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【中国を巡る地政学】インド洋の美しい島・セーシェルにインドが巡視船を供与:中国とインドの援助合戦が白熱化

 インドはこのところインド洋の美しい島国セーシェルに対して海洋安全分野でのテコ入れを強めている。印ユーラシアンタイムスが9日に伝えたところによると、インドはセーシェルに14億円相当の高速巡視艦を提供した。モディ首相とラベル・ラムカラワン大統領(Wavel Ramkalawan )との間で取り交わされた。「PSゾロアスター」と名付けられたこの艦はインドが同国に供与する4隻目の船艇である。モディ首相は「インドはセーシェルの海洋安全保障の強化にコミットする」と述べた。同国の沿岸警備隊にとって初の巡視船となった。

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 セーシェルの大統領はインド系人種で、内閣のメンバー3人もインド系である。この島国はインド洋で中国が影響力を増しつつある中で、インドの隣国ファースト政策において重要な位置を占めるようになっている。インドはモーリシャスとセーシェルにおいて安全保障上のとっかかりを築きたいとしている。インド政府にとってはインド洋における安全保障上の同盟関係を発展させたいというわけだ。今回インドが供与した船は密輸取り締まりや救助に使用されるという。「ゾロアスター」を建造したのはインドの大手造船メーカーで、インド防衛産業の一角を占めるガーデンリーチ造船所である。同巡視船は3月16日にすでにセーシェルに届けられ、4月8日に就役式典が行われた。これで2005年、2014年、2016年に続く船艇供与となった。
 インドは新型コロナをめぐるワクチンでも同国に援助を惜しまない。インドはすでに5000回分の新型コロナワクチンを供与している。

 一方の中国もセーシェルに援助を拡大している。中国はセーシェルへの援助で議会議事堂や最高裁判所の庁舎を建設してきたし、2機の小型機や2隻の船を供与している。

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中国駐セーシェル大使館HP:尖閣諸島(「釣魚島問題」)のバナーもある、大使は女性だ

   セーシェル大統領は2018年に訪中しており、このときに習近平は同国が「一帯一路」に参加することを歓迎する旨を述べている。

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     中国はセーシェルを含むインド洋での活動における野心を隠そうとさえしなくなっている。2011年には中国の梁光烈国防相が同国を訪問しており、その際に中国が同国に軍事基地を造ろうとしているのではないかとの憶測が広まったもある。これ対して国防部報道官は中国はアデン湾で展開している護衛航行任務についてジブチ(後に保障基地を建設)、オマーン、イエメンなどで中国艦船に補給を行なっていることを明かし、セーシェルを含む国で補給をすることを考えていると言及したこともあるのだ。

 新型コロナの世界的蔓延で中国はワクチン外交を展開しているが、疫情の蔓延で出遅れていて、その間インドが着々と手を打っていたというのが現状であろう。今後、復活してきた中国が攻勢を強めることは十分にあり得るだろう。

インドによる巡視船の供与


中国による船艇供与


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