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球詠#5 希はどうしてチャンスで打てんかったら意味無いと言ったか

アニメ版球詠5話及び原作のネタバレ記事です




球詠5話、4話で懸念されていた原作カットなどが起こらず大変良く構成が練られている話だった。(ここでは作画については触れない)
怜と理沙のやり取りを皆で覗き見している時に「たまにはこういうのも良いだろ〜?」と意味深な事を菫に言っていた稜や白菊の勉強シーンが削られた代わりに追加された股割りのシーンとか
語りたい事はあるが今回は割愛する。

実はこの5話で原作にない希の台詞が多く追加されている。

「私が決めんといかん時は分かっとうけん……」
(合宿で芳乃にホームランを狙わないの?と問われた際に出た台詞)
「自分だけ塁に出てもチャンスで打てんかったら意味ない!」
(希が芳乃とやり取りする際に出た独白)

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こちらが原作の該当部分のコマに当たる。見比べて見ると台詞がいくつか追加されたり削られていたりするのが分かる。

ではここでアニメ5話、中間テスト終了後での希と芳乃のやり取りを見てみよう。

・中間テスト終了後の練習、芳乃と藤井先生が会議の為に練習には戻れないので定刻後に上がってくれとキャプテンが告げる
この時から希はずっと一人でトスバッティングを行なっているがここから既にアニメオリジナルの部分である。

・遅くなった芳乃が練習場を通りかかると思いつめたような目で狂ったようにトスバッティングを行う希の姿があった。原作では希はマシントスを当てて変な方向に飛ばしてバッティングネットの金属部分を揺らしているが、アニメでは空振りしている。(それを見た芳乃が酷いスイング……と思うのは原作アニメ共に一緒)

・芳乃が希に抱きつき、希の動きを止め、希と二人きりで話す機会が出来る

というのが上記にある原作までの流れである。ではここからアニメの台詞と共に振り返ってみよう。(太字の部分はアニメで足された台詞)

希「だいぶ強いチームやったけど…最後の試合私が打てんかったせいで全国に行けんかった…4回もチャンスで回してくれたのに
やけん…この前の練習試合も…私がもっと頑張らんと!自分だけ塁に出てもチャンスで打てんかったら意味ない!私…みんなとこのチームで勝ちたいけん!」

ここで前の藤和Bとの練習試合での希が伏線となってくる。9回2アウトランナー2塁の場面で希が凡退して終わったのはアニメオリジナルのシーンだ。その後に希が「私があそこで打てたら……」と反省会で言うシーンも勿論オリジナルだ。
練習試合での好機での凡退→得点圏打率0という情報という伏線のお陰で原作に無い希の「自分だけ塁に出てもチャンスで打てんかったら意味ない!」というセリフに深みが増してくるのだ。ここも良かったのだが、個人的に更に良かったのは次の芳乃の台詞である。(太字はアニメで足された部分)

芳乃「勝ちたいって気持ちは一緒だけど誰も負けたのが希ちゃんのせいだなんて思ってないんじゃない?
打てなかった人、守れなかった人、みんなが反省してもっと頑張ろうって思ってる。希ちゃん一人が責任感じることじゃないよ」

まず、この二人の考えはどちらも正しい考えである。
いくら塁に出てもチャンスで打てなければ点は取れないし、野球というスポーツは一人の選手の責任で勝ち負けが決まるスポーツでは無く(実際の所一人の責任にされる場合は数多くあるが)当人一人が責任を感じて落ち込んでも仕方がないのである。(新越谷は特に替えの選手が居ない以上前を向くしかないという事情がある) 

芳乃「私ね。希ちゃんがホームインしてハイタッチするのが一番の楽しみなんだ!
だから…全部一人でやろうとしないでほしいんだ」

原作では「もちろん得点圏でも楽しみにしてる。けど…」と続くのだが、アニメでは敢えて「だから」という接続詞を使っている。
原作における「けど…」の方は「だけど…」の省略でありどちらかというと心配というニュアンスが強く伝わる言い方になっている。
これに対してアニメの「だから…」というのは「だからこそ」の省略に他ならない。あなたが活躍して欲しいと思ってる、「だからこそ」自分一人で抱え込まないで欲しいと言い方は芳乃が希に対して期待を込めたニュアンスが強く伝わる言い方になっているのだ。

そしてその期待は最後の芳乃が希に告げるあのセリフにも繋がる。この回は素晴らしい言葉選びをされたと思う。アニメスタッフの方に敬意を評したい。

「それでね。一つ考えたんだけど次の試合4番お願いできるかな?」


おまけ

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アニメだとめっちゃナイター照明焚いてない?
このアニメはこういう微妙な差異がちょくちょく出てくるのでこのアニメのストーリーボードがめちゃくちゃ気になる今日この頃である。(了)

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