐに送られた。

  • この書類には退職金(severance)がどれくらいもらえるか、福利厚生(Benefits)がいつまで続くか、支給品や備品の処理、同意書の期限などが記載されていた。

  • 同意書自体はサインの期限が一週間ほどあったと思うが、内容をよく読んで問題がないかを確かめるため、僕は期限ギリギリに提出した。

会社の年金や株の処理:

  • 会社の年金や株を解約して自分の個人投資に移す手続きをした。これは個々のケースによって異なるので、自分の入っているプランに応じた対応が必要。

  • 僕の場合はストックオプションはなかったが、会社に紐づいたRRSP(Group RRSP、いわゆるiDeCoみたいなやつ)口座があり、そこに投資をしていた。

  • なので最後の投資を終えてから個人のRRSP口座を作成し、そちらに全部移してからG-RRSPをクローズする手続きを行った。これには期限とかはなかったので1ヶ月後にWealth Simpleを使って処理した。

会社から支給された物品処理:

  • 会社から支給されたパソコンやモニターなどを返却する手続きを行った。

  • 返却不要な備品に関しては、売却しても良いか確認。

  • 返却物にも期限があったため(会社が受け取ってから最終的なseveranceを決定するため)、これも早めに対応した。

未申請の支払い処理:

  • 会社負担にできる支払いで、未申請のものがあったのでそれをすべて処理した。

  • 例えば技術書なども勉強代として会社がある程度負担してくれる制度があったので、そういったものも全部申請した。

  • この申請も締切がシビアだったため、すぐに対応した。

会社のメルアドで登録したアカウントの把握

  • 会社のメルアドで登録しているサイトやサービスを把握する必要があった。

  • たとえばBenefit に関する保険の申請はレイオフ後も2~3ヶ月有効なため、サービスを使い続ける必要がある。会社のアドレスで登録している場合、それが使えなくなるので、個人のものに変更する必要あり。

  • 何が会社専用のサービスで、何が退職後も使い続けるサービスなのか、初めての国外就職ではわかりにくい。なので会社のメルアドで登録しているサービスが退職後も必要かどうかを確認し、必要であれば個人のメルアドに変更する対応が重要だと思った。これは普段からでも意識してやっておくと役立つかもしれない。

失業手当の手続き:

  • カナダにも失業対策(保険 Employment Insurance / EI)がある。ありがたい。そこで政府に対してEIの申請を行った。

  • ただこれには申込み期限があるので注意が必要。例:レイオフされてから1ヶ月以内に申請しないといけない

  • EIの申請自体はオンラインですぐにできるが、レイオフされた日や最終的な給料などを入力する必要があるため、会社と確認した。

  • また申請にはRecord of Employment(ROE)という正式な雇用記録の書類が必要である。これは基本的に会社が直接カナダ政府に提出してくれるが、会社が従業員に直接発行する場合もあるので、これも要確認。

(ビザ):

  • もしビザサポートを受けていたり、長期的なオープンのビザがない場合だと、次のワークパーミットやカナダに残れるビザをどう取得するかを、最優先で考える必要がある。

以上の内容をレイオフされた後でも何を、いつまでにすべきかを、メールなどのしっかり記録が残る形でHRや会計の人とやりとりした。レイオフされた後だと引け目を感じたり、嫌になったり、遠慮して有耶無耶にする…となりがちかもしれない。しかし、むしろレイオフは会社が悪いのであって、自分を守るため遠慮せずガンガン尋ねることが重要。むしろ会社が引け目を感じる側なので、大変だが色々お願いできるチャンスなのだ。

✅ レイオフでも大丈夫だったこと、恩恵

次にレイオフされたても思ったより大丈夫だったこと、または逆に良かったことをあげる。

ビザ:

  • 永住権(PR)を持っていたので、次の仕事をすぐに探さないといけない心配がなかった。

  • カナダのキャリアにおいて、永住権は非常に重要だと思った。カナダに永住する気がなくても、PRは仕事の柔軟性や安定性に大きな影響があると改めて感じた。

職探しへの負担:

  • 職探しなど次への行動に対するメンタル的な負担はあまりなかった。

  • というのもレイオフ前からすでに部分的に転職活動を始めていたため、レジュメやLinkedInの更新、応募など、就活のための準備が整っていたからだ。

  • そのためゼロから仕事探しの準備をする負担がなく、すでにしていた転職活動に時間が追加された、という感じだったので、レイオフに対する負担を最小限に抑えることができた。もちろんビザの心配がない、というのも大きな理由だと思う。

  • このことから普段から軽くでいいので転職活動を定期的にしておくことの重要性を感じた。レイオフされても、次へのアクションがすごく軽くなる。

  • また定期的にに転職活動をしておくことは、市場の状況や自分の価値を客観的に知る機会にもなり、キャリア全体にプラスの影響を与える。さらに自分のスキルセットが市場でどのように評価されるかを把握しやすくなる、など恩恵が大きい。

