【5人・30分・声劇台本】トレンチの子供

男3:女2

【演じる上での注意事項】

注釈:以下は、読まないでください。
 () 描写(読まないでください)
 [] セリフ読み方

【配役】

  • リア・・・15歳の少年。海の底にある海底神殿を見る事を夢に見る。両親はおらず1人。識字能力は無い。街にはリアを嫌うものもいた。

  • マリ・・・15歳の少女。リアの幼馴染で、本が好きで識字能力があり、おばあちゃんに習った古代文字も読める。

  • 長老・ビチャ・・・60代後半男性。トレンチの長老で、落ち着いた性格をしている。

  • マリの父親・マット・・・50代の男性。厳格で、昭和風の男性。

  • 地元のおばさん・カーラ・・・40代の女性。活発で、元気な女性。みんなのお母さん的な人。

【あらすじ】

海底神殿の町として栄えた町、トレンチはここ数十年パタリと人が来なくなっていた。リアは、観光業で人を呼ぶ為に、神殿にあると言われる宝を探す目的で幼馴染のマリと神殿に向かう。しかし、神殿に向かう中で見つけた秘密に愕然とする。果たして、リアは町を復活する事ができるのか!

【台本】

マリ「この町は、トレンチ。15年前までは、太古に作られた神殿を中心に観光業が栄えていた。神殿は、解明されていない事があり、壁に刻まれている古代文字が研究を困難にしていた。しかし、現在、その神殿は研究不可能になり、観光業もオトロえていた。これは、そんな町に住む少年リアと、その幼馴染の少女マリのお話」

リア「やべ!!!ばれた!!逃げるぞ!」
マット「こらぁあ!!帰ってこい!!リアぁぁあ!!!」
リア「へへーん!俺は風に乗って、逃げていくぜぇ!!」
マット「あ!!カーラ!!良いところに!!」
リア「はぁー?カーラのばばあなんて、どこに…うわぁっ!!」
カーラ「おい、だーれがばばあだってぇ?!こらっ!」
リア「いってぇー!殴るなよ!!」
カーラ「今度は何盗んだんだい!!!こらっ!」
リア「いってぇー!たんこぶ増えるだろ!!」
カーラ「あんたみたいなのは、たんこぶマシマシでいいのよ!」
マット「はぁ、はぁ、はぁ、カーラありがとよ」
カーラ「年取ったねぇー!なーに息切らしてんのよ、ネーレ」
マット「はぁ、はぁー…俺だって、はぁ、50なんだよ」
カーラ「あんた私より20個も下なのに、なーに言ってんの」
マット「まじかよ…魔女かっ」
カーラ「こらっ!」
マット「いってぇー!なんで俺も!」
リア「じゃーねー!!」
マット「あ!あいつ、いつの間に…」
カーラ「あははははは!まーたかい。いつも逃げられて」
マット「殴るからだろ!てか、たんこぶ出来てるし…」
カーラ「まぁまぁ、優しくしてやんな」
マット「いや、カーラ!!毎朝、何か取ってくんだぞ?」
カーラ「まぁ、あの子は親がいないんだから、その分あんたが親みたいなもんなのよ」
マット「そりゃ…マリも仲良くしてるけどさ…」
カーラ「そうそう。将来は、結婚してるかもね」
マット「やめてくれよ!マリは、もう十分ジュウブン一緒にいるよ」

(沈黙)

