いま父に会えたなら何を言う

父はスキルス胃がんで亡くなった。

「コーヒーが冷めないうちに」を始めて読んだとき、父は生きていた。

「コーヒーが冷めないうちに」Netflixで観たとき、父はもういなかった。

いま「この嘘がばれないうちに」を読んでいる。

もし、過去に戻って父に会えるならわたしは何を言う。

戻った＝父が死んだということがばれてしまうのかな。それも嫌だな。

何を言うかな。

顔見るだけでもいいな。

木の陰から見るように。

父が亡くなる二日前。母を休ませている間、思い出話をした。

父「父ちゃんとの思い出はなんだ？」

私「いっぱいありすぎるね。２人で富士山に登ったこととか、リーグ戦を観に来てくれたこととか。小さいときはよく川散歩したよね。自転車乗ってさ。山登りも行ったよねー。下山したときのアイス美味しかったよね。」

なんて話してたらさ、

父「お前が産まれてよかったな〜」

なんて言うわけですよ。

涙止まらないよね。お父さんの足を温めたりマッサージしながらそんな話してたんだ。

上３人の兄弟たちも交代で実家に行って父ちゃんとの時間をもってたけど
そんな素敵な時間をもてたこと。言われて一番うれしい言葉をもらえたこと。死んでも忘れない。

棺に一人ひとりお父さんに手紙入れようか。ってなったんだけど
わたしは書かなかった。
お父さんとこれまで何度も手紙のやり取りをしたり、２人で飲みにいった。
思い出話もできた。
わたしはいいかなって思って書かなかった。

でもやっぱり何も話さなくていいからお父さんに会いたいな。

会って握手でもしようかな。

すべすべで大きい手と。