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防音ドアのその向こう


中高生もっといえば20代前半まで、あらゆることにコンプレックスがあったように記憶している。

聞く音楽もその一つで、ひねくれて天邪鬼な気質のある私は、インディーズのバンドばかり聞いていた。そしてテレビに出演しているようなアイドルやポップスの曲をストレートに聞くのはなんだか芸がなくダサいような気がしていたのだ。とてもつなく若い。そして今思い出すだけでも恥ずかしい。

でもわかっていたのだ。みんなに知られている曲は知られるだけの理由があり、斜に構えるほどひねくれたものじゃなくてストレートにいい曲だと思えるものもたくさんあったのだ。

今そういうものに肩肘張らずに、すごいな、面白いな、かっこいいなと思えるようになった事は私にとって、年を重ねてよかったと思える事で、実は一年また一年と年を追うごとに楽しいと思える要素の一つとなってくれていると思う。

そういった意味では年を重ねる事は嫌いではなくて、周りからやんややんやと言われる事を除けば楽しいことも多い。昔からの友人もとても大切なものだけれど、たまたま同じ地域に居合わせ箱詰めされた人の中から友達を作るよりも、いろいろなきっかけで友達ができる大人は面白い。

そして、今にして思えばきっとコンプレックスの裏返しでもあったのだけど、それでもやっぱりいろいろな音楽を聴く事は楽しいし、ライブ自体は今でも好きだ。インディーズのバンドのライブをたくさん見に行ったから今も交流する友達も出来た。外から見えないライブハウスの中に初めて入っていく緊張感とワクワクした気持ちも今でも覚えているし、全身で浴びる音は気持ちいい。たくさんのライブハウスはどこも違う空気を持っていて行った事のない場所に行くのは楽しかった。その記憶は私にとってのかけがえのない財産だ。

大人と呼ぶにはまだまだ幼いと自分で思ってしまうのはどうにも情けないけれど、画一化された集団の中でうんざりしていた私のような子が、諦めずに大きくなってくれるといいなあ。

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