リア「マリー!!マリー!」
マリ「え、あ!リア!」
リア「はぁ、はぁ、はぁー…で?」
マリ「へ?」
リア「は?」
マリ「なに?」
リア「何してんの?」
マリ「なにって、本読んでただけだよ?リアは?」
リア「うん!もちろん!逃げてきた!」
マリ「また、パパが怒るよ…何盗んだの?」
リア「うん!今日はやかん!!てか、借りてるだけだし」
マリ「はいはい、使い終わったら、渡してね」
リア「もちろん!で、今日は何の本?」
マリ「理の本だよ。面白いけど読んでみる?」
リア「いいよ、いいよ、俺どーせ字とか読めないし」
マリ「勉強したら?リア、15歳でしょ?」
リア「うるせ…マリだって、15歳のくせに、ばばあみたいな本読んでるだけだろ」
マリ「あー!!そういう事言っちゃいけないんだぁー!!」
リア「はいはい、いいからいいから」
マリ「「はい」は1回!てか、リアはなんで「貸してください」って言えないの?」
リア「さぁ?誰も、そんな事教えてくれなかったからかな?
ほら、家族とかいねーし」
マリ「そんな事言ったって…」
リア「あー!もう!めんどくせ!俺はできる事だけで生きていく!」
マリ「だってぇ…」
リア「てか、神殿に行くのいつにする?」
マリ「うん、神殿って、あの海に沈んでるやつでしょ?」
リア「それ以外ないだろ。ド田舎すぎて、なにもないんだから」
マリ「うん、もう人が来なくなって10年以上って言ってたよね」
リア「そうそう!だからこそ、俺らが町を復活させるんだよ!
な?考えてみろ、神殿で宝でも見つけてみな?人がたーーくさん来るぞ!」
マリ「沢山って、何人?」
リア「んー、100人とか?」
マリ「それだけなの?」
リア「なら、マリは何人来ると思う?」
マリ「んー…そう言われると、、、1万人とか?」
リア「1万人って、何人?」
マリ「100人が、100回来たら1万人だよ?」
リア「まじか!!!なら、やっぱ、神殿行くしかないよ!それだけの人が来たら、この町だって、また有名になる!」
マリ「行くのはいいけど、どうやって行くの?」
リア「泳いで?」
マリ「待って待って、泳いで??無理だよ、神殿は海底にあるんだよ?」
リア「なんで?」
マリ「はぁー。海にはね、浮力フリョクっていうのがあって、体が浮いてくるの。そしたら、海底までは泳いで行っても届かない」
リア「そうなの!?」
マリ「うん、この物理の本に書いてあった」
リア「なんだよ、マリもさっき知ったばかりかよ」
マリ「で、どうするの?」
リア「待った。フリョクってやつには、どう勝てるの?」
マリ「んー、勝つというか、重さがあれば勝手に体は沈んでいくんじゃない?」
リア「お!それなら、すっごい重いものを体に巻き付けるのは?」
マリ「例えば?」
リア「んー…」
ビチャ「ほれほれ、なにを悩んでおるのじゃ?」
リア「いやー、それが重いものが欲しいんだよ」
マリ「うん……って!長老!?」
リア「うお!!じーちゃん!…なんだよ、急に」
ビチャ「ほっほっほ、なんか悪だくみしてそうな顔じゃの~?」
リア「いや!…そ、そ、そんな事~♪、ないよ~♪ねぇ?マリ」
マリ「あ、う、うん!別になんも考えてないよ?」
ビチャ「なら、あの神殿にいこうかなー?とかは、考えてないんじゃな?」
リア「え!なんで知ってんの!!」
マリ「あ、ちょっと!リア!」
リア「あ、やべ…」
ビチャ「ほっほっほ、言ってしもうたなぁ~?リア、海は進入禁止だと言ってるはずだぞ?」
リア「でも!でも!神殿に行けば!」
ビチャ「わかっておる。おヌシが海底神殿に行き、伝承デンショウの宝を探そうとしておるのじゃな?」
マリ「そうなの!でも、今、浮力をどうしようかって」
ビチャ「2人とも、あの海は人が亡くなってから、立ち入り禁止になっておる。ダメじゃ」
マリ「長老!私たち、もう今年で15歳なの!お願い!」
リア「そうだよ!人が死んだって、死体は見つからなかったんだろ?」
ビチャ「ダメじゃ。海に大人2人が行って、帰ってこなかった。それだけで、危ないという事はわかるな?」
リア「でも…」
ビチャ「まぁまぁ、町の事はわしら大人がどうにかするから、気にしなくてよい」
マリ「はい…」
ビチャ「そうそう、リアもそれでいいな?」
リア「嫌だね!!!俺は、何が何でも行くんだからな!!マリは、知らねーけど!」
マリ「私だって…そりゃ」
ビチャ「ほれほれ、リア?こんなマリをおヌシが危険にサラしてどうする?」
リア「うるせー!!知らねーんだよ!誰も俺を止められない!」
マリ「あ!待って!追わなきゃ!
じゃーね!…ちょっとー!!!リアーー!」
ビチャ「ほうほう、いってらっしゃい。」
カーラ「それで、2人はいきましたとさ」
ビチャ「おー、カーラ。いたのか」
カーラ「なーに、リアの大声に誘われてきただけさ」
ビチャ「あの2人にも、そろそろ事実を伝えないといけない」
カーラ「まさか、あの事実を?」
ビチャ「うむ、特にリアには辛いだろうがな」
カーラ「それでも、まだあの2人は死んだと決まったわけじゃ…」
ビチャ「やめんか。その希望を持たせるのは、コクじゃ」
カーラ「あ、そうね。私は、食堂の準備もあるから戻るよ。また、リアが来るかもしれないしね」
ビチャ「そうじゃな、あの子はこの町に必要じゃ」
カーラ「そうよね」

