柳田正芳(やなぎー)@性の健康イニシアチブ

自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが「自分は自分に生まれ…

柳田正芳(やなぎー)@性の健康イニシアチブ

自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが「自分は自分に生まれてよかった」と思える世界を作るために、性の健康イニシアティブという組織をしています。対人援助職向けに性について学ぶ講座の開催や、性の健康について書いたWEBメディアの運営などをしています。

最近の記事

「私もOK、あなたもOK」を意識するとけっこう色々な問題が収まっていく

昨年(2022年)末から「私もOK、あなたもOK」プロジェクトという名前で、人間関係について考えるプロジェクトを進めています。 この「私もOK、あなたもOK」は新しい考え方ではなく、アサーションの考え方です。 この言葉、ポイントは「あなたもOK、私もOK」という順番ではなく、「私もOK、あなたもOK」(つまり、私が先)というところです。 「自分のことを大事にしてほしかったら、まず他人を大事にしなさい」など、自分のことよりも他人のことを先に考えることが良好な人間関係の秘訣

    • 「信頼できる大人に相談しよう」という言葉の可能性と限界

      性教育の取り組みの中で、子ども達に向けて、「何かがあったら信頼できる大人に相談しよう」という呼びかけがされることがあります。 子ども達が一人で抱え込まないようにする、誰かにSOSを出していいのだ、といった考え方は素晴らしいと思います。 ただ、この時に注意しておきたいのは、「相談された大人が、本当に相談に乗れるのか」という点です。 例えば「物を落とした・無くした」「道に迷った」といった相談には、穏やかに優しく答えてくれる大人でも、性的な話題に対しては適切な知識がない、性的

      • 「間身体性」(かんしんたいせい)の話

        2020年のコロナ禍をきっかけに、オンラインでの活動が一気に加速・一般化しました。それに伴って、「オンラインは効率がいい」「対面で会う意味がなくなった」といった意見も飛び交うようになりました。オンラインの恩恵で効率よく働けていることを実感している身として、よく分かります。でもその一方で、「対面で会うことの重要性」は残り続けると思います。そう思っている理由について書いてみます。 実は書籍の編集に携わりました2022年6月に出版された『共に働くことの意味を問い直す 職場の現象学

        • 「権利」「人権」を「私もOK、あなたもOK」と表現すると自分事感増さない?

          「権利」「人権」という言葉に、「難しそう」「自分には関係なさそう」「抵抗感がある」など、色々な思いを抱く人がいらっしゃると思います。「権利」や「人権」は、目には見えない、手でも触れないものなので、なんだか難しそうだし、自分には関係なさそうな感じがしますよね。実は毎日の暮らしに深く結びついているということを書いてみました。 ※見出し「性教育の一丁目一番地」のところは前提の説明で少し長いので読み飛ばして、見出し「私もOK、あなたもOK」のところから読んでもらっても大丈夫です。

        「私もOK、あなたもOK」を意識するとけっこう色々な問題が収まっていく

          「居場所と出番」を用意するザ・サードプレイスの話

          ティーンズを支援するソーシャル活動の様々な分野で、昔から「居場所づくり」は大事な活動と考えられており、昨今は「ユースクリニック」の設置を志す取り組みも増えているように感じます。私自身も、渋谷の街なかに「相談と検査ができる街の保健室」を出店する事業に携わったことがあります。こうしたドロップインセンター型の事業はどういうものにしていけばいいのか、別に書いた「居場所と出番」が大事という記事も参考にしつつ、持論をまとめてみました。 ※この記事は若者向けの「放課後の居場所」づくりの事

          「居場所と出番」を用意するザ・サードプレイスの話

          「居場所と出番」が大事

          昔から、「居場所の大切さ」が語られ、「居場所づくり」という事業が様々な人や団体によって試みられてきました。個人的にも、渋谷の街なかに「相談と検査ができる街の保健室」を出店する事業に携わったことがあります。自分なりに居場所づくりというもの(やその重要性について)を考えてきたつもりです。居場所づくりはとても大事な事業だと思います。その話とは別に、「居場所づくり」をしてきた経験から感じた、人間にとって欠かせない「居場所と出番」について書いてみたいと思います。 人間には「居場所」だ

          サヨナラ添え物支援

          自己紹介のつもりで書いた記事にも載せましたが、ドロップインセンター創りをはじめ、対人援助要素のある仕事や活動にもそれなりに取り組んできました。そのなかで、対人援助現場あるあるだと思われるある事象をたびたび目にしてきました。その事象に「添え物支援」という名前を付けて時々話題にしています。今日はこの「添え物支援」について書いてみます。 「添え物支援」って何のこと言ってるの?対人援助の仕事は本来、困っている本人(=被援助者)がメインで、援助者は困っている本人をサポートする脇役であ

          名前を変えました

          以前別の記事でも書いたように、「性の健康イニシアティブ」という組織を去年(2021年)1月からやっているのですが、今日(2022年2月6日)その名称を変えました。 前の名前:性の健康イニシアティブ 新しい名前:性の健康イニシアチブ ※「イニシアティブ」が「イニシアチブ」に変わります マイナーチェンジなんですが、変えました。 今後ともよろしくお願いします。