お金:

  • 確かに仕事がないとお金の心配があげられると思う。が、わりと半年〜年くらいはなんとかなることがわかった。

  • まずレイオフの場合はSeverance(退職手当、手切れ金のようなもの)が会社から支給される。これは会社都合の解雇のため会社が責任ある程度もつ必要があるからだ。会社によるが、例えばフルタイムの給料の1-2ヶ月分がプラスで支給される。ありがたい

  • 有給が消化されていない場合、その分もお金に変換される。

  • さらにSeveranceの後に、国からの失業保険(EI)も受け取ることができる。EIは上限があるが、給料にも比例する。雇用条件によるが最大で毎週CAD650くらい(約月CAD2.5K) を半年以上もらえることもある。

  • そういった意味でも北米で大きな給与を得やすいソフトウェアエンジニアは恩恵が大きいと感じた。

会社からの就活サポート:

  • これは予想外だったが、やはりレイオフは会社責任であるため、次の就活に関するサポートに対して前向きに協力してくれる。

  • おそらく会社としても自社の評判を下げたくないし、レイオフした従業員が生活に困るより、すぐに次の仕事を見つけてくれたほうが責任を感じなくなるのかもしれない。

  • そのため、良いレジュメを書くにはどうしたらいいか相談に乗ってくれたり、Reference Letterを書いてくれた。転職活動をすでにしていた身としては思わぬ恩恵だった。注意点として、これらは必ずしも会社から自動的に提供されるものではない。自分の次の活動に何がプラスになるか考え、積極的に会社にお願いしてみるのが重要だと思う。

  • 結果的に僕はReference LetterやLinkedInのRecommendationをいくつか書いてもらった。

  • また、仕事があるときは転職活動をしていることを勤務している会社にバレないようにコソコソする必要があるが、レイオフされたことで開き直って「仕事探し中、転職活動中です」と堂々とアピールできた。

  • 残っている同僚やボスが「この人、マジで優秀だった」とLinkedInでポストやコメントなどのfollow upをくれたりした。これは本当にありがたかった。

レイオフや転職が当たり前という環境

  • カナダではレイオフと転職が当たり前の文化がある。

  • 周りも「Layoff?まじかー!実は自分もなったことあるねん。Sorry to hear that🥲」と気をかけてくれた。レイオフ経験の人も意外とたくさんいるので精神的にも比較的楽である。クビにされたお前に問題があったんちゃう?という風潮はない。

  • また1年〜5年したら会社を移るのが普通の文化のおかげで、2年以上働いてからレイオフされたので「ちょうど仕事を変えるいい機会か」と思えた。

  • カナダでは就職は絶対に年齢で判断されず、スキルさえあれば再就職しやすい文化がある。確かにそのためのスキルを身に着けることは大変かもしれないが、逆に言えばキャリアアップのために自分を磨くことが、レイオフ対策にも繋がると思った。

周りのありがみ

  • さらに本当に助かったのは、レイオフをすぐに報告したり話せる相手が周りにいたことである。

  • いくらビザやお金的に大丈夫とはいっても、人間は急な環境の変化に戸惑うものである。気にかけてくれたり、仕事を紹介してくれる友人や同僚がいることは、本当に嬉しく、助けになると再確認した。

  • やはり普段から話せる、相談できる空間がある、コミュニティがあるというのは非常に助けになると感じた。

🧠 レイオフの注意点、気付いた改善点

レイオフされたことで、これは注意したほうが良かったな、気をつけたほうがいいな、などの改善点を上げていく。

レイオフの"一時"解雇 に期待しない

  • 冒頭でlayoffとfireの違いについて述べたけど、本来のレイオフは一時解雇を意味を有する。調べても"temporary suspension"と書かれていることが多い。

  • ただこれはかなり会社や状況による。僕が働いてた会社ではレイオフされて戻った人は見たことがない。仮に戻れるとなっても100%確定ではない。そもそもコスト削減でレイオフしたので、業績が回復しなければ戻れる可能性がなくなったり、戻ってもまたすぐレイオフになる可能性だってある。

  • あるかわからない数ヶ月や半年後に期待するより、自分で転職活動してよりよい会社を探した方がはるかに効率的だし健全。

英語を使う機会が減る:

  • カナダの企業で働いていたので、レイオフされてしまうと圧倒的に英語を使う機会が減った。🥲

  • 業務において英語で読み書き、話す、聞くをなんだかんだで1日数時間フルコミットするわけで、それがなくなると英語を鍛える機会が大きく減る。

Benefitを失う:

  • レイオフされると会社のBenefit(福利厚生)が使えなくなる。カナダでは歯科や薬代はMSP(国民保険みたいなもの)でカバーされず、基本的には会社のBenefitでカバーする

  • 幸い、会社がレイオフ後1、2ヶ月くらいはbenefitを有効にしてくれたので助かったが、その後はしばらく歯医者とかは大きな出費になりそう🤑

自分のContributionや成果物の記録:

  • 自分が仕事で達成したことに対して、もっとノートを取っておけばよかった。

  • 僕は途中から面倒になってやめてしまったので、レイオフになったときに「前の会社で何をしていたっけな🤔」と思い出すのが大変だった。今後はもっとこまめにノートを取るべきだと感じた。

  • 週1回や月1回でも、自分の貢献を記録しておくと、次の転職活動に繋がりやすい。さらに普段からの給与交渉にも役立つ

  • 同様に自分の成果物や書いたコード、ドキュメントを許される範囲内で記録しておくべきだと思った。

  • レイオフされると本当に突然会社のパソコンや支給物が使えなくなる。例えば、自分が貢献していたGitHubのコードや作ったものにアクセスできなくなってしまう。残しておきたい大切なメモが会社のPCだけにあると、それを失うことになる。

お金の都度申請

  • 会社へのお金の申請を、あとからまとめてやればいいだろうと思って後回しにしていた。いざレイオフされるとそれらを慌ててやらないといけなかったので、普段からこまめにやるべきだったと感じている。

  • 例えば技術書のお金やマッサージ代は、会社(もしくは保険会社)がBenefitとして払ってくれる。そういう申請はどうしても後回しにしがち、もしくは未申請にしがちなので、気をつけたい。

  • 実際、いくつかの支払いはレシートや記録が見つからず申請できなかったと思う😇

😤 レイオフは本当運ゲー。しょうがない

最後にレイオフそのものについて感想を書きたい。

  • レイオフというものは、その人のスキルに関係なく、いつでも誰にでも起こり得るものである。レイオフは個人の責任ではない。

  • 確かに重要な立場にいるLeadやStaffポジションにいると切られる確率は減るかもしれないが、それでも切られるときは切られる。極端に言えば、コストカット目的でビジネス側は数字だけで判断し、給料が高い人を逆に切る可能性もある。何が理由できられるかはわからない。

  • 僕の会社では、以前も大規模なレイオフで丸ごと1つの部署がなくなった。A, Bの部署があったが、Aの部署がやっている内容を丸ごとアウトソーシングするという結論が出て、Aの人全員がレイオフされた。この中には非常に優秀な方も、会社の初期からいるベテランもいたが、それでもレイオフされた。Bの部署にいた僕は、Aに所属していた方々よりも全然経験が浅く、ビザサポートを頼まないといけない立場だった。たまたま「Bはまだ内製でやるで」という決定が下されたので僕はそのときレイオフを免れただけである。😶‍🌫️

  • またレイオフはいつ来るかも読めない。今回も過去も、業績がよく良くないとちらっと聞いてただけで、そこまで危機的な雰囲気を長期間に会社が出していたわけではない。近々レイオフや大きな対応をするぞ、という噂も報告も何も無かった。本当にある日突然アナウンスされるのだ。(もちろんここらへんは会社によりけりだとは思うが)


🍕まとめ

まとめ

以上、レイオフについてのメモを述べた。
冒頭に述べたように、安定したビザ、転職への意識、成果の記録、レイオフに対するマインド、そして周りとのつながりなどがとても重要だと思う。

結局はレイオフにならないようにする、というよりキャリアアップや自己成長に繋がる日々の積み重ねが、結果的にレイオフへの対策にもなるのだと今回のことで学んだ。

今後

前の会社ではMobile(iOS、Android)開発を中心にMid-Srレベルで取り組んでいた。せっかくの機会なので、今後はキャリアの幅を広げるためにBackendのポジションに挑戦しようと考え、勉強とインタビューの練習をしている。BackendはまだJrレベルだが、仕事と経験を積む機会を得たいと思っている。もちろん、Mobileのポジションにも良い縁があれば積極的に取り組んでいきたい。欲を言えば、前者が小規模だったので、次は中〜大規模開発に挑戦したいと思っている🔥

最後に

レイオフ後に相談に乗ってくれた友人や同僚、仲間に感謝の気持ちを伝えたい。手を差し伸べてくれたこと、本当に嬉しかった。北米ではレイオフは珍しくないと言われているが、実際に経験してみると、その背景や影響は人それぞれ異なることに気づいた。ショックを受ける人もいれば、全然平気な人もいる。だからこそ、今後は他の人がレイオフに遭った際に、僕も同じようにサポートを提供できたらと思っている。

その1つの形としてこのメモが、同じような状況に直面した誰かの役に立ち、次への一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。



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