(沈黙)
リア「(声を抑えて)よし、いいか?」
マリ「(声を抑えて)うん、でも、借りるだけだよね?」
リア「(声を抑えて)そうだ、借りるだけ。後で、神殿から戻ったら、返しに来る」
マリ「(声を抑えて)でも、これすごい重いよ!」
リア「(声を抑えて)どれだよ?…あ、落とす!」
(がっしゃーーん)
リア「やべ!行くぞ!!」
マリ「あ!待って!」
リア「それは置いてけ、泥棒!」
(沈黙)
リア「よーーし…はぁ、はぁ、ここまでくれば大丈夫、はぁ」
マリ「はぁ、はぁ、待ってよ、リア」
リア「マリ、ちゃんと全部持ったか?」
マリ「はぁ、はぁ、うん、はぁ、多分、あると思う」
リア「そしたら、これを体に巻き付けていこう」
マリ「てか、泥棒って呼ばないでよ」
リア「大丈夫だよ!ほら、こうして、紐に括り付けて…
マリ「聞いてないし…」
リア「こうして、えーっと、こいつはこっちに方結びして、えーっと」
マリ「貸して」
リア「お、ありがと」
マリ「気にしないで。こうやって、リアと色々な事してきたね」
リア「なんだよ、急に」
マリ「いやー?リアのせいで沢山怒られたなぁって」
リア「そうかー?」
マリ「だって、畑に忍び込んで、泥だらけになってばれたり?
教会の屋根裏部屋で、床に穴開けてばれたり?
図書館の本で、紙飛行機作ったりさ?」
リア「そんな事したっけ?」
マリ「ふふふふ、覚えてないよね?リアは。
私がついていってるだけだもん」
リア「もういいから、ほら!いくぞ!」
マリ「うん!できたよ!」
リア「じゃ、いくぞ?…せーーーっの!!」

(長い沈黙)

マリ「あれって!!」
リア「あった!ほんとだ!!マジで、海底神殿じゃん!!」
マリ「おっきいね!!ほんとにあるんだよ!」
リア「うん!!これは、宝も絶対にある!」
マリ「少しづつ探していこうよ」
リア「こういうのは、神殿奥深くとかにあるんだよ」
マリ「そうなの?」
リア「さぁな?」

(沈黙)