          人が辞めずに仕事を続けやすい職場はどうやったら作れるのか?を知りたい

          「男性育休義務化」がはじまる今年(2022年)4月から、「男性育休義務化」となります。この言葉だけ聞くと、「子どもが生まれた年代の男性は必ず育休を取らねばならない」というふうにも聞こえますが、「雇用主である企業が育休制度の周知をしたり本人に意向を確認したりしないといけない」「大企業における育休取得率の公表が義務化される」など、「育休促進の義務化」の色合いが強い制度になります。 「男性育休義務化」に関する法律や制度の全体像や解説などはほかの記事に譲ることにします。「男性育休義

          人が辞めずに仕事を続けやすい職場はどうやったら作れるのか?を知りたい

          「それって性教育なんですか?」ーはい、そうです

          数学教育という教育活動の背後には数学という科学的知見がある。数学科という教育活動を通じてその知見を伝えている。 ならば性教育という教育活動においても「性科学」という科学的知見を背景にきちんと持って、それを伝えるという構造があったほうがいいのではないかと思っています。日本ではここ数年性教育が盛り上がりを見せていますが、性科学がいまひとつ盛り上がらないです。 また、性科学に基づく性教育が施された結果として、性の健康や性の権利といったものが、伝播・継承・拡散されるといいのではな

          「それって性教育なんですか?」ーはい、そうです

          セックスはもっとクリエイティブでいい

          先日、大人向けの場で「セックスはもっとクリエイティブでいいんじゃないですか?」という話をしました。 AVに描かれていることだけがセックスではないし、どんなことも自分と相手が「いい」「したい」と思うことだったら、楽しくやったらいいじゃないですか? その時に、前提が3つ。 ①お互いが了解していて嫌な気持ちになっていない ②安全が確保できている ③関係ない第三者に迷惑をかけない この3つの前提さえ踏まえていれば、あとは自由にクリエイティブ発揮して楽しんだらいいんですよ。 そし

          セックスはもっとクリエイティブでいい

          第12回世界性の健康デー

          やなぎー@性の健康イニシアティブ代表、です。 性の健康イニシアティブとして、研修事業やイベント事業などやっているわけですが、毎年9月に事務局を担いつつ開催しているのが「世界性の健康デー 東京大会」です。2012年に初めて運営に参加して以来、ここまで続けてきました。 毎年9月4日は「世界性の健康デー」2010年に「世界性の健康デー」が初めて提唱されて、今年(2021年)で12年目。 「世界性の健康デー」を提唱したのは、性の分野の世界最大の国際研究者組織WAS(読み方:ワス

          セクシュアリティが学べる 大人のためのザ・サードプレイス

          性の健康イニシアティブの前身であるLink-Rは、講演/ワークショップのほかに、ザ・サードプレイス(家でも学校でもない放課後の第三の居場所)を創るという活動を大事にしてきました。 性の健康イニシアティブにとっても「ザ・サードプレイス」はちょっと特別な言葉だと考えています。 今日は性の健康イニシアティブにとってのザ・サードプレイスのお話です。 教育の場・機会は学校だけではない性教育。 というと、「教育」という言葉が入っているためか、どうしても「若者向けの活動」と捉えられ

          セクシュアリティが学べる 大人のためのザ・サードプレイス

          やなぎーの履歴書

          現在:性の健康イニシアティブを主宰2021年に立ち上がった民間団体「性の健康イニシアティブ」は、 自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界 をビジョン(実現したい世界像)に掲げています。 その実現のために どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートする をミッション(ビジョン実現のために果たす使命)に、様々な事業に取り組んでいます。 現在おこなっているのは、 1)対人援助職向け

          性の話題を扱ううえで欠かせない3つのアティチュードとは?

          アティチュードって何?性の相談を受ける。性に関するトラブルに対応する。そういった場面で対応者はどういうアティチュードで対応すればいいのでしょうか? ※アティチュード(attitude)と言うのは、「態度」を意味する英単語です。「性の話の対応者の態度」と言ってもいいのですが、「アティチュード」と表記することで、日本語の「態度」という言葉には含意されていないもう少し色々なニュアンスが込められていますので、以降は「アティチュード」と記します。 性に関する対応をする時に求められる

          性の話題を扱ううえで欠かせない3つのアティチュードとは?

          「性の健康」という不思議な言葉

          不思議な言葉「性の健康」「性の健康イニシアティブ」という組織の名前にも使われている、 「性の健康」という言葉。何とも不思議な響きがあります。 大学生の頃、初めてこの言葉を聞いた時、 「"性"という言葉も"健康"という言葉も聞いたことがあって何となく分かる。でも、"性の健康"って合体されると、途端に掴めない感じになる。不思議な言葉だ」 と思ったことを覚えています。 性の健康を享受するなら性の健康というのは、性的な面で良好・幸福な状態のことを意味する言葉です。 では、