マリ「ねぇーーー!リアー!あったーー?」
リア「なーーーい!マリはーーー?」
マリ「なーーい!」
リア「はぁ…」
マリ「(少し沈黙)ねぇねぇ?」
リア「うわぁ!…急に後ろに立つなよ」
マリ「もう、帰ろ?みんな、心配するって」
リア「いや、宝を見つけるまでは、俺は帰れない」
マリ「でも、時間もわからないし」
リア「俺はまだ、帰らないからな」
マリ「で、でも…あれ、これって、揺れてる?」
リア「え…そんなことは、マジだ。地震だ!」
マリ「逃げないと!!!」
リア「やばい!!あーーーくっそ!なにかないか!なにか!なんでもいい!なんでもいいのに!!」
マリ「ねぇ!ねぇ!リア!!早く!!!」
リア「引っ張るな!くっそ!!!行くしかない!!」
マリ「あっち!!!あっ!!きゃっ」
リア「なに、つまづいてんだよ!!」
マリ「いったい…このオモリが」
リア「あーーーもう!ほら、背中乗れ!」
マリ「リア!後ろ!!」
リア「やべぇ!!下がれ!!」
マリ「きゃぁ!!!」
(長い沈黙)
リア「マリ!マリ!!おい!マリ!」
マリ「んっ…あ、わたし…」
リア「はぁー、よかった。目、覚めたか?」
マリ「うん…でも、地震は?」
リア「多分、収まった。ただ………」
マリ「どうしたの?」
リア「閉じ込められた…」
マリ「え、どういうこと?」
リア「帰り道が、ふさが…れてる…」
マリ「だって、出口はあっちに…ほんとだ…」
リア「あぁ…地震で天井が落ちてきた」
マリ「崩落したってこと?」
リア「多分…?」
マリ「どうするのよ!!!!」
リア「え…」
マリ「もう!!閉じ込められたら、帰れないじゃん!」
リア「いや、怒るなよ」
マリ「怒るよ!!だって!!リアについてきたから、こうなってるんだよ!?」
リア「はぁ!?全部俺が悪いってのかよ!」
マリ「そうだよ!!帰ろうって言ったのに、聞いてくれないし!そもそも、私はこんなところ来たくなかったぁ!!」
リア「それは、マリが勝手についてきたんだろ!!」
マリ「なにそれ!もう知らない!!ずっと助けてあげてたのに!!」
リア「助けてなんて言ったことは、ねぇーーーんだよ!!」
マリ「ふん!」
リア「ふん!」
(沈黙)

マット「(遠くから)おーーい!マリー!リアー!」
マリ「今、聞こえた?」
リア「ふん!」
マリ「リア、すねてないで、答えて!」
リア「うるせ、なにも聞こえないね」
マット「おーーい!」
マリ「ほら!聞こえるって」
リア「ん?」
マット「いた!!」
マリ「パパ!!」
マット「マリ!大丈夫か!」
マリ「パパ!!…怖かったよ」
リア「おっちゃん…」
マット「リアも大丈夫か!どこか、ケガは?」
リア「(ふてくされて) 大丈夫…だけど」
マット「はぁ…心配かけやがって」
マリ「ごめんなさい…」
マット「今はここから逃げるのが先だ、その体に巻き付けてるのは?」
マリ「神殿に来るために、重いやつを」
マット「だから、何も家になかったのか。とりあえず、ほどくから、こっち来い」
マリ「はい」
リア「俺は、ここに残るから、いい」
マリ「リア!」
マット「うるさい!!」
リア「いってー!!殴るなよ!」
マット「お前だって、子供なんだから…な?」
リア「俺だって!…できるし…」
マット「手どけろ。よしっ!、帰るぞ」
リア「はい…」

(沈黙)
マット「もう少しだ、2人ともしっかり泳げよ」
マリ「うん」
カーラ「おーーーい!こっちこっち!!」
マリ「みんないる!」
リア「うん」
マット「ほら、2人とも、手振ってやれ」
マリ「おーーーい!、ほら、リアも!」
リア「俺はいい」

(沈黙)
カーラ「さてと、で、2人は何してたの?」
リア「なんも」
マット「そんなわけないだろ、マリ、お前は言う事ないのか?」
マリ「私は…えっと…」
リア「そいつは、ついてきただけ」
マット「また、無理矢理連れていったのか?」
リア「いや、勝手に」
マリ「そんな言い方ないじゃん!」
リア「は!?お前がついていくって、言ったじゃんか!」
マリ「言ってない!」
ビチャ「ほれほれ、やめんか」
マット「長老、いらしたんですか」
ビチャ「2人とも、神殿にいったんじゃな?」
カーラ「そうみたいよ」
ビチャ「それで、マットは?」
マット「私は、2人の姿が見えなくなったのと、家からモノが消えてたので、まさかと思って」
ビチャ「やはりか…カーラが海岸で叫んでいたからな」
カーラ「で、2人は何を見たんだい?」
リア「なにも」
マリ「神殿はあった。でも、」
マット「でも?マリ、言ってごらん?」
マリ「リア、もう言うよ?宝を探しに行ったの」
カーラ「宝?あの神殿に宝なんて、もうないわよ」
リア「え?今、なんていったの?」
ビチャ「カーラ…おヌシ口をすべらせおって」
マリ「今、「もうない」って言ったよね?」
リア「うん!言った!今、絶対に言った!」
カーラ「い、い、いや~?」
ビチャ「もう、伝える時なのかもしれないな」
マット「待ってください!まだ、2人には早すぎます!」
マリ「パパ!!そうやって、子供扱いはもうめ止めて!」
マット「マリ…」
ビチャ「ほれほれ、みな落ち着きなさい。まず、18年前に遡るか」

(沈黙)

ビチャ「18年前、このトレンチには、多くの観光客が来ていたんじゃ。観光スポットは、浅瀬の海にある神殿じゃった。海に囲まれた神殿は、干潮の時に砂の道ができあがる。夜は街に活気ができる。ある日、学者達がきて、この神殿は隆起したと教えてくれたんじゃ」
リア「じーちゃん、その隆起って何?」
マリ「リア、隆起っていうのは、地面が上がって来るって事」
リア「なにそれ?そのエレベーターみたいに、地面が上がって来るって事?」
マリ「まぁ?私も見た事ないから、なにもわからない」
ビチャ「だがな、誰がいつ作ったとかは何もわかっておらんかった。だが、わしらはその謎すら売りにしていたんじゃ。だから、学者達を本当に嫌ってな」
カーラ「特にそこのマットは、本当に嫌いだったよね?」
マット「町が観光業に頼ってたからな、今となっては感謝を…」
ビチャ「ほれほれ、続けるぞ。ある時、町に冒険家と名乗る2人組が来てな。彼らは、研究した内容は明かさないし、町の人を説得してから神殿にいく行く。と言って、家々を周った。彼らは1年かけて、全町民を説得したんじゃ」
マット「俺は、頷いてなかったぞ」
カーラ「あんたは、奥さんの尻追っかけて、適当に返事してたくせに」
マット「おいおい!娘の前だぞ?」
カーラ「あちゃー!すまんったね」
マット「その申し訳ないと思ってない顔…はぁー」
マリ「パパ、そんな事どうでもいから」
リア「それで、その冒険家たちは何を見つけたの?」
ビチャ「それがな?2年が経つ頃、ぱたりと2人は神殿に行く事を辞めたのじゃ。わしらは、何があったのかと聞いたが、彼らは一向に何も話さなかった。すぐに女の冒険家が身ごもっているとわかってな。わしらは、もうあきらめると思ったんじゃ」
カーラ「そうそう!それがさ、冒険を辞めたのかと思えば、ずっと私のお店に来ては神殿の話をしてたのよ。だから、みんなすぐに冒険を再開すると考えたの。ところがね…」
ビチャ「そこで大きな地震が起きたんじゃ。町は崩壊して、全員がさまよった。そしたら、ゴーー!と音がしてたな。津波と同時に、神殿が海に沈んでいったんじゃ。」
リア「まさか…それって」
ビチャ「わしらは全員が津波から逃げようとしたが、波の速さに飲まれたんじゃ」
マリ「てことは、みんな死んじゃったの?…でも、今こうして」
ビチャ「そうじゃ、その津波に逃げているわしらに反して、その冒険家が海に向かっていったんじゃ。わしは逃げ遅れて、津波が目の前まで来た時に、海がピカッ!と光ってな。そこからは記憶がない。
(少し沈黙)目が覚めると全壊の町と町民が道に倒れているだけじゃった」
マリ「待って。町は津波が襲ったんじゃないの?」
リア「そうだよ!地震が来て、津波が来て、なんか海がピカ!って光って…だよね?」
ビチャ「そう、実は町から死人は出なかったんじゃ。しかし、町周辺は何も無くなっていたんじゃ。
マリ「ここは元から田舎で何もないよ?」
ビチャ「実は町全体が海底に沈んでいたんじゃ」
マリ「それって…地盤沈下?」
リア「なにそれ、美味しいの?」
マリ「隆起の逆で、地面が下がる事」
ビチャ「そして、なぜか町民は海の中でも息ができるようになっていたんじゃ。よーく考えてみなさい。2人と「海底」神殿に行ったのに、呼吸ができていたろ?」
リア「確かに…言われてみると」
ビチャ「普通の人間は、水の中で呼吸が長く持つことはない。」
マリ「てか、さっきの冒険家たちは?海に向かって行ったんでしょ?」
ビチャ「彼らは見つからなかった。残っていたのは、彼らの家に幼い赤ん坊と、その隣に大きなメモで「リア」と書いてあった。」
マリ「(息をのむ)それって…!」
リア「おれ…なの…か?」
ビチャ「そうじゃ、リア。冒険家はお主の両親じゃ」
リア「そんな…死んだって事?」
カーラ「それは違うよ!誰も、死体を見つけた人はいない。だから、まだ生きてる!!」
リア「そんなのわかないじゃないか!」
ビチャ「リア、死んだかはわからない。ただ、その2人が神殿に向かっていったんじゃ。わしらは、その光が神殿の宝だと思っている」
マリ「どういうこと?」
マット「つまり、トレンチの人間は神殿の光の影響で、息ができるようになったんだよ」
リア「水の中では呼吸ができるもんだろ」
マリ「いや違うよ、リア。でも、そんなことあり得るの!?だって…」
ビチャ「そうじゃ、そんな事起こるわけない。わしらもそう考えるから、ここに隠れている。」
リア「なんで隠れてるの?」
ビチャ「もし、わしらがまだ生きていると知られれば、捕らえて、研究しようとなるかもしれんじゃろ。」
リア「それでも、なんで海の底でずっと隠れてるんだよ!もしかしたら、俺の事を探してるかもしれない!」
カーラ「リア、すまないねぇ。私たちも初めは考えたんだ。だから、地上に見に行ったんだ。するとそこには、「死んだ町・トレンチ」のニュースで溢れてたんだ」
マリ「だから、私たちはここにずっと隠れてるの?」
ビチャ「そうじゃ。幸い、海にはたくさんの食料もあって、町を直す事もできた」
リア「いや!違う!ここにいたら、死んでるのと同じだ!」
マリ「リア、何言ってるの?」
リア「だから!俺らがまだここにいるって伝えないと!」
ビチャ「リア、誰に伝えるんじゃ?」
リア「世界中にだよ!俺らがまだ、ここで生きてるってわかれば、また町を復活させることができるじゃん!」
マット「リア、それはみんなを危険に晒すことになるんだぞ?」
リア「大丈夫!俺が守る!この町を、世界が敵になろうとも絶対に説得するから!」
カーラ「それはダメなんだよ…ごめんね。」
リア「なんで!」
ビチャ「ほれほれ、リア。考えてごらん?わしらが生きているとわかれば、その理由を知る為に変な奴らが寄ってくる。そうすれば、この町の平穏は無くなる。わしは、そんなこと許せんのじゃ」
リア「でも…そんな事わかってるけど…」
マリ「私は行くべきだと思う!」
マット「マリ!?急に何を言ってるんだ」
マリ「だって!なんで神殿が光ったのか、なんで私たちだけが海の中で生きてられるのか、知りたいじゃん!それに…それに、リアの両親だって生きて、リアを待ってるかもしれない!」
マット「それはわからないんだよ?もし、変な奴らに捕まれば、人体実験に巻き込まれるかもしれない」
マリ「そんなことない!リアと私だけで、地上にいく。それで大丈夫だとわかれば、みんなを迎えに来る!ね?それなら、大丈夫でしょ?」
マット「だから、それで何も起こらない事はないんだ。地上は、マリが思ってるより危険なんだ。そんな事、パパ達が起こってほしいと思うわけないだろ?」
マリ「わかってる!それでも、絶対にいくべきなの!これは、私たちがやらないといけない!」
カーラ「マリが言ってる事、お前がわからないわけではないだろ?」
マット「それは…」
カーラ「マリ?パパはね、昔、地上に行こうって盛んに言ってたんだ。それでも、長老とみんなの事を考えて、辞めたんだ」
マリ「そうなの?パパ」
マット「うん…」
マリ「なら、なんで辞めたの?」
マット「小さいマリを抱いた時に、俺は離れたくないと思った。絶対に守るって」
マリ「そうなの…でもね、パパ。もう私は守られる存在じゃない。ずっと守ってくれたのは感謝してる。だからこそ、私は私の道を行きたい」
マット「マリ…」
マリ「リア!ね?2人なら何でも出来るって!」
リア「でも、マリはそれでいいの?」
マリ「今更なーに言ってるの!私は、リアに勝手についていくんでしょ!
リアが行くなら、私がついていかないと!!」
リア「うん…そうだよな!俺は行くぞ!地上に!」
ビチャ「ほほほほ、やはり若い者の勢いは止められないな。
行けばいいんじゃ、ここからは君たちだけの物語じゃ。マットも、それでいいな?」
マット「マリ、本当に行くなら、今日はしっかり休め。ちゃんとした準備をしてから行くんだ」
カーラ「そうとなれば、リアはうちで沢山食べないとね!」

(沈黙)
リア「よし!これで準備完了!マリは?」
マリ「もちろん!その準備ほとんど私だよ?」
リア「ありがとうって何度も言ってるだろ。よし!いくぞ!」
マリ「うん!みんな、またね!」
マット「ああ、気を付けるんだよ。」
カーラ「リア、ちゃんとマリのこと守ってやるんだよ」
ビチャ「うむ、気を付けるんじゃよ。夢を叶えてきなさい」
リア「当たり前だろ?夢は叶える為にあるんだから!」

(沈黙)

マリ「リア!見て!あれって!」
リア「すごい!これが本当の山だ!リア山と名付ける!」
マリ「うん!これが木…なんて名前なんだろう」
リア「おいマリ!あれ見てみろよ!」
マリ「ん?…なにあれ、家?」
リア「多分な、まずはあそこの家から行ってみようぜ」
マリ「本気?」
リア「俺らは世界中で仲間を探すんだ。今、トレンチは世界を敵にしてると思ってる。俺らは、味方っていう宝を探しに行く冒険家なんだ!」
マリ「いいねそれ!そしたら、冒険家のリアさん、我らの名前は?」
リア「名前?」
マリ「そう!物語でよくあるでしょ?冒険家には、それぞれ名前があるんだよ?」
リア「んー…わかった!俺らは「チャレンジャー」だ!」
マリ「挑戦か…。いいねそれ!」
リア「行くぞ、チャレンジャー隊員・マリ!」
マリ「はい!どこまでもついていきます!」

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